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【観たやつ全レポ】FUJI ROCK FESTIVAL '22 DAY1:7月29日(金)

いつもディスクガイドを書いている中野ゆざめと一緒にフル参戦してきた、フジロックレポの続きです。観たアクト全レポします!今回の記事は1日目(7月29日金曜日)。

▽各日のレポはこちら▽

THE HU

GREEN STAGE 11:00〜12:00

朝イチGREEN

(中野ゆざめ)
あのThe Whoではなく、モンゴル出身のバンド。個性的な出で立ちのメンバーが見たことのない楽器を構えて並んでいる姿はインパクト大です。ヘヴィメタル風の音楽性と、民族楽器のサウンドが絶妙な融合を見せていて、唯一無二のスタイルを確立できている感じがしました。はじめは色物バンドかと思ってしまいましたが、音楽的にもとても面白いことをやっている、挑戦的でかっこいいバンドです。

(Phillsy)
モンゴルの民族メタルバンド、THE HU。THE WHOとどこまで狙って掛けているのかわかりませんが、コミックバンドではなく中身は本物。馬頭琴やホーミーなど、モンゴルエッセンスを多用しつつも、よくありがちな「各国文化を混ぜてみた結果」みたいな中途半端なものにならずに、各要素を融合させて完璧なメタルに仕上げている。

私は、あまりモンゴル文化に詳しくないので確信はないですが、多分馬頭琴もホーミーも、本来の伝統的な奏法から離れた、独自の奏法を開発してるんじゃないかな。これが、違和感なくメタルに仕上がっている秘訣だと思います。とにかくかっこよかった。

NO BUSES

RED MARQUEE 12:00〜13:00

(中野ゆざめ)
国内インディーロックシーンの雄。UKロックを思わせる、暗くてエッジィなギターサウンドがかっこいいバンドですが、ライブではドラマーのパワフルでありながら精確なビートが引き締まったバンドサウンドに一役買っているんだなと感じました。あとMCがヘタクソすぎて逆に好感。

(Phillsy)
ゆざめ薦めで初見。普通に上手いし良い。THE HU後なので、海外旅行から帰ってきて食べる、ちゃんと美味しいラーメンのような安心感。演奏外の特筆事項としては、MCが、もう下手とかいうレベルではなく、完全に喋られてない。それでも演奏は堂々たるものでした。なお、巷ではベースがあいみょんに似ていると言われているらしい。

幾何学模様

FIELD OF HEAVEN 13:10〜14:10

この構図が最高なFIELD OF HEAVEN

(中野ゆざめ)
すごく評価が高いらしいということと、活動終了してしまうらしいというだけの情報から、ほとんど予備知識なしで見に行ったのですが、、ゆったりとした空気感の中で絡み合うバンドサウンドがとても心地よかったです。これはヘブンの雰囲気も相まってのことでしょう。少し調べたところ、メンバー全員楽器の経験も知識もほぼないところからのスタートだったらしく、DIY的に自分たちでサイケを模索してここまでたどり着いたそうです。すげーな。

(Phillsy)
これもノーマークでしたが、ゆざめに連れてこられて奥地のFIELD OF HEAVENへ。少し遅れて到着したステージには、ジプシー風の見た目、シタール、そしてなんといっても「幾何学模様」と言う名前、これは明らかなサイケデリックですね。トランスとかもそうですが、トリップを誘う音楽には悪魔的な魅力があります。そうした魅力を感じさせる、真実味のある演奏でした。さてはて、彼らはヤっているのかいないのか。

とにかく、12月に日本で解散ライブをやるらしいので、それに合わせてもっと勉強して、ちゃんと聴きに行きたくなりました。こういう出会いがフェスの素晴らしさ。あと、FIELD OF HEAVENの「森の中で聴く感」が、幾何学模様とベストマッチ。これはフジロックならではの素晴らしさですね。

THE NOVEMBERS

WHITE STAGE 14:20〜15:10

(中野ゆざめ)
マーケティングも含め、音楽活動というものをかなりしっかり考えていい楽曲を作っているバンドという印象ですが(こちらの記事とか)、少なくとも今回のライブはいまいちでした。「包み込むような轟音」にするには音量が足りず、歌や楽器を丁寧に聴かせるにしては、全体的にどのパートも抜けてこないので聴きどころがわからない、というように感じました(私が残響系について抱いている苦手意識とだいたい同じ)。ただ、それでもめちゃくちゃ盛り上がっている人もいたので、単なる好みの問題なのかもしれないし、楽曲自体への愛着がもっとあれば見え方も変わったのかなとは思います。

(Phillsy)
初見。個人的にはイマイチだった。とにかくガチャガチャはしてるんだけど、何がしたいか私にはわかりませんでした。あと、ベースをバイオリン(かチェロ?)の弓でボーイングしてたけど、音がイマイチだった。ボーイングでいい音を出すのは難しいから、あんまり軽々しく手を出さない方がいいと思うクラシック畑出身の私でした。

移動中の休憩スポット。依然として森。

Original Love

GREEN STAGE 15:00〜16:00

(中野ゆざめ)
知ってたけど、やっぱり歌い方のクセがすごい。バンドメンバーの雰囲気も含め、全体的にコテコテの「名人芸」感がすごかったです。シックでメロウな演奏が、まったりとしたお昼のグリーンステージにはぴったり。

(Phillsy)
すみません、あまりの疲労に寝落ちしました。ゆざめは良かったと言っていました。

Night Tempo Ladies In The City Live Set

RED MARQUEE 16:00〜17:00

(中野ゆざめ)
実はかなり楽しみにしていたアクト。冒頭のDJもさることながら、ゲストボーカルとして元ブクガの矢川葵、ボニピン、そして野宮真貴が登場したのには思わずテンション上がりました。この人選をしてくるあたり、昭和歌謡やシティポップだけじゃなくてその後の日本ポップスもちゃんと追ってるんでしょうね。クラムボンのために途中で抜けてしまったのですが、野宮真貴は「東京は夜の七時」もやってくれたそうで、もう一曲ぐらい見ていけばよかった……と後悔しています。

(Phillsy)
飛ぶ鳥を落とす勢いのNight Tempoですが、今年は2日目深夜と、このコマの2回出演です。このコマでは、昨年末リリースの新曲を披露。トラックメイカーとしてのNight Tempoを堪能できました。Night Tempoは、昭和歌謡のリミックス・DJプレイを中心に、シティ・ポップの立役者として有名ですが、ちゃんと聴いてみると、オリジナル曲もかなり作り込んでますね。音色もコードもかなり現代的ながら、昭和歌謡らしさも残した、まさに昭和の再構築のような楽曲の数々。ゲストボーカルも豪勢でした。

clammbon

GREEN STAGE 17:00〜18:00

(中野ゆざめ)
YOASOBIの代打での登場。キャリアの長いアーティストなだけあって、急遽決まったとは思えないほどの安定感・こなれ感を感じさせる演奏でした。キャンセルになってしまったYOASOBIへのメッセージ(「優しい彗星」のカバーとともに)もあり、シンプルに頼もしいな、かっこいいなと思いました。曲目は「サラウンド」や「波よせて」といった懐かしい曲が多めで、久しぶりに聴いた「シカゴ」はちょっとうるっときた。ミトが突然荒ぶりだすやつはやっぱりなんか笑ってしまったけども。

(Phillsy)
YOASOBIのikuraがコロナ陽性となったために、急遽5日前にブッキング。それでもなんの遜色もない、堂々たるステージでした。さすがベテラン。アクト直前、時報を流してカウントダウンをしていたのはいいものの、1曲目のスタートが結局時報とずれたり、YOASOBIの新曲「優しい彗星」のカバーをワンコーラスだけやる優しさが垣間見えたり、ミトが例によってタガが外れたように暴れ出したり、とにかくclammbonらしさが全開でした。一つ言うと、最初数曲は若干エンジンがかかっていないような感じもしましたが、曲を重ねるごとにボルテージもあがり、とても楽しいステージに。というか、そもそも普通にうまいし場慣れしてる。さすが。

Awich

RED MARQUEE 18:00〜19:00

満員御礼のRED MARQUEE

(Phillsy)
前後の関係で、ちょろっとしか覗けませんでしたが圧巻のステージ。沖縄出身の日本人女性ラッパーです。圧倒的カリスマと、芯のあるメッセージ、そしてそれを裏付ける確かなラップスキル。楽曲に闘うメッセージがありながら、投げっぱなし怒りっぱなしで観客を置いてけぼりにするわけではない「ストーリーのある」アーティスト。日本では、こうしたメッセージがはっきりとしたストーリーのあるアーティストは非常に少ないと思います(その点、3日目ヘッドのHalseyなんかは圧巻でした。別記事にまとめています)。完全にファンになりました。

特に印象に残った曲は、最新アルバムのタイトル曲「Queendom」。女王国という意味の本曲ですが、Awichの半生と滲み出る思いを歌う圧巻のラップです。こんなに、感情が迸るよう伝わってくる楽曲も珍しい。その裏にある圧倒的なワードセンスと、ダイナミックな楽曲。共同制作のChakiも相当な力量なんでしょう。

HIATUS KAIYOTE

GREEN STAGE 19:00〜20:10

(中野ゆざめ)
オーストラリアの怪物バンド。何をどう練習したらあんなに複雑怪奇な音楽をノリノリで演奏できるようになるのか、まったくわかりません。自分だったら拍のカウントとかでガチガチになってしまうでしょう。生で観ると、そうした緻密なグルーブが誰か一人の指揮によるものではなく、プレイヤーとして強烈な個性を持ったメンバー同士のバチバチのぶつかり合いによって生み出されていることが分かります。いわゆる「音楽によるコミュニケーション」の最もすごいものを見せられた気分でした。すごすぎて理解が追いつかなかった(アンサンブル全体を把握できなかった)場面が多々あったので、もっと耳を肥やしていつかまたライブを観に行きたいところです。セットリストは、前に私の記事でも紹介した新譜からの楽曲がメインで、最後に”Red Room”へと着地する構成があざやかでした。

(Phillsy)
豪産異色バンド。恥ずかしながら知っている曲は1〜2曲の状態で突撃。何よりもまず、Vo.Gt.のネイ・パームのキャラに度肝を抜かれました。なんかよくわかんないけど、エルフの格好してた。そして、楽曲もネイ・パームに負けず劣らず個性的。どの曲も、拍子がなくなったかと思えば、急にキメがやってきてバンドメンバーが全員揃う、かと思えばまた各パートがバラバラになっていくというような調子。これを寸分違わず合わせる圧倒的なアンサンブル力も見ものです。とにかく勢いで圧倒されたステージでしたが、正直なところ私には理解できない謎曲も数曲……。これは私の予習と耳の力の不足だと思うので、成長して、いつかまた相見えたいですね。

VAMPIRE WEEKEND

GREEN STAGE 21:10〜22:40

絶賛トラブル中のステージ

(中野ゆざめ)
一日目のヘッドライナー。メインスピーカーから音が出なくなったり、ありえないノイズが出たりといった音響トラブルでまさかの中断に見舞われましたが、エズラの爽やかなMCやアンセム満載の曲目で見事に乗り切り、明るい雰囲気に包まれた快演に終わりました(本当に良かった)。正直なところ、VWについては「なんだか不思議な曲を作っているインディーバンド」というイメージが強く、はじめにヘッドライナーが発表されたときも「まあ好きだけど、ヘッドライナーになるほどか?」と思っていました。しかし実際に観てみると、いろいろなアプローチを探求しつつも、どんな曲にも核となるキャッチーなギターリフや歌メロがあり、「ギターと歌でポップスを作る」というインディーギターロックの根本的な姿勢はクソ真面目なぐらいに堅持されているんだなということに気づきました(前提として、ギターもボーカルもめちゃくちゃ上手い)。その意味でVWは、確かに不思議な曲は多いけれども、カードが出尽くした感もあるギターロックをなおも前に進める実力を持ったバンドの一つと言えるのだろうし、ヘッドライナーとしても素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたと思います。ギターロックの愛好家として、自分の認識の浅さに恥じ入り、一から聴き直すことを決意しました。

(Phillsy)
最初、スピーカートラブルで中断したりと、若干嫌なムードになりかけましたが、トラブルが復旧してからは、私の方がそれを忘れてしまうほど、圧巻なステージ。どの曲も、一風変わっているにもかかわらず、非常に聴きやすい。サウンドとしては決して攻撃的な音ではないものの、ツインドラムで大迫力の音圧。こうした相反する要素が両立する絶妙なバランス感覚。どれをとっても素晴らしい。もちろん「Jerusalem, New York, Berlin」のような歌い込む曲も最高。最初、普通に生のアップライトピアノと歌だけかなと思っていたら、突然に2拍3連のベースシンセが入ってきて、楽曲が急に別の次元に展開。完全に引き込まれました。そういえば、これは蛇足ですが、この曲で、2拍3連もブレることなくなんなく手拍子するフジロッカー達にびっくりしました。

ORGE YOU ASSHOLE

RED MARQUEE 24:00〜24:50

(中野ゆざめ)
以前から結構好きで聴いてきたバンドですが、ライブは初めて。なんだかんだまだ歌モノをやっている人たちではあると思っていましたが、レッドマーキーに行ったらほとんど歌わない人たちがただただ爆音でミニマルなセッションを繰り広げていて、観に行くところを間違えたか?と思ってしまいました。50分間ほぼ一定のリズムで16ビートを叩き続けていたドラマーは本当に凄い。曲の切れ目もよくわからなかったのでセトリを調べたら、50分で3曲しかやってなかったらしい。しかも、その3曲も「たぶんこれなのではないか?」という推測があるのみだった。総じてヤバすぎ。

(Phillsy)
ヘッドライナーのVAMPIRE WEEKEND後、テントでの30分の仮眠を経て、眠い目を擦りながら深夜のRED MARQUEEヘ向かうと、あまりの不思議な演奏に一瞬で覚醒。生バンドなのに、かなりダンサブルな感じで、しかもDJプレイのようにどこまでが曲かわからない。これは元曲なのか、それともアドリブなのか、次の曲になったのかなってないのか。なるほど、これだからバンドなのに日中じゃなくて、深夜のDJ時間帯に回ってるんだなと思いました。

Yaffle

RED MARQUEE 25:10〜26:00

(Phillsy)
藤井風、iri、SHIRUP、adieuなどをプロデュースし、劇伴でも賞を取っているということだったので、過度に期待しつつも予習なしで突入。最初4曲聴いた時点で、深夜で疲労困憊だったこともあってか、全部同じ曲に聴こえてしまい途中退出。もっと体のコンディションが良い状態で聴けば違ったのでしょうか。

終わりに

帰りに寄った、ずとまよのPVを再現した出店

(中野ゆざめ)
このクオリティの演奏をあと二日間も観られるんですか??となった一日目でした。ノーベンバーズがちょっといまいちだったので、それならば裏のWONKを観れば良かったなあという後悔は若干あり。あとはDAWESやBONOBOも気になりましたが、他との兼ね合いで観られず。まあこのへんの取捨選択もフェスの醍醐味といえばそうなのかもしれません。観られなかった人たちは音源や再配信でチェックしようと思います。

(Phillsy)
本当は、この後、食品まつり a.k.a foodmanも観たかったんですが、27:00〜だったので翌日のことを考えて撤退。あとは日中でいえば、BONOBOも本当は気になりまくってました……。とにかく、フジロックのなんたるかを見せつけられて、圧倒された1日でした。


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