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2023年8月の記事一覧

エネスク/ピアノ組曲第1番〈古いスタイルで〉 ト短調 Op.3

エネスク/ピアノ組曲第1番〈古いスタイルで〉 ト短調 Op.3

エネスク(1881-1955)はルーマニアで生まれたヴァイオリニストで、その腕前は20世紀前半の三大ヴァイオリニストに数えられるほどであった。
第二次世界大戦によって祖国が共産圏の支配下 に入ったことでフランスに亡命し、その後戻ることはなかった。

《ピアノ組曲第1番》は弱冠16歳で書かれた最初のピアノ曲で、副題〈古いスタイルで〉のとおり、 バロック時代に栄えた組曲形式と音使いを特徴に持つ。

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ヤナーチェク/《1905年10月1日 街頭にて》(ピアノ・ソナタ)

ヤナーチェク/《1905年10月1日 街頭にて》(ピアノ・ソナタ)

ヤナーチェク(1854-1928)はチェコの作曲家。
自国の民族音楽や言葉の抑揚を研究し、語るような旋律語法を築いた。

彼はこの作品に次のような言葉を遺した。

ヤナーチェクの故郷チェコは、当時ドイツとの対立が高まっており、教育や一部の会話がドイツ語に制限されていた。
そのためチェコ語大学の設立を目指してデモが行なわれたのだが、1905年、 デモ隊はドイツ軍と衝突し、とうとう庶民の若者が命を落

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ラヴェル/《クープランの墓》

ラヴェル/《クープランの墓》

モーリス・ラヴェル(1875-1937)はフランスを代表する作曲家で、こちらは40歳頃の作品である。

ラヴェルの時代よりもおよそ200年前、作曲家 F. クープランはフランス鍵盤音楽の礎を築いた。
当時はいくつかの舞曲や小曲を組み合わせて一作品とする「組曲」の形式が栄えており、その古の形式を借りて書き上げられたのが、この『クープランの墓』である。

「墓」という言葉から想像できるように、こ

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