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[1分小説] | いけない女の子

  はじめてのデートは、思ったよりは悪くなかった。

 清楚な女の子だと見られることが多いが、実は初体験は高校2年生の時に既に済ませていた。大好きな1つ上の先輩から告白されたから、抱きしめられたいと思うのは自然の流れだった。

 頭の片隅に「どうせもう処女ないし」という気持ちがあったことは否定しない。しかし、愛のないセックスはしたくなかった。

 待ち合わせの場所に行くと、私より少し年上の男性が待っていた。年齢を聞いていなければ、私と同い年か、あるいは年下だと思ってしまうほど、見た目の若い男性だった。

「亜紀さんですか?」

 含羞みながらそう尋ねた男性の口調は、とても誠実そうだった。一般的な意味では「イケメン」ではないかもしれない。しかし、私はこの人はただのバイトのお金をもらう相手なのだということを忘れて、一目惚れしてしまった。

「は、はい、亜紀です」

 自分でもおかしいほど、うわずった返事をしてしまった。

「亜紀さん、その白のワンピース、とってもお似合いですね」

 メイクで汚れないように気を付けながら着替えたばかりのワンピを褒められて、私はますます頭の中が白くなった。

「あっ、このワンピ。私のお気にいりなんです」

 ちゃんとこだわったところに男性が気付いてくれると、何よりも嬉しいものだ。私は、この男性と食事をしたあと、ベッドの中で抱かれる様子を思わず妄想してしまった。

「亜紀さん、イタリアンはお好きですか?」

「は、はい、大好きです」

 パスタもリゾットも大して食べたこともないのに、話を合わせた。なにを食べるかより、誰と一緒に食べるのかのほうが大切だから。

 よくわからないイタリアンの言葉が飛び交ったが、無事食事を済ませることができた。いよいよ、このあとは。。。


「亜紀さん、今日は楽しかったです。また、一緒にお食事しましょうね。あの、これ」

 男性から手渡されたのは、封筒に入った1万札だった。渋沢栄一のホログラムがキラリと光った。

「じゃあ、これで」

 そう言い残して、男性は足早に去っていった。
 男性が視界から消えたとき、私はハッと我に返ってつぶやいた。

「違う。私の欲しかったのは、栄ちゃんじゃない。あなたからのキスだったの」



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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします