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詩 | 人生はタクシーの如く

一車線の人生を望んでいたが
眼前は立ち込める霧で覆われていた

前に進むこと叶わず
かろうじて見える複数の道を
あてもなく行ったり来たりしていた

行きたい場所なんてないのに
その場に立ち止まることが
潔しとは思えなかったのだ

歩くほどに酔いがまわり
これ以上動いていては
意識を喪失してしまう

夜が更けていく
藁をも掴みたくなって
通りがかりのタクシーを拾った

「行き先はどこですか?」
運転手が尋ねる
「行き先なんてありません」
私は答えた

「そうですか、私と同じですね」
「失礼しました」
「いえ、お気になさらずに」
「本当にすみません」

運転手は莞爾として言った
「どの方向に進んだって、やがて辿り着きたいところに辿り着きますよ。すべての道は繋がっていますからね」

いつの間にか霧が消えていた



 

記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします