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ストレートパーマが悲しい話

「ストレートパーマをかけてください、と言われる方はたいてい悲しい顔をしているんですよね。」

と言われて、ちょっとびっくりした。


彼女は、かれこれ7年くらいお世話になっている美容師さん。私は難易度高めのくせ毛なので、可能な限りひとりの人にお世話になる。もちろんずっとストレートパーマ(縮毛矯正)をかけていて、でもツンツンピンピンになるのが嫌で、柔らかさを残しつつ、最初はペタンとしすぎず、馴染んできた後もボリュームがですぎず、数か月扱いやすい髪形に、という難しいオーダーを彼女はこなしてくれる。


そんな彼女に、今回ちょっと相談してみた。

「私のくせ毛を生かすのは、難しい?よねぇ??」


過去お世話になった美容師さんに何度か相談したけれど、答えは全てNOだった。生かすには難しい癖なのだそう。自分でもそうだろうなと納得しているのだけど、『外国の子供みたいなくせ毛を生かした髪型』への憧れが定期的にやってくる。

今回、自粛期間が長くてしばらく美容院から遠ざかっていたことで、くせ毛部分がだいぶ成長してきたこともあり、ダメ元で相談してみたのです。

すると彼女が出した答えが「やりましょう!できますよ!」だった。

え?え?今までことごとく断られてきた話。過去かけたこともあるけれど失敗したこともある。相談してみたけど、本当にできる??

と疑心暗鬼な私に、彼女が口にした言葉が冒頭の言葉。


「ストレートパーマをかけてください、と言われる方はたいてい悲しい顔をしているんですよね。」


これには続きがあって、

「どんなくせ毛でも、自分の生まれ持ったものじゃないですか。それを違うものにするって、悲しいんですよね。そのかたは意識していないかもしれないけど、潜在的にそう感じているというか。生まれ持った髪質や、顔立ちや、瞳の色とか、不思議とその人に合っていると思う。合うようになっているんだと思う。だからできれば、その人の持っているものを生かしてあげたいって思うんです。ストレートパーマかけてください、と言われても、できればストレートパーマをかけたくない(笑)。だから、くせ毛生かせますよ!と提案することもあるんです。それで、なんとかくせ毛を生かしてみると、すごく喜んでくれて、そんな時美容師やっててよかったって泣きそうになる。」

と語りながらちょっとウルウルしてる彼女と、それを聞いて同時にウルウルした私。なにこれ。アツい。

そんなわけで、あれこれ相談と確認作業を重ねながら、私のくせ毛とパーマを組みあわせてうまいこと収めてくれた。もう四半世紀ストパー人生だったのに、突然、夢がかなった。すごい。


たぶんまたストレートパーマをかける時が来ると思う。割と近いうちに(笑)。今のこのもしゃもしゃ頭も気に入っているけれど、やっぱりストレートのほうが扱いやすいのは事実だから。

でもね、やっぱり嬉しかったんだ。嫌いなくせ毛を認めてもらえたこと。生かしてあげられるよと言われたこと。


多くの人は、理想を眺めながら、現実と見比べて、たくさんの鎧をつけているんだと思う。より理想に近づきたい、と。自分の好きじゃない部分に寄り添いながら(蓋をしながら)生きているけど、蓋をしている素の部分を認めてもらえたとき、作っていた壁が崩れて一気にその人に心を開きたくなるのは何なんだろう。

「そのままのあなたがいい」

これは魔法の言葉だと思う。

本人が好きな部分も嫌いな部分も全部個性。生まれたときから持ち合わせているそれぞれの個性を認めて、活かしてあげられたらいいよね。その手助けができるスキルを持ち合わせていて、いざなってあげられるのが本当のプロフェッショナルなんだと思ったよ。


私も、誰かにとってのそういう人になれたら幸せ。


写真は、夏だしひまわり。周りが明るくなる笑顔が素敵な美容師の彼女をイメージして、ふわっと仕上げてみました。

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