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【総評】FUJI ROCK FESTIVAL '22

中野ゆざめと一緒に、2022年7月28日(木)〜8月1日(月)にかけて苗場に泊まり込み、フジロックに行ってきました。

各日の模様はこちら

2人が観たアクトを全レポしています。かなり時間を割いて、しっかり書き込んだので、是非是非。

全体総評

中野ゆざめ

念願叶ってのフジロック初参加。私も音楽を趣味にしてそれなりになるのですが、それでもなおまったく体験したことのない、ある意味異常な音楽体験をさせられた五日間でした。例えるならば、「音楽の奴隷」になるイベントだったとさえ思います。

遠く離れた山奥まで車を走らせ、雷雨のさなかに大荷物を運んでテントを張り、ライブが始まれば真夏の山中を深夜まで駆け巡り、疲れてテントに戻っても爆音で眠れず、かと思えば朝は暑さですぐに目が覚め……(詳しい人によれば、これでも今回は全然過ごしやすい方だったそうです。マジで?)キャンプと言うと聞こえはいいですが、要するに「プリンスホテルに収まりきらないバカの音楽ファンがやむにやまれず野営をしている」というのがほんとのところでしょう。なぜわざわざこんな苦行を選ぶのかといえば、畢竟「そこに音楽があるから」ということなわけで、こんなもの「音楽の奴隷」というほかはないのです。

しかし、それでもフジロックがこんなに人を惹きつけてきたのは、むしろそうやって「音楽の奴隷」になるからこそ見られる景色があるからなのだとも思います。異常生活によって日常から完璧に切り離され、世界から集まった一流のミュージシャンのパフォーマンスを連日連夜浴びせられれば、否が応でも感度は高まるし、音楽への視点も新しくなるというものです。例えば、私は恥ずかしながらライブのありがたみ(楽しい、ということ以上の)をよく分かっていなかったのですが、演者がそこに存在し、何らかの意志を持って楽器を鳴らしたり曲を繋いだりしているのをダイレクトに感じられるのってこんなに凄いことなんだ、ということをようやく理解できました。帰り道、いつもの音楽を聴いていても、演奏者の視座を想像する解像度が格段に上がったことを実感しました。やっぱり、音楽を趣味にしている者としては、こうやって徹底的に「分からせられる」経験が必要なんだろうと思いましたし、その意味で、毎年参加しているフジロッカーのみなさまの気持ちが本当によく分かりました。

ビビりながらの初参加でしたが、想像していた以上に刺激的で楽しい経験をすることができました。高まった感度を衰えさせないよう、これまで以上にたくさん音楽を聴き、自分でも曲を書き、楽器も練習して、いつかまた機会があれば喜んで奴隷になりにいこう、と思います。また会おう苗場!

Phillsy

「noteでディスクガイドを書いている人間が、フジロックに行ったことがないってのは、モグリじゃあないか??」「けいおん!では、高校生でさえ既にフジロックデビューを済ませている」と、まあそんな調子で行ってきた、人生初のフジロック。そんな軽い気持ちでしたが、事前準備のうちから、何やら異常な感じを受け始めました。高額な料金設定、東京からの距離、テント泊、異常なステージ間の距離、急な雨……挙げ始めればキリのない劣悪な環境の中、延べ7万人が訪れるのは何故か。苗場での3日間は、その答えを一つ一つめくっていくような時間でした。

普段は観られないワールドクラスの演奏。都市型フェスではありえないほど懐の広い様々なジャンルのアクト。ビッグステージの合間で繰り広げられる、今見たい新進気鋭のアーティストによるパフォーマンス。これらを楽しむためだけの世間から隔絶された空間。一旦苗場を訪れてみれば、全てがここにしかない特別な体験だったのです。

今回のフジロックでは、合計で40近いアーティストを観ましたが、そのほとんどが、生で観るのは初めてのアーティスト。特に、サイケなど、初めて聴くジャンルも多かったのですが、最高の演奏に30分も耳を傾けていると、不思議と楽しみどころがわかってくるのです。常々、新しいものに耳を慣れさせる、聴く耳を作るというのはテーマにして生活していますが、この3日間で大きく成長できたような気がしたのも収穫でした。これも、さまざまなジャンルが集まるフジロックだからこその醍醐味ですね。

世の中、評判よりも実物の方が優れているものなんて僅かだと思っているのですが、フジロックは間違いなくその一つです。もし、あなたが音楽好きなのであれば、必ず一生に一度は苗場の土を踏んでください。そうすれば、あなたもフジロッカーになり、再び苗場に足を運ばざるを得なくなるはずです。

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