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バスマティライス15種類食べ比べ全データ【東京マサラ部活動レポート】

バスマティの鳴き声を聞いたことがあるか?彼らは浸水していると、たまにキシキシと鳴くことがある。それはダックスフントのように品種改良を重ねる中でより長く、より香るように宿命付けられたお米たちの、何か重大な嘆きなのかもしれない。

すっかり日本でもおなじみになった感のあるインド米、バスマティライス。
香りが強くて、細長く伸びて、ノンベジアイテムによく合います。高価なのでインドでは日常的に食べられているわけではなく、ビリヤニやプラオなどの特別な料理に限定して使われています。

最近は日本でも入手しやすいため、日々の食事の気分転換にも取り入れやすいと思います。日本米とミックスする場合は、同量でミックスして早炊きにすれば大丈夫です。

この記事では日本で購入可能なバスマティライス15種類に絞り、実際に食べ比べした結果をランキング形式、レーダーチャートで掲載しています。

▼そもそもバスマティライスって何!?という方のために、概要をこちらの記事にまとめておきました。


そんなバスマティライスが何故か東京マサラ部室に15種類くらいあったので、貴重な日曜日を丸一日溶かして、炊飯器を15回稼働してすべて食べ比べてみました。ちなみに朝9時に初めて夜の7時までかかりました。(このRadio talkでもそのときのことを話しています。だめになりそうなときに聞いてください。)


noteメンバーシップ「東京マサラ部オンライン」ではこういったカレーやインド料理にまつわるマニアックな疑問を常に考えています。カレー作りの腕を上げたい方、スパイシーな仲間が欲しい方はこちらからご参加ください。


さあ、あなたの推しバスマティはあるかな!?

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比較するバスマティライスの銘柄

バスマティライスは一部御徒町や池袋で購入したものがありますが、ほとんどは新大久保周辺で買えました。一部欠損データがありますが、産地と購入したときの値段を記しておきます。

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MESKAY & FEMTEE(パキスタン)
INDIA GATE CLASSIC(インド)500/1kg
GUARD(パキスタン)500/1kg・1800/5kg
NAZ(パキスタン)
KAARAL緑ノーマル(パキスタン)450/1kg・1900/5kg
DEVAAYA(インド)550/1kg・2200/5kg
KOHINOOR(インド)700/1kg
DAAWAT CLASSIC(インド)2300/5kg
Naubahar(パキスタン)500/1kg
LAL QUILLA SPECIAL OLD MALAI(インド)750/1kg
LAL QUILLA MAJESTIC(インド)750/1kg
SARTAJ(インド)590/1kg
GUARD ULTIMATE(パキスタン)
Maharani(インド)1890/5kg
AMBIKA(インド)2100/5kg


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実験方法

- 200gのバスマティライスに340g(170%)の水を入れ、30分浸水時点でザルに上げ、吸水重量を測定する。
- TIGER炊飯器JBH-G1を使用し、早炊きモードで炊く
- 炊きあがり時点で釜ごと重量を測定し、米粒の長さを測定する。
-炊き上がり後すぐに官能評価を実施する。
-官能評価項目としては、米を単体で食べたときの
 ・香りの強さ
 ・甘味
 ・弾力、モチモチ感
 ・シャキシャキ感
 ・崩れやすさ・壊れやすさ
 ・パラパラ感
 を評価し、5段階でレーダーチャート化する。
-その後評価用ダル、ヨーグルト、カレーなどと合わせて食べたときの感想も記述する。
-この一連のプロセスを15回繰り返す。

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評価用ダルはトゥールダル、塩、油、ターメリックのみで構成される。


結果

全15種類を食べ比べた結果を元に、「長さ」「吸水量」「そのまま食べて美味しいお米」「ビリヤニ向きのお米」「日常米として優秀なお米」それぞれの部門でランキングを作ってみました。


ダラララララララララ.....。(ドラムロール)



炊飯後の長さ

炊けた後の米をランダムに3本サンプリングし、定規で長さを測定してその平均値を算出しました。

1位:AMBIKA...18mm

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びよんびよんに伸びていました。


2位:MAHARANI...17.7mm

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ぶいんぶいんに伸びていました


3位:GUARD ULTIMATE...17mm

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これもかなり伸びていました。


吸水量

炊きあがり直後に炊飯釜をまるごと重量測定し、生米200gと比較した際の増加比率を計算しました。

1位...MESKAY & FEMTEE    2.405倍(481g)

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吸水量は多いんですがそんなに評判は良くなかったお米。


2位...SARTAJ  2.395倍(479g)

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同率2位...DEVAAYA 2.395倍(479g)

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そのまま食べて美味しいお米

官能評価の際に特に評判がよかったお米。そのまま食べて特に美味しかったのはINDIA GATE、LAL QILLA MAJESTIC。もう、ナルシスティックなまでに単純においしい。

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ビリヤニ向きのお米

しっとり系ニュアンス...DAAWAT、INDIA GATE
シコシコ系ニュアンス...GUARD ULTIMATE、LAL QILLA MAJESTIC
中間...LAL QILLA

という感じでしょうか。日本に流通してるバスマティは本来ビリヤニ向きじゃないという話を聞きましたが、どうなんでしょうか。
上のお米たちに共通するのは見た目が茶色っぽくて香りが強く、繊維がしっかりしていること。どんなビリヤニにしたいのかにもよりますが、そういうお米がビリヤニに向いている気がします。

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日常米として優秀なお米

毎日食べる米として、あまりにも美味しすぎるものは食べ疲れてしまうし、コストが高すぎるとしんどい。
そういう要素を考慮しつつ、高コスパと言えるお米をピックアップするならばKAALALMAHARANIでしょうか。

両方とも新大久保ならば5kg1900円前後で買えるので日本米と同じ感覚で購入できます。このあたりからなら日々の食事にも取り入れやすく、KAALARの袋は使い終わったらバッグとしても使えます。

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今回の結果は基礎調査官能調査に分け、それぞれ下記のようにDB化しています。
データが煩雑なので「東京マサラ部、インドをつくる」マガジン購読者に公開しています。よろしければどうぞ。

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残された課題とまとめ

それぞれの観点からランキング形式でいくつかピックアップしてみましたが、残された課題も多々あります。

-各銘柄の適切な水分量
今回は横並び比較をしたかったため全て同じ水分量(170%)で比べています。定説としても170%の水分量がベストらしいのですが、本来は各銘柄ごとに適切な水分量があるはずで、今回はそこまでは比較できませんでした。


- 湯取りと炊飯量の差分
米をパスタのように茹でる「湯取り法」で調理した場合は炊飯器で調理した場合とも仕上がりが異なります。今回の実験に置いて、浸水した時点での水の濁り具合にもかなり差がみられたので、恐らく含有されるデンプンの量に違いがあります。となれば銘柄毎にも湯取りと炊飯器の向き不向き、湯取りの適切な茹で時間があるのかもしれません。

まあ、何を持って「適切」と言えるのかは永遠の課題かもしれませんが...。

-成分比較
同じ条件で食べ比べてみると同じバスマティライスでも官能評価的にはかなり差があると感じた。大きく分けると、弾力のあるモチモチ系と繊維質なシャキシャキ系、崩れてしまうボロボロ系の3種類に分かれるように思える。これらを成分分析することで、官能評価と成分を結び付けられるのではないかと思います。

-熟成年数の違い
バスマティは日本米と違って古ければ古いほど評価されるが、ワインやウイスキーのように10年20年ものってあったりするのでしょうか。3年熟成くらいのものはよく見かける気がするが...。


-各料理法ごとの好適米

ビリヤニ好適米をいくつかあげましたが、同様にレモンライスに向いているお米、プラオに向いているお米、チャーハンに向いているお米、タマリンドライス、キチュリに向いているお米などいくつかあるのかもしれません。そういうのも探っていけたらいいですね。

ちなみに今回200×15種類で3kgのお米を炊いたためさすがに食べきれず、余ったお米はベジプラオ、レモンライス、バンギバスになりました。基本的には、そのまま食べてうまいお米は料理に使ってもうまい。しかし、イマイチなお米もある程度ごまかしはきく。

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15種類のバスマティ比較全データ(ここからが本番)

15種類のバスマティそれぞれの官能評価データを全てレーダーチャートにしてみました。下記6項目を5段階で評価しています。

 ・香りの強さ
 ・甘味
 ・弾力、モチモチ感
 ・シャキシャキ感
 ・崩れやすさ・壊れやすさ
 ・パラパラ感

評価に関しては完全に独断と偏見に基づくため、どこまで参考になるかわかりませんがバスマティ選びの際の参考にしてみてください。


追記:記事の反響コメント

note公式に紹介していただきました!他にも多くの反響やコメントをいただきました。

一定期間が経過しましたので、メンバーシップ内限定記事とさせていただきます。

※注意:全てのお米を同条件で比較したため、それぞれの米のポテンシャルを完全に引き出せてはいません。湯取りにしたり水分量や浸水時間を変えたり、それぞれの米に対して適切な炊き方をすることで評価が変わってくると思います。

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