見出し画像

ごはんを食べないとき Part3 使えるワザ編


はじめに

ねこさん・わんちゃんがごはんを食べないと心配ですよね。
前々回から、ねこさん・わんちゃんがごはんを食べない理由を3つにわけて、それぞれどう考えればよいかについて解説しています。

ねこさん・わんちゃんがごはんを食べない理由は大きく次の3つです。

  • 理由1.病気などで食べることができない

  • 理由2.違うものを食べたい

  • 理由3.そもそも食べる必要がない

前々回は「理由1.病気などで食べることができない」ときについて
(前々回の記事はこちら

前回は「理由2.違うものを食べたい」ときと、子猫・子犬の「理由3.そもそも食べる必要がない」ときについて、それぞれ解説しました。
(前回の記事はこちら

今回は、おもにおとなのねこさん・わんちゃんの、「理由3.そもそも食べる必要がない」ときにどう考えればよいかと、食べないときに試してほしい、「使えるワザ」について解説します。


そもそも食べる必要がない(おとな編)

ねこさん・わんちゃんがごはんを食べなくても、心配しなくてもいいときもあります。
そもそも「食べる必要がないとき」です。

では、「食べる必要がないとき」ってどんなときでしょう?
一言でいうと、「必要なだけのエネルギーが足りているとき」ということになります。

これには2通りあって、
ひとつが「あまりエネルギーを使っていないとき」で、
もうひとつが「ちゃんとエネルギーを取れているとき」です。

自分のことであれば、あたり前のことのようですが、ねこさん・わんちゃんのことだと、意外に気づきにくいものです。


あまりエネルギーを使っていないとき

9月になってようやく夕方からは涼しくなってきましたが、暑い時期には食欲が落ちる人も多いと思います。

ねこさん・わんちゃんも、暑い時期にフードを食べる量が少なくなることがありますよね。
それを見て「夏バテじゃないかしら」と心配になる飼い主さんも多いのですが、必ずしも夏バテとは限りません。

ネコの季節ごとの食事の量を調べた研究があって、その結果を見ると、たしかに暑い時期には食事の量が少なくなっているのですが、体重に変化はありませんでした。
つまり暑い時期には、「フードの量が少なくても必要なだけのエネルギーを取ることができている」ということです。
もちろん、ずっと同じフードを使っていますから、これは「暑い時期には必要なエネルギーが少なくなっている」ということですね。

その理由は、「気温が高いと体温を維持するために使われるエネルギーが少なくなる」ためだと考えられます。
ネコの体温が38℃だとすると、気温が0℃のときには38℃ぶんの体温を自分で作り出さないといけませんが、気温が30℃であれば8℃ぶんの体温を作り出せばいいわけです。

気温と体温

ですから、暑い時期にねこさん・わんちゃんがフードを食べる量が減るのは、必ずしも夏バテというわけでなく、たんに必要なエネルギーが少なくなっているだけであることが多いのです。
何度もお話しましたが、体重が減ってなければ心配する必要はありません


ところで、「あまりエネルギーを使っていないとき」にはもうひとつあります。シンプルに「運動不足のとき」ですね。

わんちゃんの飼い主さんは、とても暑い時期や、逆にとても寒い時期には、ついつい、お散歩の時間が短くなったり、お散歩をサボったりしてしまうこともあると思います。
また、ねこさんの飼い主さんにしても、とくに暑い時期に30分も1時間もねこさんと遊んであげるのは大変なものです。

ですから、ねこさん・わんちゃんのフードを食べる量が減ってきたときには、運動不足になっていないかどうか、思い返してみてください。
心当たりがあれば、運動量を増やすようにしてあげてください。


じつは、ちゃんとエネルギーを取れているとき

飼い主さんがそうは思っていなくても、じつは、ねこさん・わんちゃんが、ちゃんとエネルギーを取れていることもあります。

よく飼い主さんから、「うちの子、あんまりごはんを食べないんですけど大丈夫ですか?」という質問をいただくことがあります。
そんなとき、僕は必ず「やせてますか?」と確認します。
するとほとんどの飼い主さんが、ちょっと苦笑いしながら「やせてません」と答えてくれます。

思い当たる節があるのですよね。
そう、みんなおやつをあげてるんです。

おやつ代わりにヒトの食べ物をあげている飼い主さんは、とくに注意してください。
おやつのつもりであげているものが、まったく、おやつどころではない量になっていることもよくあるからです。

ヒトの体重が60kgだとして、体重が5kgのねこさん・わんちゃんについて考えてみると、そのねこさん・わんちゃんの体重はヒトの12分の1しかありません。ですから、ヒトにとっては「ほんのひと口」のつもりでも、ねこさん・わんちゃんにとっては「がっつり12口」になっているのです。

ヒトにとっては「ほんのひと口」でも・・・

また、ねこさん・わんちゃんが、ごはん(フード)をあまり食べないときに心配になって、「おやつなら食べるから」とおやつをあげてしまう飼い主さんもいます。でも、そんなことをすればおやつだけでお腹いっぱいになって、なおさら、ごはんを食べなくなってしまいます。

さらに、前回の記事で解説した「ネオフィリア」+「ちょっと食べるのをがまんすれば、すぐに新しいものをもらえるという学習」の状態になって、ますますごはんを食べなくなる恐れもあります。

おやつをあげるのなら、まず、必要なだけのごはん(フード)を食べることが前提です。そのうえで、おやつの分だけごはんを減らしてあげてください。


食べないときに使えるワザ

ねこさん・わんちゃんがごはんを食べないときに試してもらいたいワザがいくつかあります。

とくに療法食をあげているときのように、フードの内容を変えずに、ねこさん・わんちゃんに食べてもらいたいときにはぜひ試してみてください。


食べやすい環境・安心して食べられる環境に整える

まず最初は、ねこさん・わんちゃんが食べやすい環境や安心して食べられる環境に整えてあげることです。

ひとつには、食器の高さを変えることです。
とくに大型の品種の場合、床に食器を置くと、食器の位置が低すぎて食べづらいことがあります。そんなときは下に台を置くなどして食器の位置を高くしてあげましょう。

大型の品種と食器の高さ

つぎに、食器の素材を変えてあげるとよく食べるようになることがあります。
食器の素材としては陶磁器のほうが、プラスチックやステンレスよりもオススメです。プラスチックやステンレスの食器だと、プラスチック臭や金属臭が苦手な、ねこさん・わんちゃんがいるからです。

そして、食器の置き場所を変えることです。
原則として、食器はトイレから離れた場所に置くようにしましょう。

また、ねこさんの場合、フードと水の場所を離したほうがよく食べることもあります。水場の近くにある食べ物は傷んでいることがあると思う子がいるようです。

さらに、ごはんをあげるときの飼い主さんの態度も変えてみましょう。
「このフード食べてくれるかな?」と心配しながら、ごはんをねこさん・わんちゃんの前にだして、食べるかどうかを不安そうにジロジロ見るのはやめてあげてください。

例えば、あなたのお母さん・お父さんが、何やら心配そうに食事を並べて、あなたが食べるのを不安そうにジロジロ見ていたらどうでしょう?
「これは食べたらヤバいやつだ・・・」と感じて、食べたくなくなるんじゃありませんか?

逆にお母さん・お父さんがニコニコしながら、「これ、美味しいよ!」って言って食事をだしてくれたら、安心して美味しく食べることができるはずです。

同じように、ねこさん・わんちゃんにフードをだすときには、ニコニコしながらだしてあげて、少し飼い主さんの手から直接、食べさせてあげてみてください。安心して食べてくれるねこさん・わんちゃんは多いはずです。


フードの温度・食感を変えてみる

つぎのワザは、フードの温度や食感を変えることです。

ネコやイヌは、38~40℃くらいの温度の食べ物を好むと言われていますので、少し温めてあげると、よく食べるようになることがあります。

ウェットフードであれば、電子レンジを使ったり、少しお湯を加えたりして温めてください。ドライフードも電子レンジで温めることができます。

ただし、いずれにしても温め過ぎは禁物です。
ネコもイヌも、熱いものは苦手ですし、場合によっては熱に弱い栄養素がこわれてしまうこともあります。

人肌よりも少し高いぐらいの温度、指でさわってほんのり温かいくらいの温度になるようにしてください。

そして次に、食感を変えるワザがあります。

ドライフードであればお湯でふやかしてみる、ウェットフードであればお湯を加えて水分を増やしてみる方法です。
ドライフードをふやかす場合は、温度が低いとふやけにくいので、50℃くらいのお湯を使ってふやかしましょう。ドライフードによってはふやけにくかったり、ふやけても芯が残ったりするものもありますので、うまくふやけるようにお湯の量を加減してみてください。

ただ、ねこさんの場合はふやかしたドライフードは苦手な子が多いので、食べてくれるかどうかは、ねこさん次第ではあります。
(ちなみにポン次郎は、ウェットフードは食べませんが、ふやかしたドライフードはよく食べます。)

食感を変えるワザは、まだあります。
ウェットフードを、例えば、ブレンダーやフードプロセッサーなどで粉砕すると、いま人気のペースト状のおやつのような食感になります。
ウェットフードの水分量によっては、少しお湯を加えるとうまくペースト状になります。

愛用のブレンダー
ウェットフードにブレンダーを使うと

また、お湯でふやかしたドライフードにブレンダーを使うと、ポタージュスープのような食感にすることができます。

ふやかしたドライフードにブレンダーを使うと

ブレンダーを使うときのコツは、ブレンダーの先端部分になるべくピッタリした容器(付属のものがあればそれ)を使うことです。
そうすると量が少なくてもうまく粉砕することができます。

なるべくピッタリした容器を使いましょう

これらはいずれも、加えるお湯の量を加減することで、仕上がりのゆるさを調整することができます。

少し手間がかかりますが、ねこさん・わんちゃんがフードを食べないときに、試してみてください。


フードの匂いを変えてみる

療法食をあげている場合など、「フードの内容を変えられないけれど、チキン味じゃなくてお魚味なら食べてくれるのに」ということもあると思います。
そのようなときに、ドライフードの中身を変えずに匂いだけをトッピングするワザがあります。

お茶やだしをとるための不織布でできたパックが販売されています。
これにかつお節や煮干し粉などを入れて、パックごとドライフードの袋の中に入れておきます。

これをドライフードの袋に入れておきます

そうすると、パックの中のかつお節や煮干し粉の匂いだけをドライフードにトッピングすることができます。

ネコやイヌは、味よりもまず、匂いで食べるかどうかをきめますから、中身が同じでも、好きな匂いになっていれば食べてくれることがよくあります。


それでもダメなら

ここまで紹介してきたワザを駆使しても、どうしても食べてくれないときは、最後の手段として好きなものをトッピングすることや、違うフードに変えることを考えてください。

前回の記事で解説したように、あまりアレコレ違うフードやおやつをあげていると、ねこさん・わんちゃんが「ちょっと食べるのをがまんすれば、すぐに新しいものをもらえる」と学習してしまうことがあります。
そうなると、ねこさん・わんちゃんとの”がまんくらべ”になってしまって、ちょっとやそっとでは勝てなくなります。


食べない理由はなんですか?

先ほど言った理由で、ねこさん・わんちゃんがごはんを食べないないときでも、すぐに新しいフードやおやつをあげるのは、なるべく避けることをオススメします。
「ごはんを食ごべないときのチェックポイント」にあてはまらないなら、食べない理由をもう一度考えてみて、おやつの量を減らしたり、運動量を増やしたりしてみてください。
そして紹介したワザを試してみてください。

ひとつでもあてはまれば動物病院に

フードのあげかたを工夫することで、ねこさん・わんちゃんが喜んでフードを食べてくれるようになったら、ねこさん・わんちゃんとの生活がもっと楽しくなりますよ!

記事を一覧にしました

「ペットフード講座」と「ペットフード基本の『き』」の記事を一覧にしました。
こちらからどうぞ(無料クーポン付きです!)

また、マガジンを購読していただいている読者の方からは、個別のご相談にもお答えします。

プロフィールの下にあるXマークから
X(ツイッター)の僕のアカウントに飛べます。
Xからでも、noteからでもお声がけください。
(運営にリクエストすると、運営経由で僕にメールを送ってもらうことができますが、時間がかかってしまうこともあります。)

この記事が参加している募集

#猫のいるしあわせ

21,754件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?