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ねこさん・わんちゃんのアレルギー その4 敵が侵入すると何がおこるか


はじめに

前回の記事では、免疫細胞たちが「自分」と「敵」をどのようにして見分けているかについて解説しました。

自分の細胞には「自分の名札」がついていて、敵には「敵の種類の札」や「敵の名札」がついています。

自然免疫系の細胞(好中球・マクロファージ・樹状細胞)は「自分の名札」と「敵の種類の札」を読むことができますが、「敵の名札」を読むことはできません。

それに対して獲得免疫系の細胞(T細胞・B細胞)は「敵の名札」を読むことができます。そしてT細胞とB細胞が協力することで、それぞれの敵に特化した専用の武器、すなわち「抗体」を作ることができます。


■3種類のT細胞

なるべくお話をシンプルにするために、前回の記事までは、とくにT細胞の種類についてはふれていませんでした。
ただ、抗体が作られる仕組みや、なぜアレルギーが起こるのかを解説するためには、T細胞の種類についてふれないわけにはいきません。

T細胞には働きの違うおもに次の3つのタイプがあります。

  • ヘルパーT細胞

  • キラーT細胞

  • 制御性T細胞Tレグ

厳密には6つのタイプが知られていますが、例によって話がややこしくなりますので、一般的に「T細胞といえばこの3種類」という感じの3つのタイプについてだけ解説します。

それぞれについて、まずは簡単に解説します。

  • ヘルパーT細胞
    前回の記事で解説した、マクロファージや樹状細胞が示した「敵の名札」を読み取るセンサーが装備されているのが、この「ヘルパーT細胞」です。
    また、ヘルパーT細胞はB細胞に抗体を作るように指示します。”抗体を作るB細胞を助ける”という意味ですね。

    それだけでなく、ヘルパーT細胞は好中球やマクロファージ、この後で解説するキラーT細胞などを活性化させ、免疫反応を高めます。このためヘルパーT細胞は「免疫反応の司令塔」と言われています。

    ところで、ヘルパーT細胞に装備されている、「敵の名札」を読み取るセンサーは、ひとつのT細胞につき1種類だけです。

    自分の体を作っている細胞以外は全部「敵」です。その一つひとつの「敵の名札」のすべてを読み取るために、ヘルパーT細胞に装備されているセンサーは1000億種類以上あります。
    つまり、ヘルパーT細胞にはセンサー違いの兄弟が1000億以上いるということです。

    また、ここでは詳しく解説しませんが、ヘルパーT細胞はさらに、
    1型ヘルパーT細胞  (Th1とも書かれます)
    2型ヘルパーT細胞  (Th2とも書かれます)
    17型ヘルパーT細胞 (Th17とも書かれます)
    の3種類に分類されています。

    ※「1型,2型の次がなんで17型やねん?」という疑問はごもっともですが、気にしないでください。


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