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短編小説 | ☄️尿意☄️

(1)女として

 わたしは女として生を受けた。そして、女として生まれてきたことを一度も後悔したことがない。もちろん、男だったら、もっと早く走ることができただろう、もっと早く泳ぐことができただろう、と小さな頃には思ったことがある。
 しかし、そういった身体能力は、別に女だって鍛えることができる。男より早く走り早く泳ぐ女子はたくさんいる。

 そうは言ってもひとつだけ、男っていいな、と思うことがあった。それはオシッコだ。
 男子は立ったまま、オシッコすることができる。まあ、女子だってちょっと腰の位置を工夫すれば立ったままできないわけではないだろうけどね。
 とはいえ、やはり男子がチンチンひとつを持てば、自由にオシッコのベクトルを変えることができることと比較すると、暗澹たる気持ちになったものである。何で女子は、しゃがんでオシッコしなければならないのだろう。そして、拭かなければならないのだろうかと。男子はいいよね、立ったまますることができて。チンチンを少し振れば拭かずに済むのだから… …。

(2)風呂場にて

 だから、というわけではないが、いつしか、わたしは風呂場で尿意を覚えたときにはいっさい我慢せず、オシッコをすることが習慣となった。
 弟から聞いた話だけど、男子は小便器に入っているボール状のセッケンを目掛けて、勢いよくオシッコするそうだ。最近では、いわゆる「ナッジ」の応用として、小便器に「ハエ」のような絵が描かれていることもあるそうだ。
 ハエを描いておくと、ほとんど無意識的にそれを目掛けてオシッコをする。すると、便器の周囲にオシッコが飛び散ることが激減するという。

「いいな、いいな、いいな」

 わたしもやってみたい。しかし、外でやるわけにはいかない。だから、わたしは自分の家の風呂場でオシッコする決意を固めたのだ。
 小さくなって、使いにくくなったセッケンをタイルの上に置いて、オシッコを引っ掻けることが、ささやかだけど、掛け替えのない趣味習慣となった。

「よ~し、今日は昨日のリベンジをしてやる」

 これでもか、というくらいビールをたくさん飲んで、尿意を極限まで高めて、風呂場へやってきた。

「ようし、今日こそは決めてやる。わたしのオシッコを思いっきり引っ掻けて、セッケンを1メートルくらい動かしてやるんだから」

 そして今、決戦の時をむかえた。

「ふふふふふ、せ~の」

☄️☄️☄️☄️☄️☄️☄️☄️☄️☄️☄️

 すべてを出しきった。最後の一滴まで惜しみなく。セッケンは1メートルどころか3メートルくらい先まで見事に飛んでいった。

「やったぁ😃✌️やったぁ😃✌️やったぁ😃✌️」


 その時である。耳元でアラーム⏰の音が、けたたましく響いた。わたしは、酒をたくさん飲んで、知らぬ間に寝ていたことに気がついた。


 このお布団、どうしようかしら。

 

おしまい

💗フィクションです💗


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