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連載小説⑫漂着ちゃん

 私は微かな違和感をもった。最初はそれが何なのかわからなかった。しかし、おかしい、とすぐに気がついた。

 ナオミには、エヴァのことを多くは語っていない。この収容所にはじめて来たとき、ナオミはほとんど話すことが出来なかったはずだ。現代の日本語はもちろんのこと、おそらく弥生時代の言語だって話すことが出来たかどうか?

 この1年間、ナオミが話をしてきたのは私しかいない。なのにナオミはエヴァのことをよく知っているかのような口振りだった。直接、ナオミに聞いてみるか?
 これは何かのワナなのだろうか?


「お父さん、なにか言いたいことがあるの?」

「いや~、ちょっと考え事をしていただけさ」

「そう?私とエヴァさんとの関係を知りたいんじゃないの?教えましょうか?」

「話してくれるのかい?正直に言うと君の話に矛盾を感じたんだ。君はエヴァさんとは、話したことがないはずだ。というか、漂着したばかりの君が言葉を話せるわけがないじゃないか。なのに町の掟があるから、ここから外へは行けないと君は言った。おかしいと思ったよ」 


「あぁ、そういうことですか。あなたが助けてくれた直後の私は、確かに何も話すことが出来なかった。けれども、あなたが眠っている間に過去の記憶を取り戻したのよ。2年もあったから、言葉も元のように流暢に話せるようになったの」

「2年?2日の間違いだろ?私は君を助けてすぐに目を覚ましたから」

「ふふふ、それはあなたの勘違いよ。ずっと寝ていたのに、どうして2日だと分かるの?」

「ど、どうしててって、エヴァさんが言ったからだ」

「エヴァさんが、本当のことを話していたら、ってことでしょ?あなたが寝ていたのは、2日間なんかじゃない。2年間寝ていたのよ」


 ここまで話を聞いたとき、自らの浅はかさを感じた。たしかに、私はエヴァの話をすべて鵜呑みにしていたのだった。


「私が2年寝ていたというのは本当なのか?いくら疲れていたとはいえ、2年間も寝ていられるだろうか?」

「それが出来るのよ。私たちが未来から弥生時代へ飛んだ『タイムマシン』の技術を使えばね。自由自在に睡眠時間をコントロールしたり、過去も未来にも飛んでいけるのだから。


…つづく


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