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偏りまくりの個人的クラシック良録音3選

こんにちは〜。

突然ですが私、実はクラリネットを趣味で吹くんです。と言うわけで、クラリネットに大幅に偏ったクラシック良録音を、3つほど押し売りします。
※クラリネットってなんだ?という方、『クラリネット壊しちゃった』に出てくるアレです。

クラシックってのは、全く同じ曲を、いろんな人が演奏しているわけです。ポップスでは奏者が違うものを「カバー」と言いますが、そう呼ばないだけでクラシックでも同じこと。「誰がいつ演奏したのか」が曲と同じか、それ以上に大切になってくるんですね。

ということで、「録音(≒演奏)」に焦点を当てて、3曲をご紹介します。

1. クラリネットソナタ第1番 Op.120-1 ヘ短調 / ブラームス /  Martin Fröst(Cl.) Roland Pöntine(Pf.)

作曲者のブラームスは説明不要の有名人。14歳年上の師匠の人妻クララ・シューマンを想って生涯独身を貫いた変態です。奏者のMartin Fröstは、スウェーデン室内管弦楽団で指揮も振るマルチプレイヤー。天才です。

一般に、ベートーヴェンやブラームスは、(フランスものと比較して)発音しっかり目の重厚な音作りが正統とされています。

ただ、日本のオケの演奏を聞くと、重苦しい演奏が多いです(最近は改善傾向?)。もう、今は倍管の時代じゃないのに!!
※倍管とは、木管楽器の人数を倍にして派手派手に迫力を出す手法のこと。

こと、西洋音楽を演奏する場合、日本人の感覚はどこか盆踊りみたいにダサくて、音もじめっと重い。対して、ヨーロッパ人は「良い音」とは何かをDNAレベルで知っている感じがする。悔しいけど、餅は餅屋なんだな、と思ってしまいます。

やはりその点、この演奏は完璧。クラリネットらしい伸びやかで柔らかい音でありながら、すっと通る(=響く)音作り。なのに、ブラームスらしくもある。

もしかすると、こんなあっさりした演奏はブラームスじゃない、と思う人もいるかもしれません。でも、時代のトレンドはこっちだと思います。そして何より、私の好み。

一応、曲についても少し。クラリネット吹きで知らない人はいない名曲。1894年作曲で、晩年創作意欲を失っていたブラームスが、ドイツ人のクラリネット奏者ミュールフェルトに出会って書き上げた作品です。

暗い激情的な第1楽章から、感動的なフィナーレである第4楽章まで、晩年ならではの巧みなストーリー展開が聴きどころ。Roland Pöntineのピアノが良さを十二分に出していますね。天才。

2. 交響曲第5番 Op.67 ハ短調 / ベートーヴェン / ジンマン(指揮) チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(演奏)

説明不要の名曲。ベートーヴェンは「繰り返し」の作曲家です。同じモチーフを何度も何度も繰り返すことで曲を書き上げる、そんなバケモノです。

繰り返しなんてバカじゃあないか、とお思いの皆さん、侮る勿れ。繰り返しは現代でも基本的な作曲技法のうち一つ。繰り返しなのに退屈しない。繰り返しだからこそ感動する。そういうものなのです。

さて、この録音の聴きどころは楽譜と解釈です。

『運命』作曲の1808年は、今から200年前。当時、ベートーヴェンが契約していた出版社、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から初版が出版されました(ブライトコプフ旧版)。しかし、ベートーヴェンの汚なすぎる手描き譜の読み違えや、下書きとの混同など(語弊を恐れず簡単にいうと)誤植が複数存在すると指摘されたのです。

1990年頃、音楽学者デル・マーが考証を行った新改訂版が、ベーレンライター社から出版されました。この版を使った世界初めての録音が、今回の主役、ジンマン指揮 / チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団演奏の『運命』です。

変わったのは楽譜だけではありません。テンポを揺らさない、さっぱりとした演奏。だからこそ醸し出される迫力。まさにブレイクスルーというべきものです。カラヤンBPOの演奏ももちろん名演だった。しかし、この新しい演奏解釈こそが、この録音を特別にしているのです。

なお、こうした原典版を出版している出版社は他にもたくさんあります。ペーターズ社、ヘンレ社に加え、ブライトコプフ社からも新改訂版(ブライトコプフ新版)が出ています。しかし、この演奏の卓越性がセンセーショナルを巻き起こし、ベーレンライター版が新たな標準譜になってしまった、そんなメルクマールとなった演奏です

(番外)交響曲第5番〔朝ごはん〕

ついでですが、やっぱりベト5を紹介したなら、「朝ごはん」がついて回りますね。音作りやアンサンブルを含め、意外にクオリティが高い。

3. クープランの墓 / ラヴェル(arr.メイソン・ジョーンズ)/ Les Vents Français

ラヴェルが作曲の『クープランの墓』。そんな第一次世界大戦で散った知人を偲ぶピアノ組曲を、木管五重奏に編曲したのがこちらです。演奏は、フランスのトッププレイヤーが集うLes Vents Français。悪いわけがないです。

結局、餅は餅屋、フランスものはフランス人です。我々日本人が演奏すると何かがダサい。何が違うんだ!!!(ブチギレ)しかし腹が立ちながらも、優雅で飄々とした演奏に惚れ惚れとしてしまいます。

まるで風が流れるように、次々と移っていくモチーフへ。オシャレなのに、薄っぺらくはない。流れるようだが、引っ掛かりもある。サラッとしているのに、感情が揺さぶられる展開もある。そんな相反する曲の要素を十二分に引き出す奏者。こんなに、曲と奏者の相性がピッタリの録音はなかなかありません。

論より証拠、とにかく聞いてください。個人的に、フランスものは、考えるより感じるものだと思っています。

ちなみに、Les Vents Françaisは、2年に1回くらい来日公演をやってました(コロナ前)。ぜひ、機会があったら聴きに行ってください。こんだけ録音を紹介しておきながらなんですが、やっぱり生演奏は良い。

あとがき:サブスク最高

この記事を書きながら思ったんですが、サブスクって素晴らしいですよね。

昔は「あの録音を聞きたい」と思ってタワレコに行っても、全然置いてなかったものです。

例えるならば、サントリーの「モルツ」が飲みたくてスーパーを何軒はしごしても、プレモルしか置いてないみたいな悔しさ。わかります??

モルツ

サントリーの「モルツ」プレモルに押されて見なくなったなと思っていたら、終売になってしまいました。悲しい。

その点サブスクなら、聴きたいものをいつでもどこでも聴けます。レコードなどのアナログ媒体はちょっと特殊ですが、私はCDならハードにはこだわらないので、いい時代になったなぁと思います。

それでは、また!!

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