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リードの先は

 大学生の頃、男性Uは夜中によく友人達と大学近くの大きな自然公園で酒盛りをしていた。芝生の上に適当にレジャーシートを敷いて酒を飲む。ただそれだけが楽しかった。

4月の頭、花見がてらに酒盛りをしようと深夜友人達とその公園に行った。敷地内は広く夜中でも犬の散歩をしてる人は多い。ただこの日は花冷えのため敷地内に人が見当たらなかった。
私達は気兼ねなく飲めると思いいつも通り酒盛りを始めた。

あたりは照明などもなく、友人達の顔もはっきり見えないほどだ。唯一遠くの道路から見える光だけが頼りだ。酒盛りをしてしばらくすると真っ暗な樹々の方から野太い男の声がした。特に気にせず酒を飲んでいると、暗がりから人影が見える。

その人影は何やら大型犬の様なものを散歩させてるのが見える。どんどんこちらに近づいて来た。遠くから見ても大型犬はかなりの大きさだ。U達に緊張が走る。大型犬の「ハッハッハッ」と荒い息遣いが聞こえるからだ。

すると近づいて来たシルエット二つがうっすら姿を表した。その瞬間U達全員の身体に嫌悪感と恐怖がまとわりついた。中年の男性が何やらリードらしき物を持っている。大型犬だと思ったリードの先は全く違う物だった。それは荒い息いで全裸四つん這いの姿でこちらに向かってくる中年女性だ。乳房が揺れ首輪もついてるのが分かる。暗がりではあるが男性は笑みを浮かべている。

そのまま彼らは恐怖に包まれたU達の前を通り過ぎ、また真っ暗な樹々の中へと戻って行った。U達は急いでその場を離れ二度とそこで酒盛りを行う事はなかった。U達には分からない異常な世界があるのを垣間見た経験だったそうだ。

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