記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『ラ・ブーム』 なんだこの話?(ネタバレ感想文 )

監督:クロード・ピノトー/1980年 仏
(デジタル・リマスター版日本公開2022年12月23日公開)

40周年記念デジタル・リマスター版を劇場鑑賞。
まあ、日本公開が1982年だから40周年なのであって、映画の製作は1980年なんですけどね。

当時、やたら流行ったんですよね、この映画も曲も。
でも私、実は今回が初鑑賞なんです。
40年前の私はまだ若く、エヴァに搭乗できるかどうかくらいの年齢だったので、フランス映画なんぞ観てませんでした。その後、大学生くらいになってフランス映画の洗礼を受けるんですが、ジャンヌ・モローやカトリーヌ・ドヌーヴといった大人の女性がお相手だったもんで、こんな小娘には興味なくてね。

いや、冗談抜きで、「大人の女」ってポイントでさ。
フランス映画って「女が男を振り回す」伝統があると思うんです。
厳密には、男視点で、女に振り回されて「女はワカラン」って映画。
ところがこの映画は、恋に恋する小娘マルソーが「振り回される側」で話が進むんです。
いや、正確には、ソフィー・マルソー単体の話ではなくて、友達や母親も含めた「女たち」の恋物語なんですがね。
ところがところが、あっと驚くオーラス。
「誰だお前?」と思う間もなく、小娘マルソーが「振り回す側」に大変身する予感で映画は終わります。なんだこの話?
そうか!小娘マルソーが小悪魔マルソーに堕ちる瞬間の物語だったんだ!(そうか?)
個人的には、小娘より小悪魔が大好物です。リュディヴィーヌ・サニエ嬢とかエマニュエル・ベアール姐さんとか。(<どうでもいい話)

約40年後のいま観て興味深いのは、その恋愛・結婚に対する価値観。
現在のフランスの離婚率は30%、パリに至っては50%だそうですが、この映画が作られた80年時点では、フランスでさえも「元の鞘に収まる」価値観が勝ったんでしょうね。
アメリカでは前年の79年に『クレイマー、クレイマー』が撮られています。
「離婚」が社会問題化してきた時代だったのでしょう。
ビリー・ワイルダー『昼下りの情事』(57年)の時代から恋の花咲く浪漫の都と思われてきたフランスでも、まだ「離婚」は主流ではなかった。
よくよく考えてみれば、『男と女』(66年)だって、未亡人と男やもめという、巧みに不倫を避けた話でしたからね。

ここで思ったのが、「元鞘に収まる」理由が、「家族」とか「子供のために」とかいう価値観ではないのです。
藤田嗣治の彼女だったらしい婆さんの奔放な恋愛遍歴も含めて、「個人の幸せ」の追求が根底にあるように思います。
今どきのフランス映画が、やたら「家族」とか「絆」とかをテーマにしているのと大違いです(もしかするとそういう映画だけが日本に輸入されているのかもしれませんが)。

いろいろ面倒くさいことを書きましたが、所詮はアイドル映画なんですけどね。

(2023.01.01 新宿シネマカリテにて鑑賞 ★★☆☆☆)

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,494件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?