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多様性という罠について

You Tubeを見ていたら、どこかの女子サッカーチームが白人しかいないことで非難されたらしい。
つまり、多様性を内包したチームじゃないので、けしからんという事だ。
といって、当然このクレームはノイジー・マイノリティーによって寄せられたもので、一般の回答としては「スポーツは実力の世界なんだから、多様性なんて別にどうでもいい」という回答だった。
僕もそう思う。

ただ、僕の中で違和感があったので、少し考えてみた。
スポーツの世界は実力主義なので、別に多様性はなくても構わない。
じゃぁ、構わなくないのはどこなんだろうか?
ぱっと思うのは政治だ。けれど、もっと近いところで職場にしてみようか。

多様性というのは、至るところで言われてきている。
大抵は、多様性は素晴らしいという言説が多い。
しかし、では、実際の職場で多様性というのは役に立つのだろうか?
僕の中では多様性が圧倒的優位に立った事例は、思いつかない。

今回の女子サッカーチームに照らし合わせて言うと、
・男性が多いので、女性も入れる
とか
・30代が多いので、40代ないしは20代も入れる
とか
チームの形成についての多様性をビジネスの現場で確保するということになるだろうか。

ただ、ここでも僕は「いや、ビジネスは実力なんだから、多様性の確保の為に実力以外の所を重要視するのはおかしい」と思えてしまう。
実際、僕は部署のマネージャーとして中途採用などに自ら関わっているが、前述のようなことは考えない。
単に実力だけで評価する。

となると、僕のこの考えが一般的なのであれば、スポーツは実力主義だからという、実力主義という概念は広く適用されてしまう。
というか、要は多様性ってのは、そもそも多様性という概念を優先しましょうって話でそれ以外の概念よりもこれが上位であると言っている訳だ。
別に実力主義だけでなく、他の主義主張や概念よりも上位とするということになる。
となると、少なくとも今の世界的には、実力主義がわかりやすく蔓延っているので、多様性を許容している領域は少ない。

一方で、Googleなどの企業は研究の結果、多様性が重要だと言っている。
Google辺りが何か発表すると、それがさも正しいかのように思えてしまう訳だ。
それで、その単語だけが流通してしまって、現場に混乱が起こっているように僕は思う。
僕はGoogleが好きではあるが、だからといってGoogleを教祖のように扱うことはしない。
Googleで上手くいったことが他に転用できる事例は、そこまで多いと思えない。
世の中のトップofトップの人たちで上手くいくやり方が、その辺りの企業で適用できるとは思えないのだ。

実際、結果論で言えば、多様性や心理的安全性を重要視していたGoogleは、今年大量解雇をしている。
単純に解雇するだけでなく、人事部門も大幅に縮小している訳だ。
では、その解雇に関しての基準として何が選ばれたかと言えば、恐らく実力だ。
そうなってくると、一時的な成功というのはあくまで一時で長期で見なければ、字祭のところ上手くいっているかどうかなんて分からない。
それに、そもそも注目していた要素が本当に作用しているかどうかすら分からないだろう。
多様性を重視していたから上手くいったのか、それとも別の要因なのか。

あるいは、Googleに集まるような人たちはトップなのだから、単にアメリカ人だけ雇うのではなく、各国のトップの人を雇った方が実力主義に近くなる。
一方で、日本のような島国の求人に様々な人種や経歴の人が集まることは稀なので、実現できる多様性というのは高が知れている。
そもそも多様性を担保しようにも、募集がないんじゃないだろうか。
うーん、それとも僕が単に多様性というモノの解釈を間違えているのか?

一つ分かるのは、僕みたいな一般的な感覚あるいは各現場として多様性自体を目的にしている人は多分少ない。
ので、逆に政治などでそれを推し進めないといけないというのは分かる。
(もちろん、多様性というものが本当に押し上げる必要のあるものだと仮定して、だ)
そうしないと誰もそれを推進しようとしないからだ。
もうルールとして決めていくしかない。
そのルールを守ったら得するのか、破ったら損をするのかのバリエーションはあるが。

ちなみに、多様性の一例として僕がぱっと思いつくのは、ドラゴンクエストだ。
ドラクエは、日本のゲームとして海外にも輸出されている。
ゲームの中で教会や十字架が出てくるのだが、宗教国からすると十字架を雑に扱って良いはずがない。
なので、輸出の際に「ローカライズ」といって、その国に合わせた変更を加える必要が出てくる。
こういったものは、例えばキリスト教を信じている人からすれば当たり前の感覚だが、日本人だけの発想では見逃してしまう場合が多い。

要は、様々な背景を持つ人がいるとそういった細かい部分に気が付きやすいということだ。
なので、異なる境遇の人、つまり多様性が高いとグローバルでビジネスをする時に有利になることがある。
逆に言えば、グローバルを相手にしてない場合の多様性の価値は、ちょっと僕には思いつかない。
Googleだって、超グローバル企業だし。

僕としては、多様性があった方が良いよね、はYESだ。
で、大きくYESなのは機会の平等で、その後は実力主義というイメージ。
例えば、外国人というのを理由に実力はあるのに、そもそも面接を受けさせないというのはNG。
けれど、外国人が一人もいないから、多様性に配慮して受け入れようという気持ちはない。
だって、大変になるのは、自分とチームだからだ。

そういった状況で、本当に守るべき重要な価値観なら、政府として決めてもらう必要がある。
もちろん、ビジネスや様々な状況に配慮した上で一番良いところを探るという難しい判断だと思う。
現場と乖離するようなものを決められて、現場が破綻したらそもそもその場所がなくなるのだから。


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