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東京マサラ部主催バキバキビリヤニバトル2023を開催。テーマは 「秋を感じるビリヤニ」

東京マサラ部主催、第3回目バキバキビリヤニバトルを開催しました。4種類の炊き手のハイレベルなビリヤニが集まりました。

昨今のビリヤニ人気は目を見張るものがあります。

自分自身もよくビリヤニを炊いて人に食べさせたりしていますが、でかいビリヤニを炊くのは単純に面白いですよね。たまに食べるビリヤニは寿司のような特別感があるし、炊き立てはなかなかお店では食べることができないので、ビリヤニはお店よりも自分で作る方が美味しい状態で食べやすい料理ともいえます。

ビリヤニが好きな人々を見ると、カレー好きやインド料理好きとは少し違った人種が多いように思えます。ビリヤニはパスタのように創作性が高くスパイスを使った炊き込みご飯として独自解釈され、日本で発展し始めています。

バキバキビリヤニバトルとは

バキバキビリヤニバトルは、ビリヤニストたちがビリヤニマンシップに則り正々堂々とビリヤニを炊き合い、忖度のないフィードバックを得て、互いのビリヤニの調理技術向上を目指すためのビリヤニコンテストです。

テーマに沿って各々5kgのビリヤニを炊いてもらうこと以外は全て自由。自分が胸を張ってビリヤニと呼べるものであればなんでもOKです。

食べ専の参加者はそれぞれのビリヤニを順番に食べ、よかった点と改善点の両方をフィードバックし、一番好きだったビリヤニを最後に一つだけ決めていただきます。Googleフォームでその場で結果が集計され、最も人気が高かったビリヤニが決定します。

さらにもう一つ、東京マサラ部が審査しマサラ部賞をひとつ勝手に選びます。その際、美味しいビリヤニであることは当たり前として下記の2点を判断軸としています。

①ビリヤニらしさ
・ハレの料理、馳走感があるか。
・香りが多層になっており、スパイスを使う意味があるか。
・味のヘテロ感があるか。トッピングも含めて、最後まで飽きずに食べられるような工夫があるか。

②テーマに沿っているか
・トッピングを含め、その具材を使う必然性があるか。今回のテーマでいえば秋の食材を単に使っているだけでなく、それを活かした料理になっているか。

まあ偉そうなことを言っていますが、自分が炊く側だったらかなり難しい要求をしている気がします。ただ、単なる人気投票ではなく文化的にもインド料理文脈でも意味のあるものにしたいのでこのような形式にしています。

ところでビリヤニにはバスマティライスを使うことが多いですね。

バスマティライスについてはこちらもご参照のこと。

ちなみにビリヤニは無数にあり、バスマティライスを使わないものも多い。ビリヤニのバリエーションについてはこちらです。


エントリービリヤニ4つの紹介

18時になり、会場にはビリヤニたちの良い香りが立ち込めて参りました。

今回のエントリービリヤニは厳選した4つ。食べ手も4つのグループに分かれてもらい、それぞれのビリヤニを周りながら順番に食べ、スマートフォンで「忖度のないビリヤニフィードバックシート」に記入していってもらいました。

①薩摩鶏レバーと秋茄子のミリタリーホテル風ビリヤニ

by 松永大樹ビリヤニ🌿たびる
X:@noflyingcircus
Instagram:@currybit

炊き手からのコメント

【付け合わせ】
①ディル入りハーバルドライライタ
②チキンレバーマサラジョール(ビリヤニにかける汁気の多いカレー)
【炊き方】
ボイル式(生米式・ヒンドゥー式)
【地方】
バンガロール
【現地の食べる人】
庶民・肉体労働者→たとえるなら吉野家の牛丼的なもの
【ミリタリーホテル風ビリヤニとは】
南インドの都市バンガロールには「ミリタリーホテル」という肉料理専門レストランがあります。ミリタリーホテル風ビリヤニはハーブたっぷりで短粒種のインディカ米を生米から炊き上げます。ダム式ビリヤニと比べて味わいが米全体にしみこんだビリヤニです。
ミリタリーホテル風をイメージした炊き手オリジナルレシピです。現地ではチキンとマトンのビリヤニを食べました。今回はチキンレバーを使います。
炊き手が切り盛りするワンマンビリヤニ定食屋たびるで培ったノウハウをベースに作ります。たびるの方針に則り「辛くしない」「スプーンだけで食べられる(手食も可)」「たびれる」ように作りました。
付け合わせは現地ミリタリーホテルのようにドライタイプのライタを付け合わせに汁気の多いカレー(ジョール)を時々ビリヤニにかけて食べます。
炊き手のビリヤニ思想的にビリヤニの美味しさは射倖心的。口に入れるたびに味が違う面白さと美味しさを作りました。

【使用バスマティライス】
DAAWAT CLASSIC


②秋鮭とビーツのビリヤニ

X:@pigpopbrewer
Instagram:@kuri_pigpop

【炊き手からのコメント】
秋というテーマで連想するのは”秋の香り”です。色々ある中で私は魚と根菜の香りを選択しました。
この季節はやっぱり魚を食べたい。
そこに冬の足跡が聞こえてくるような根菜のエッセンスをプラスして、にぎやかにワシワシいってもらえたらと思っています。

【バスマティライス】
LAL  QILLA OLD MALAI +DAAWAT  CLASSIC
フワプリな食感をブレンドで作ります。


③鹿とキノコのビリヤニ 柿のライタ添え

byシャーリ
X:@heiji326
Intagram:@tasting_326

【炊き手からのコメント】
「秋を感じるビリヤニ」ということで、鹿とキノコを使った、山の幸満載のビリヤニにしました。
鹿は赤ワインとスパイスでマリネして風味豊かに、キノコはフライドオニオンと一緒に揚げて、名脇役として仕立てています。
旬の柿を使ったライタと一緒にお楽しみください。

特徴的なスパイス:これといってないですが、使っているスパイスで特に鹿に合うと感じるのは、クローブ、アジョワンかなと思います。

【バスマティライス】
DAAWAT CLASSIC
(本当はDAAWAT BIRYANIを使用予定だったが、哲学の浸水ミスにより DAAWAT  CLASSICになってしまった。ごめんなさい)

④舞茸アオカビリヤニ

by ssk
X:@Realmadspice
Instagram:@real_mad_spice

事前情報なし。

付け合わせ:
・洋梨とセロリのライタ
・バターナッツとレモンのピックル
・エッグボルタ

【バスマティライス】
LAL  QILLA OLD MALAI +DAAWAT  CLASSIC


それぞれのビリヤニに対するフィードバックと審査結果

フィードバックシートから抜粋しつつ、マサラ部の見解を入れつつ要約します。正直どれも単体でめちゃくちゃ美味しいのですが、食べ比べてみるとより違いがはっきりして面白いですね。


①薩摩鶏レバーと秋茄子のミリタリーホテル風ビリヤニ

バンガロールにある肉料理専門のミリタリーホテルにインスパイアされた、もつ煮込みのような吉野家牛丼のような濃厚なビリヤニでした。
力強く酒が進みそうなビリヤニ。反面、秋茄子があまり感じられないなどテーマに沿った訴求力が少し弱かったかも。レバーの火加減が完璧に美味しかったですね。

・鶏レバーがとにかく濃厚で、苦手なはずなのにスッキリと食べられた。
・超濃厚で、味が濃いのが好きな人には最強なビリヤニ。
・トッピングのドライライタもさっぱりしていて安心感があるし、お米の水分をそのままに食べられるという良さがある。
・秋茄子がとけてしまっており、テーマである秋感がわからなかった。
・ジョールが同じ方向性の味だったので、もう少しコントラストの差分がはっきりすると尚良いと思った。
・適度にほんのり米の芯が感じられメリハリがある 米および具材それぞれにちょうどいい塩味が入っている 噛み進めた後に残るスパイスの余韻が最高にいい ねっとりとしたジャガイモに対し、とろけるチキンレバーが食欲を増進させる 老舗居酒屋でモツ煮を食べているよう。めちゃくちゃ酒が進みそう!

②秋鮭とビーツのビリヤニ

彩りとセンスの良い、高らかでポップなビリヤニでした。秋らしく鮭を採用し、別焼きで具材として乗っけることで和風な雰囲気もあり、季節感満載のビリヤニ。ビーツと鮭を二つ加えたことで主題が少し分かりにくくなっている感はあるものの、一番ワシワシと食べられるビリヤニでした。

・お米のフワパラ具合はいちばんよかった。最後まで食べられてワクワクする見た目もかわいいポップなビリヤニだが、ちょっと辛味が強いかも?
・鮭がとても美味しい!タルタルソース的な感じでライタとめちゃめちゃ合っている。ビリヤニ自体は少し辛いかな?となったけど、鮭もライタもすべての相乗効果でいい感じの味になっている。
・ビーツの土っぽさに嫌な感じは無かったがシャケもビーツも香りが強いので、2つ一緒にいれなくても良い気がした。
・どストライク案件! まずはカラフルさに目を奪われる 米もふらぱら、塩味も絶妙 ビーツの食感・風味やディル入りライタが、外はサクッと中はふんわり揚がった鮭のうまさを引き立てる 一気に食べ進めたい欲望を抑えレモン汁をかけるとまた爽やかさが増して最高 お代わりしたい!!

③鹿とキノコのビリヤニ 柿のライタ添え

鹿肉はずるいな〜と思いつつ、ミニマルなインド料理としての表現に収まっているのがすごかったです。気を衒っていないのに斬新。中心にいるアニスの甘い香りが少しくどく、油が多めな点は少し気になりました。

・ライタに柿を入れることでビリヤニにアクセントを付けるというコンセプトがあったとするならば、もう少し柿の風味を高める工夫を入れる点に改良余地があるかもしれないと思いました。
・鹿と赤ワインとキノコの存在感がすごい。柿は溶けない程度にビリヤニに入れても良かったかも。若干強い香り達が多すぎたかも?
・It had the nice look and the dum Briyani layers like curry then rice and yellow rice on top. Deer meat was tasty and the mushrooms were really good with the masala and rice. The fruit raita was interesting. With little more dum on the top and a bit more softener meat it would be a fantastic Biryani.
・鹿肉が大きくて噛む喜びがあった。旨味もすごく感じた。クローブの香りがしっかり効いていて個人的にはかなり好きだった。少し辛味が強かったかも。今日は涼しかったので暖まる感じがあって嬉しかった。

④舞茸アオカビリヤニ

舞茸とゴルゴンゾーラ。サイケデリックなびっくり感があり、料理としての完成度は一番高いと思いました。ビリヤニというよりチーズリゾット感があり、ワインのつまみにしたら絶対美味しい重たさ。肉が入っていないのに旨味がすごい。

・ベジとは思えない旨味の強さに驚いた。すべてを混ぜたときの渾然一体となった食感と旨味に恍惚となりました。ライタも食感と香りが良かった。塩分は個人的には少し強めに感じた。
・強烈で独特なサイケデリックな香りの暴力、個々の味として説明する言葉を思いつかない。付け合せも同じく謎に満ちている。この複雑な魅力を理解するには私には10年早い気がする。
・ゴルゴンゾーラの風味をこんなに上手に活かすなんて変態としか言いようがないですね。挑戦的なコンセプトは個人的には大好きです。バランスもよく考えられていました。美味しかったです。
・ファーストインパクトめちゃくちゃ青かびでびっくりしました。 舞茸の出汁がミント?ハーブの香りと混ざってカオス(良い意味で) もはやビリヤニではない?新しいワールドを見せてもらいました。 個性強めの味だけど、手の込んだ付け合わせで、手が止まらなくなりました。 チーズのジャンク感がビリヤニには新鮮で中毒性がありそう

忖度のないビリヤニフィードバックシートもご参照。

さて、投票で一番人気だったビリヤニは…。

かなり票が割れましたが、今回の人気ビリヤニはシャーリの「鹿とキノコのビリヤニ 柿のライタ添え」となりました。

そしてなんと、集計結果を見る前に議論の上決定した、東京マサラ部が決めるマサラ部賞も、「鹿とキノコのビリヤニ 柿のライタ添え」というダブル受賞になってしまいました。今回の4種類のビリヤニの全てが素晴らしく美味しかったのですが、ビリヤニらしさと秋らしさという双方でのポイントの高さが評価されました。

シャーリさんにはお好きなバスマティライスが賞品として送られます。たまにイベントなどで米料理を中心に提供されているようなので、SNSをチェックしましょう。


最後にそれぞれの炊き手からコメントをいただき、参加者含めて質疑応答の時間を設けて秋のバキバキビリヤニバトルは終了しました。ついでにちょっとATSU ATSU !! Parottaの宣伝もしました。

来年はでっかい公園とかでビリヤニフェスやれたらいいですね。ただ、ビリヤニはできたそばから鮮度が落ちていくため、オペレーションの工夫が課題な気がします。例えばある程度は事前予約制にして、2時間ごとに炊き立てを用意するとか…?

素晴らしいビリヤニをありがとうございました。また、食べ手の皆様も忖度のないフィードバックをありがとうございました。


最終講評会の全記録

以下に炊き手それぞれのコメントと、フィードバックや質問など全文書き起こしを掲載しています。これを機に東京マサラ部オンラインに入会すると、東京マサラ部が日本にインドをつくっていく活動を応援できますよ〜。

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