さいたま国際芸術祭で和紙障子PJ「大宮曼荼羅」を発表します
大学時代、東京23区の郷土資料館を全て巡るという酔狂なことをしていた。
北区飛鳥山博物館では中世の歴史が分厚かったり、杉並区では関東大震災以降に街としての特徴が芽生えていることがわかる。地域の歴史を数時間かけ、頭に叩き込んだ後、現在の街を歩くと風景がガラッと変わって見えた。
料亭街が広がっていた場所は公園として整備され、跡形もなかったり、雑木林が広がっていた地には住宅地が林立している。
だが、街は忘れていても地名や道は覚えているもので、かすかに痕跡を追えたりする。古道を歩くと、昔広がっていた雑木林が眼前に現れるようだった。
自分の脳内にインストールされた歴史が現実との対比の中でくっきり浮かび上がる瞬間。これが異世界を旅しているようで気持ちよかった。
頭に入った前提情報さえ変われば、街はガラッと装いを変える。お前はどこに行ってもいいし、色々な可能性があると街が語り掛ける瞬間だ。
自分は小さい頃から歴史が好きだったが、これは無意識に、ここではないどこかや無数のあったかもしれない世界を追うのが楽しかったのかもしれない。
今回の展示を通じて、私が郷土資料館で感じていたような過去と現在の対話によるカタルシス体験を再現したい。それがさいたま市のアイデンティティを再発見する契機になれば嬉しい。
開催にあたっては、障子張りや障子の保存場所の提供に尽力頂いた岡田聡氏、岡田潤子氏。ポスターデザインのmoyu氏。そして母と妹にこの場を借りて感謝したい。
展覧会の見どころ
本展は両面投影可能な和紙障子プロジェクションマッピングだ。表には、さいたま市内の120の地名と伝説をイラスト映像化し、障子の枠一つ一つにそれぞれ異なる映像を投影する。裏には、さいたま市の現在の風景をコラージュ化した映像を投影する。
過去と現在という相反する要素を同一の障子枠内で表現することにより、特徴がないと言われがちな、さいたま市のアイデンティティを相反する時間軸から捉え直す試みだ。
これにより、鑑賞者は表現や土地の核の部分に触れることを通じて、自身の視野が拡がるような新しい体験を得ることができることだろう。
・両面投影可能な和紙障子装置
和紙の中では厚口で知られる2枚の鳥の子和紙の間に、越中染紙の黒を挟み込み、映像光を後ろへ通さない両面投影可能な映像装置とした。通常片面だけのプロジェクションマッピングが多い中で、両面を使った障子のプロジェクションマッピングは珍しく、Google検索で調べた中では類似の事例は出てこなかった。
・さいたま市内120の地名や伝説を映像化
「埼玉県地名誌 名義の研究」や「日本歴史地名大系11 埼玉県の地名」や合併前の市史を元に120の地名や伝説に基づいた画像を画像生成AIで3000枚以上作成し、そこから120枚抽出しました。それらを動画化し、1マスごとに実際の地名の位置に基づいてマッピングしています。今では失われてしまった古い土地の様子が地名から垣間見える。
・さいたま市出身作家による地元が題材の芸術作品
作家が長い間、さいたま市内に住む中で撮りためた写真や動画をコラージュ化し、映像投影する。
・タイトル由来(大宮曼荼羅)
曼荼羅は密教の世界認識を示した図のことを指す。「大宮曼荼羅」とすることで、その地域を表現した映像作品であることを示唆しつつ、多種多様なものが共存していることを表すタイトルとしてつけた。
映像作家 坂根大悟のプロフィール
1995年大宮市出身。映像作家。学習院大学文学部史学科卒業。その土地の持つ歴史や都市を題材にしながら、相反するものが共存した「陰陽太極図的メディア空間」を探求しつつ、立体、映像、中間媒介物を組み合わせ、作品を制作。2023年文化庁メディアクリエイター育成支援事業に選出。
[個展]
2021年 「遊園的明滅展」高架画廊 神田
[グループ展]
2022年 「六本木アートナイト・オープンコールプロジェクト」六本木ヒルズアリーナ 六本木
2021年「再展」DHU八王子キャンパス 京王多摩センター
2021年「流展」シェアプレイス調布多摩川 京王多摩川
[主な上映]
2021年 「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 短編入選作品上映」
2021年「カルト国際映画祭 入選作品上映」
開催概要
ご来場お待ちしております。
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