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2023年9月の記事一覧
成仏の宴(#毎週ショートショートnote)
(本文410文字)
死んだら土に還る……それこそ、生命の本質のはずだ。魂がどうのこうのって話は、人間が死への恐怖を和らげる為に創った寓話で、本当は動物の死体は自然に分解され、土に還り、植物を育み……と、生命の循環に取り込まれるべきだ。
成仏なんてものも、人間が描いた空想を具現化しようとする愚かな概念だ。もしそんな理想が実現するのなら、死んだ肉体は自然界の養分になってこそ、成仏と呼ぶべきではな
ボスが言ったから(#毎週ショートショートnote)
(本文410文字)
「いいか、なるべく動物園に見せ掛けるんだぞ」
ボスは、そう言い残して立ち去った。
なるべく動物園に見せ掛けろ……いつもは、自殺に見せ掛けろと指示されるのに、ちょっと意味が分からない。考えろ、考えるんだ!
「動物園で殺れ」ということか、いや、動物園での事故を装えという意味か……違う、動物園に見せ掛けろ、と言ったのだ。ボスが間違えるはずがない。よく分からないが、言われた通
カフェ『4分33秒』にて(フルバージョン)
#毎週ショートショートnote 用に書いたものを、もう少し長い話に書き直してみました。
一応、掌編小説という体裁を取っていますけど、前半は実質的にエッセイです(汗)
オリジナルはこちらです。
以下、本文になります。
よろしくお願いいたします。
(本作は4,918文字、読了におよそ8〜12分ほどいただきます)
ピアノソロの演奏会では、ピアニストは暗譜で演奏するのが当たり前のようになっている
カフェ『4分33秒』にて(#毎週ショートショートnote)
(本文433文字)
一楽章は1/4拍子、♩=1.82、三十秒のtacet。私は演奏に集中する。三十秒間、音を出してはいけない(tacet)指定だ。店内の音に聞き耳を立てる。そして、そのまま第二楽章に突入、♩=0.375、二分二十三秒のtacetだ。超スローなテンポの無音の音楽を奏でていると、客の雰囲気が訝しげに変わっていく。そんな中、女子高生の笑い声が響く。この調和こそ音楽だ。
そして、最終
挨拶に代えて(#毎週ショートショートnote)
「えぇ、新郎も新婦も私の部下でして、まぁ、社内恋愛ってやつですな。昔は考えられなかったけど、今は自由と言うのか、良い時代になったものですな。新郎の佐橋君は、なかなか有能でして、ゴマをするのが上手いというのか、お調子ものというのか、弄られキャラ? まぁ、よく言えばムードメーカーですな。失敗しても、彼なら許せるというのか、実際、何度も助けてあげましたな。新婦の仁美さんは、完全なマスコットキャラですな。
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