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人の営みというカオス(男旅 vol.2 沖島)

2021年の夏休み、長男と四男を連れて9泊10日の旅行にでかけました。僕と妻の両親が新型コロナのワクチン接種を済ませたので、2年ぶりに祖父母と孫との再開が目的です。

僕は家族と横浜に住んでいて、僕と妻の実家は兵庫と大阪です。いつもなら車でピュッと往復するだけなんですが、せっかくなので普段行かないような場所を巡ろうと思い立ちました。

横浜〜大阪の途中に立ち寄ったのは、滋賀県の沖島です。沖島は琵琶湖に浮かぶ小さな島で、日本で唯一の「淡水湖に浮かぶ有人島」。対岸の堀切港に車を停めて定員20名ほどの小さな船に乗り換え、20分程で到着します。島民のほとんどは漁業に従事しているので、港には漁船が停泊して網や漁具が並んでいます。

僕は3回目の訪問だったんですけど、いつ来ても時間が止まったように感じられる場所です。徒歩30分もあれば大半を回れる小さい島なので、島には車がありません。メインの移動手段は三輪自転車。高齢者メインの島民は買い物も農作業もこの山林自転車で移動しています。まるで数十年前の日本をそのまま保管したタイムカプセルのような島です。

息子を連れて島民が暮らす居住地区を歩きました。大人2人が並んで通れるかどうかの狭い路地です。ここでは普段見られない色んなものを目にします。例えば「土壁に掛けられた錆びた漁具」「ザルに天日干しされた梅干し」「みかんの編み袋に詰められた大量のニンニク」「屋外の水場に積み上げられたお鍋」。どれも島民の日常生活に欠かせないものばかりなんですが、それらの配置があまりに面白くて、シャッターを切る指が止まりませんでした。

僕が子どもたちに伝えたいものがあるとすれば「振れ幅の大きい体験」だと思います。上質なもの、きれいなもの、美味しいものだけじゃなくて、ゴチャっとしたもの、えっ!?と驚くものなど。思わず目を背けたくなるものがあるかもしれないけど、その背後にある人間の愛らしさとか、どうしようもなさを理解した上で、自分のあり方を選択してほしいと考えています。

最近の日本は秩序が当たり前になって「なぜこんなところにこんなものが!?」という意外な出会いが少なくなりました。沖島の路地裏で出会った「人の営みというカオス」は、息子たちも興味を持って面白がってくれました。

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僕にとって「いい写真」とは、人生のかけがえない瞬間を残した写真です。

滋賀県の琵琶湖に浮かぶ小さな島「沖島」。居住地区へ立ち入ると、都会では見られない島民の日常が作り出した「人の営みというカオス」があります。秩序とカオスの両方を体験して、自分の心地いい場所を選択してくれると嬉しいですね。

あなたにとって「いい写真」とは何ですか?

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