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ごはんを食べないとき Part2 わがまま?編


はじめに

前回、ねこさん・わんちゃんがごはんを食べない理由を3つあげました。

  • 理由1.病気などで食べることができない

  • 理由2.違うものを食べたい

  • 理由3.そもそも食べる必要がない

そして、「理由1. 病気などで食べることができない」ときに、どんなことに注意しないといけないかについてチェックポイントをもとに解説しました。(前回の記事はこちら

次のチェックポイントに一つでもあてはまる場合は、動物病院につれていくことを考えてください。


今回は
・理由2.違うものを食べたい
を中心に解説します。

そして子猫・子犬の時期の
・理由3.そもそも食べる必要がない
についても解説します。


違うものを食べたい=わがまま?

ねこさん・わんちゃんが、元気もあるし普段と変わらないのに、ごはんを食べない、あるいは少ししか食べない、という経験をしたことのある飼い主さんは多いのではないでしょうか。

動物病院につれて行った方がいいのか、たんなる”わがまま”だから放っておいていいのか、悩んだこともあるかもしれません。

動物病院につれて行ったほうがいいかどうかは、先ほどのチェックポイントと前回の記事を参考にしてください。
ただ、前回もお話したように、「動物病院に連れていったほうがいいかも」と思ったときには、動物病院に連れていってあげてください。そのほうが、間違いなく後悔しなくて済みます。

では今回のテーマである、チェックポイントのどれにもあてはまらない場合はどう考えればいいでしょうか。
いままで食べていたごはんを食べなくなるのは、ねこさん・わんちゃんの”わがまま”なのでしょうか。


ネオフィリア

肉食動物には「ネオフィリア」という習性があります。
ぴったりした日本語訳がないのですが、無理に日本語にすると「新しいもの好き」というような意味です。
肉食動物が、いままでと違った新しいものを食べたくなる、という習性のことです。

野生動物は、一般的に限られた種類のものしか食べません。
典型的な例がコアラで、コアラはユーカリの葉しか食べません。
もしも、はじめて見たようなものをむやみに食べると、うまく消化できないものかもしれませんし、毒があるものかもしれません。限られた種類のものしか食べないほうが安全なんですね。

ですから、ねこさん・わんちゃんに同じフードしかあげないことは、決してかわいそうなことではありません。同じフードのほうが安心できるからです。

一方で、限られた種類のものしか食べないことにもリスクはあります。その食べ物が何らかの理由で手に入らなくなったら、食べるものがなくなってしまうからです。
そこで、肉食動物は「いままで食べていたものとは違うものを食べたい」という欲求を感じることがあります。これが「ネオフィリア」です。
多くの種類の食べ物を食べられるほうが生存競争で有利になりますからね。

ネオフィリアは肉食動物にみられる習性で、ネコとイヌをくらべると、肉食動物であるネコのほうにより強くみられますがイヌにもみられます。

このネオフィリアがおこると、「いままで食べていたごはんを、ねこさん・わんちゃんが急に食べなくなった」という現象になるわけです。
これをヒトから見ると、”わがまま”に見えてしまうんですね。


飼い主さんが”わがままな子”に育てている!?

とくに子猫・子犬の時期に、いろいろなものを食べていると、ネオフィリアがおこりやすくなります。
なぜなら「新しい食べ物が手に入りやすい環境」で育った個体は、積極的に新しい食べ物を食べようとする傾向が強くなるからです。さっきもお話したように、そのほうが生存競争に有利ですからね。

ですから、子猫・子犬の時期に、いろいろな種類のごはんやおやつをアレコレあげると、後々”わがままな子”になりやすくなりますから、気をつけてください。

ねこさん・わんちゃんが少しでも食べないでいると、心配になってすぐに代わりのものをあげてしまう飼い主さんは注意してください。
ねこさん・わんちゃんからすれば、「ちょっと食べるのをがまんしたら、すぐに新しいものをもらえる」と学習してしまうからです。

ねこさん・わんちゃんが、ごはんにすぐ飽きてしまうようになるのは、もともと持っているネオフィリアという習性と、飼い主さんの行動がもたらす学習によるものがほとんどです。

ネオフィリアが強くなりすぎると、どんなフードもすぐに飽きてしまって食べさせてあげるフードが見つからない、いわゆる「フードジプシー」になってしまうこともあります。いくらかガマンくらべになってしまうことがありますが、ある程度、あげるものを限定することをオススメします。


ネオフィリアがおきたときには

ネオフィリアがおきた場合にはどうすればよいか、なのですが、すぐに違うフードに変えるよりも、いくつか「試してもらいたいこと」があります。
(「試してもらいたいこと」については、次回の記事で解説します。)

それを試してもダメな場合は、いままでと違うフードに変えるしかないのですが、知っておいて損しないのが、「いままで(昨日まで)と違うフード」というのは、必ずしも「いままで食べたことがないフード」とは限らないということです。

つまり、「以前にあげていたけど食べなくなってしまったフード」でも、「今となっては、いままで(昨日まで)と違うフード」になっていることが多いのです。
「以前にあげていたけど食べなくなってしまったフード」を食べてくれれば、何種類かのフードをローテーションして食べてもらうことができますので、フードジプシーになることを防ぐこともできます。


子猫・子犬が、フードを食べる量が減ってしまったら

子猫・子犬が、ある時期から急にフードを食べる量が少なくなることがあります。
これは子猫・子犬の成長する速度が途中からゆっくりになるためです。

子猫・子犬の成長曲線

もちろん個体差はありますが、ネコでは4~5ヵ月齢、イヌでは2~3ヵ月齢を境に、それまでの急激な成長から、ゆっくりとした成長に変わります。
赤ちゃんの時期から、こどもの時期になったということですね。
ゆっくりと成長する期間は、大型の品種ほど長くなります。

成長速度が変わると、必要なエネルギーがそれまでとくらべて少なくなりますから、この時期に食べる量が減ることはよくあります。
つまり、時期的に「理由3.そもそも(それほど)食べる必要がない」状態になるんですね。
ですから食べる量が少なくなっても、体重が増えていれば心配はありません

この時期に、食べる量が減ったのを見て心配になって、いろいろなフードをあげてしまう飼い主さんが多いようです。
ここで、いろいろなフードやおやつをあげてしまうと、将来”わがままな子”になってしまうかもしれません。きちんと定期的に体重を確認して、あわててアレコレあげないようにしたほうがよいでしょう。

ただし、体重が増えないようなら要注意です。
病気など、食べない理由、体重が増えない理由が何かあるかもしれません。
子猫・子犬の体重が増えないということは、おとなのねこさん・わんちゃんの体重が減っているのと同じですから。
そのような場合は念のため、動物病院に相談したほうがよいでしょう。

ネコやイヌは1年前後でおとなになります。
ヒトで言えば15~18年くらいに相当する期間を、わずか1年くらいで過ごすのです。ヒトの15倍以上のスピードですね。つまり、子猫・子犬の2,3日はヒトの1カ月くらいに相当するわけです。
子猫・子犬の時期に気になることがあったら、なるべく早く動物病院に相談してください。


自分で思っていたより解説が長くなってしまいましたので、今回はここまでにします。続きは次回に。


次回の予告

次回は、前回予告していたた、「理由3.」の残りと「使えるワザ」について解説します。

お楽しみに!


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