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【映画の中の詩】『火の接吻』(1949)

アンドレ・カイヤット監督。
ジャック・プレヴェール脚本。
出演アヌーク・エーメ、セルジュ・レジアニ、ピエール・ブラッスール。

映画『ロミオとジュリエット』の撮影のバルコニー場面のカメラテスト。
主演俳優のスタンドインで出会った男女が恋に落ち、やがて物語と同じ悲劇の結末を迎える。

脚本は谷川俊太郎が「僕のヒーロー」と言っている時期のジャック・プレヴェール。文字で書かれたものだけが詩ではないのだ。

「火の接吻」の感激はいまだに憶えています。その当時は、カイヤットの名も、プレヴェールの名も知らなかったのではないかと思いますが、とにかくこれこそ正しく詩であると感じ、風呂の中で親父と議論しました。アヌーク・エーメの美しさに影響されていたのも勿論です。とにかく開巻劈頭の、ガラス工場の不思議な超時間的な雰囲気、それに突然ぶつけられる現代、シヴォレーの新型車や機関銃、そして最後の場面のバッハ――そんなものの組み合わせに、世界のもろさと永遠性との不思議な一致を見たように思ったのです。      (谷川俊太郎「僕のプレヴェール」)

『詩を読む』谷川俊太郎

10代だったアヌーク・エーメが初々しい。彼女の”エーメ Aimee〟(「最愛の」)という芸名はプレヴェールがつけたそうです。

行くのですか?夜明けにはまだ間があるのに。
あれはヒバリではなくナイチンゲール
あなたの耳を怯えさせたのは
夜ごとにあのザクロの木で歌う
信じて、愛しい人、あれはナイチンゲール

『ロミオとジュリエット』第3幕第5場

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