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【観たやつ全レポ】FUJI ROCK FESTIVAL '22 DAY2:7月30日(土)

いつもディスクガイドを書いている中野ゆざめと一緒にフル参戦してきた、フジロックレポの続きです。観たアクト全レポします!今回の記事は2日目(7月30日土曜日)。

▽各日のレポはこちら▽

BLOODY WOOD

GREEN STAGE 11:00〜12:00

朝メタル。多分健康に良い。

(中野ゆざめ)
インド・ニューデリーのメタルバンド。System Of A Downあたりを思わせるサウンドに民族音楽の要素をプラス、という指向がうかがえますが、一日目のTHE HUと比べると中途半端な感じは否めないのが正直なところ。THE HUでは両者がうまくミックスされていたのに対し、こちらはメタルに味付けとして民族楽器が乗っている程度。曲はオルタナメタルとしては普通にかっこいいだけに、いまいちコンセプトが見えなかったのが残念でした。

(Phillsy)
インドの民族メタルバンド。しばらく前から、日本でもその筋の人には有名だったらしく、骨太の解説記事もたくさん出ています。ただし、もしこれだけを観たら、大興奮で絶賛していた気がしますが、昨日のTHE HUと比べると、メタルと民族音楽の融合度が若干イマイチな気がしてしまいました。ただ、普通にかっこ良くはあった。

Fire EX.

WHITE STAGE 12:30〜13:30

(中野ゆざめ)
台湾出身のパンクバンド。TOSHI-LOWのゲスト出演やゴッチとのコラボ曲、日本語詞の楽曲などもあり、日本のバンドへの愛が感じられて嬉しい。それもあってか、フジロックに出られたことにかなり感極まっていたようで、観ている側としてもグッとくるものがありました。

(Phillsy)
台湾のバンド。かなり日本のバンド感があるねという話をゆざめともしていたんですが、調べてみると、Hi-Standard、HUSKING BEEなど、邦メロディックパンクから影響を受けているよう。日本愛は、それはそれは凄まじく、フジロックに出られたことに感動して、Vo.Gt.のSamが泣き出す(しそうになる?)一幕も。代表曲「島嶼天光」は、2014年のひまわり学生運動の際にアンセム的な立ち位置を占め、一躍台湾のトップヒットに。今や「台湾人民バンド」の異名を獲得し、台湾で知らぬ者はいないらしい。これもゆざめ情報ですが、こうした背景もあってか、日台の相互理解に寄与したとして日本の外務大臣表彰ももらってるみたいですね。技量ももちろんあり、感動ありの印象的なステージでした。

ORENGE RANGE

GREEN STAGE 13:00〜14:00

(中野ゆざめ)
特段好きというわけではありませんが、やってたらまあ観るよな、というバンド。「上海ハニー」や「イケナイ太陽」を本当に久しぶり(小学校時代以来?)に聴き、アンセムとしての力がものすごいなと感動。こういう曲を作りたいものです。

(Phillsy)
メンバーのNAOTOがほとんどの曲を書いていますが、久しぶりに聴くとどれも一級品のパーティーポップであると再認識。一雨降る中も、巧みなステージパフォーマンスにGREEN STAGE中が大盛り上がり。終演後、「最高だった」という声も周りからちらほら。あと、なんだかんだで、今もたまにニューリリース出しているんですね。

折原悠太(重奏)

GREEN STAGE 15:00〜16:00

(中野ゆざめ)
伸びやかな歌声と生楽器のサウンドが山の中に響き渡る心地よいステージ。SSWとしての実力が高く評価されている方ですが、重奏形態の複雑精緻なアンサンブルも見応えがありました。MCはイメージ通りの辛気臭さで、この人が自分で曲を書いて歌うことを選んだのはどうしてなんだろうというのが気になりました。

(Phillsy)
嫌いでした。個人的な好みですが。歌い方も、MCも性に合わない。いちいち鼻につくような発言が気になって集中できなかった。

とにかくGREEN STAGE周辺はトンボが多かった

SNAIL MAIL

WHITE STAGE 16:10〜17:10

(中野ゆざめ)
オアシスTに短パンというラフな出で立ちに、歪んだジャズマスターと気怠い歌声という、オルタナシンガーとしてはバッチリのスタイル!バンドメンバーやスタッフに苛ついていそうな場面もありましたが、この生意気さ・奔放さがそれこそギャラガー兄弟を思わせます。一緒にバンドやってるメンバーは大変なのかもですが、個人的には、オルタナロックスターはこのぐらい偏屈・自己中でナンボだと思います。そこにシビれるあこがれる。

(Phillsy)
今をときめく、アメリカのシンガソングライター。ポップでありながらも一風変わった、表現力に満ち溢れた楽曲と、気だるそうな歌声がベストマッチ。概ね興味深く刺激的なステージでしたが、気になった点が2つか。まず一つは、なんとなく、サポートメンバーとの噛み合わせがイマイチな気がした点。もう一つは、気だるそうな歌声はそれはそれで魅力的なのですが、なんとなくアタックがはっきりせず、拍感さえ失ってしまいそうに見えたのが残念でした。

ただ、音源では全くそんな感じはしないので、サポートメンバーとそりが合わなかっただけかも。とにかく、ものすごい才能とポテンシャルを秘めたアーティストだと思いますので、今後も追っていきたいと思います。既にめちゃくちゃ大物感はありましたが(自分より年下だなんて……)。

TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA

GREEN STAGE 17:00〜18:00

(中野ゆざめ)
ハナレグミとの「いかれたbaby」カバーはさすがに嬉しい。茂木欣一氏、粋なことをしてくれます。

(Phillsy)
なぜか機会に恵まれず、スカパラを生で観るのは、これが初めて。めちゃくちゃ楽しかったです。言わずもがな、全員がめちゃくちゃうまい、スカパラといえばこれに尽きると思います。あと、定番らしいんですが、名曲「Paradise Has No Border」で「一番盛り上がっているのはどこだ!?」、「そっちはどうだ」と観客を煽るパフォーマンスも最高でした。

FOALS

GREEN STAGE 19:00〜20:10

(中野ゆざめ)
先日リリースの新譜の雰囲気そのままに、ダンサブルで楽しいステージ。世界各地のスタジアムを揺らしている彼らならではの、しっかりした安定感とサウンドスケープのデカさを感じる演奏でした。”Mountain at My Gates”や”My Number”、”Inhaler”などのダークな雰囲気を纏っていた過去曲も、「とにかく踊るぞ!」というムードの中、不思議と前向きな力を持って演奏されていたように思います。トリ前にばっちりボルテージを高めてくれました。

(Phillsy)
イギリスで今最も勢いのあるバンド、FOALS。とにかくめちゃうま。技術力が半端じゃあない。このフジロックで観たステージの中でもトップレベルの技量だった。そこにきて、ダンサブルな曲調や、終盤のヘヴィーなギター。何を取ってもさすがとしか言いようがないプレイに、会場も大興奮。ちなみに、終演後のインタビューでは「幾何学模様は今、世界で一番最高のバンドだ」と語っていたそうです。

DINOSAUR Jr.

WHITE STAGE 20:00〜21:00

(中野ゆざめ)
大正義・爆音ジジイ三人組。裏のArlo Parksも気になったんですが、オルタナ好きを名乗っている以上この人たちを観ないわけにはいかない。バカみたいな量のマーシャルを並べて、何でもないような顔でものすごい爆音をぶちかますJ・マスシスに、本当に音が出ているのか不安になるぐらい荒々しい弾きっぷりのルー・バーロウ、そして終始無言&真顔で、ひたすら力強いドラミングでバカ音量のアンサンブルを支えるマーフといった、意味不明な怪しいおじさんたちがただデカい音を出すだけ出して帰っていく、最高のライブでした。曲目も、 ”The Wagon”や”Freak Scene”、”Feel the Pain”、”Start Choppin’”、そして”Just Like Heaven”のDinosaur Jr.バージョンといった、解散前の代表曲が目白押しの神セトリ。音がデカすぎるあまりイヤモニじゃなくて普通に耳栓をしていたり、ステージドリンクが青汁みたいな謎の緑の液体だったり、前二人の毛量がやっぱりおかしかったりと、レジェンドはもう何から何までレジェンドなんだな……と完全に圧倒されてしまいました。

ちなみに、今回のフジロックの出演者はそのまま韓国のフェスにも出演してから帰る人たちが多いようですが、彼らは「この一公演のためだけにわざわざアメリカから飛行機乗り継いで来たんだぜ!」と言っていました。本当にありがとう。

 ARLO PARKS

RED MARQUEE 20:10〜21:10

(Phillsy)
ゆざめが「宗教上の理由でDINOSAUR Jr.を観る必要がある」と言うので、一人でRED MARQUEEへ。カジュアルで肩肘張らない曲調と、不思議と心の中に入ってくるような柔らかくて魅力的な歌声が素晴らしいステージでした。そっと衆目を元気付けるような楽曲の数々に加え、MCでも、その人柄の良さが滲み出るようで、さらに好感。ステージに置かれたひまわりと桜の装飾も、そんなArlo Parksにぴったりでした。

JACK WHITE

GREEN STAGE 21:10〜22:40

(中野ゆざめ)
今回自分が観た中で、ベストアクトを一つ選べと言われたら間違いなくJack Whiteです。次々と表情を変えるセットリストの曲目の中で、ギターという楽器の持つ表現力と、それを引き出すギタリストという存在の可能性を徹底的に追求してみせたライブだったと思います。ギターに取り憑かれたような、あるいは悪魔と契約でもしているかのような、狂気さえ感じる彼の演奏は、並のギタリストに真似できるものではないというか、「これまで聴いてきたギターはなんだったんだ」と思わされるほど衝撃的でした。初めてジミヘンやエディ・ヴァン・ヘイレンを観た人も同じような気持ちだったんじゃないか。White Stripesやラカンターズ以降のソロ活動はあまり追えていませんでしたが、彼が「現代の最重要ギタリスト」と呼ばれているのも納得でした。

聞くところによれば、なんと彼は当日その場の気分でやる曲を決めているらしく、インプロもガンガンやるらしい。つまり、バンドメンバーは次に何の曲が始まって、どんなフレーズが来るのかわかっていない状態でアレをやっていたそうです。ヤバすぎる。ステージから伝わってくる、一歩間違えば演奏が崩壊してしまうような緊張感はそういうことだったんですね。そのあたりも含めて、「ライブ」という形式にこだわることの意味なんかも感じられるステージでした。

というか、その場の気分で曲を決めているということは、アンコールでラカンターズの ”Steady, As She Goes” や、White Stripesのロックアンセム ”Seven Nation Army” をやってくれたのは、彼自身相当気分が良かったということなんですかね。終演後もすごくやりきったような表情をしていたし、その舞台が日本のフジロックであったというのはなんだか嬉しいですね。

(Phillsy)
伝説的ギタリストであり歌手。正直言って、勝手に若干過去の人間な気がして、これまで真面目に聴いたことがなかったのですが、もう度肝を抜かれました。このフジロックの中での個人的ベストアクト。私の完敗ですね。指技からエフェクター、コントロールノブまで駆使したゴリゴリのプレイで、ギターというのは、こんなに表現の幅があるのかと驚愕。近年は、こうしたエネルギッシュなギターを志向するアーティストは減っている気がしますが、Jack Whiteの演奏は、「エレキギターによるロックンロール」という古典的なスタイルが、決して時代遅れではなくて、今なお輝きを放っていることを証明してくれました。

しかし、ただ過去のアーティストとして、焼き直しを量産しているわけではありません。演奏中、パピプペ親父のようなエフェクターを何回も使っていて、気になったのですが、後から調べてみると、しばらく前に大きく話題になった、「KORG MIKU STOMP」の仕業のよう。これはKORGが開発した、ギターの音が初音ミクの声に変換されるクセモノエフェクターなんですが、こうしたものも駆使しながら、冒険心と遊び心に溢れた演奏を展開。オーセンティックな演奏の中にも、新しい他文化を取り込んで羽ばたいていく包容力を見せる演奏でした。

また、サポートメンバーにも言及しなければいけません。。Ba.はDominic Davis、Key.はQuincy McCrary(Key)、DrはQuincy McCraryが担当。全員が、即興的なJack Whiteに負けず劣らずの曲者。圧倒的なカリスマ、Jack Whiteの演奏の黒子に徹することなく、積極的なプレイで会場を沸かせます。その4者のやり取りは、ステージ上のピリつきがこちらにも伝わってくるほど。それでも、全員があまりに楽しそうに演奏するんですから、これは異常事態です。

かなり筆が乗ってしまいましたが、とにかく、ここ5年で一番衝撃を受けたステージでした。

超満員のGREEN STAGE

Night Tempo 昭和グルーブセット

RED MARQUEE 24:30〜25:20

(中野ゆざめ)
昨日に続いて二回目のNight Tempo。こちらは一日目と違ってがっつり1時間のDJセットでしたが、「そうくるか!!」という選曲の連続で、終始とっても楽しかったです。和田アキ子の「古い日記」、ラッツアンドスターの「め組の人」、吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」あたりは本当に予想外だった(しかも、アレンジや流すタイミングもベスト)のでめちゃくちゃアガってしまった。もはや彼の代名詞でもある「Plastic Love」や「真夜中のドア」のような王道シティ・ポップももちろんあり、独特のグルーヴを心ゆくまで堪能できる贅沢な一時間でした。5~6年ぐらい前まではネットの奥深くでジメッと広がっていたVaporwave / Future Funkを、こうしてフジロックで聴いているのはなんとも不思議な気もしましたが、そこについては原理主義者ではないのでセーフ。

(Phillsy)
シティ・ポップの立役者、Night Tempoの2ステージ目。昭和歌謡をDJプレイで繋ぐたび、会場は大熱狂。あまりの盛り上がり加減に、曲が終わるたびに大拍手が巻き起こって、若干次の曲を繋ぎづらそうにしていたのも、ご愛嬌。日本の昭和歌謡が、Night Tempoの手によって、ここRED MARQUEEだけでなく、海外でも同じようにフロアを沸かせているんですから、不思議ですよね。

パソコン音楽クラブ

RED MARQUEE 25:30〜26:20

(中野ゆざめ)
ノスタルジックなサウンドと、漂うオタク・ミュージックっぽさが特徴的なポップスユニットというイメージでしたが、今回はだいぶハードなセットになっており、面食らって30分ぐらいで撤退してしまいました。もうちょいこの辺にも理解を深めていきたい。

(Phillsy)
敬愛するパソコン音楽クラブのステージ。サブスク音源に比べて、DJプレイは結構ゴリゴリめのサウンドだったので、若干びっくりしつつも、オリジナル曲が断片的に流れてくる(ニコニコメドレーのように、SE的に別の曲が混じったりもしていた)のも楽しかった。疲労から、途中で撤退したのですが、帰り際にはポケモン音楽クラブ名義で出ているアニメED「ポケモンしりとり」も流れたりなんかして、フロアの大歓声も遠く聞こえてきました。また、東京で改めて聴き直したい。

その他

テントへの帰り道、最高。

(中野ゆざめ)
FOALS → Dinosaur Jr. → Jack Whiteと、音のデカいギターロックの猛烈なエネルギーを立て続けに浴びることができた二日目でした。その意味では昼のSnail Mailもよかった。オルタナ好きにはたまらないラインナップ。

(Phillsy)
この後のZOMBI-CHANGもだいぶ気になっていたんですが、26:30〜なので撤退。また、ARLO PARKSを取ったことに後悔はしていませんが、やっぱりDINOSAUR Jr.のステージはめちゃくちゃ気になっちゃいますね……。

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