#14 いつまでも、あると思うな親とカレー屋。~Lost Curry Memory~
毎週月曜更新、勝手にカレー哲学。
※本稿はすでに閉店したカレー屋のことしか書いていませんので、食べ歩きには全く何の役にも立ちません。
前から行こうと思っていて行けていないカレー屋さん、一度行ったきり再訪していないカレー屋さん、たくさんあると思います。しかし、行くなら今、思い立ったその時しかありません。金がないとか時間がないとかは言い訳にすぎません。
人生は短い。昔の人は、言っています。
「いつまでも、あると思うな親とカレー屋」と。
元気が出て、止まらなくなる純インド風日本のカレー、Big Sur。
閉店してしまった大好きなカレー屋として僕が一番に挙げたいのは湘南のBig Surだ。マスターが4月に急逝され、もうあのカレーは幻になってしまった。そのことを後でTwitterで知って、本当にショックだった。
マスターの吉田さんは一年ほど前からずっと体調を崩されており、お店の営業も休みがちとなっていた。再開されたら訪問しようと決めていたのだが、ついに実現できなかった。
30年以上もあの場所で営業されており、常連さんがたくさん。お客さん同士で結婚した方もいたという。
僕は都合3回ほどしか行ったことがないのだが、このカレーは他に類を見ない。湯島のデリーに範を取っているようでシャバシャバでスパイシーなんだけど、オリジナルとは明らかに違った。インドに行ったことがないから純インド風日本のカレーを名乗っている、と言っていた。
会社員時代の週末のカレー研究で試行錯誤の末行き着いたカレーは、インドでは入れないようなスパイスも入っていて、食べた翌日体が軽くなる、本当に薬のようなカレーだった。
一つ印象的な思い出がある。マスターと二人っきりの店内。しばらく話し込んだ後、そろそろ帰ろうかなというタイミングでサービスで出してくれたチャイは、今まで飲んだことのない複雑な香りと味がした。一体何が入っているでしょう、と問われる。
「…朝鮮人参ですか?」僕がそう答えると彼は、「いい舌持ってるねえ!当てられたのは初めてだ。でも、秘密にしといてね!」と快活に笑った。
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