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映画『テルマ&ルイーズ』 水蒸気を砂埃に変えて(ネタバレ感想文 )

監督:リドリー・スコット/1991年 米(4Kレストア版日本公開2024年2月24日)

4Kレストア版にて、2024年になって恥ずかしながら初鑑賞。
『エイリアン』(1979年)と『ブレードランナー』(82年)は傑作だと思っていますが、実はリドスコ作品ってあんまり観ていないんです。
弟トニスコはもっと観てないけどね。リドスコ トニスコ ラブ注入。

リドスコって、水蒸気が好きですよね。
『ブラック・レイン』(89年)なんか大阪がニューヨークみたいだもの。
『エイリアン』の宇宙船なんて蒸気機関で動いてるのかっ!
この映画は(そういうシーンもあるけど)水蒸気を砂埃に置き換えた感じ。

今では「シスターフッド映画の金字塔」と言われる本作ですが、当時はシスターフッドという言葉は一般には浸透していませんでした(たぶん60-70年代に生まれた言葉で、再燃して一般に浸透するのは2010年代後半だと思う)。
覚えてるけど、『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』(2011年)って映画なんか「現代の『テルマ&ルイーズ』誕生」ってコピーだったからね。
ま、誰も知らん映画だけどね。俺、観てるけど。
あ!いま気付いたけど、『レディ・バード』(17年)だな。

そういった意味でも、この映画は、当時と今とではだいぶ印象が違うと思うんです。

91年当時は「プッツン女」なんて言葉で片付けられたかもしれませんし、
私だって「そうは言ったって、自業自得の面もあるんじゃない?」と思ったかもしれません。
でも、33年後の今観ると、いかに当時の女性たちが虐げられていたか、誇張でも何でもなく、ガチでリアルにこんなだったなあと思うのです。
この映画のダメ男(夫やトラック運転手)も、今ならがっつりハラスメントですが(当時はハラスメントなんて言葉も無かった)、当時は「あるある」で許容されていたと思うんですよね。
むしろ女性側に対して、「そういう社会的制約の中で生きる術を見出すべき」という批評だってあったはずです。
今じゃ考えられない発想ですけど、当時はそういう時代だったんです。

映画の中で、口紅を投げ捨て、時計や指輪やアクセサリーを売り払います。
彼女たちはそうやって「女性」を拘束する「社会の制約」を脱ぎ捨てていきます。そしてついには、この世の制約からも飛び立っていくのです。
カーリー・クーリという女性脚本家は、男社会の作った枠組みの中で生きる結末を拒否したのです。
男の物語なら「滅びの美学」であるストーリーが、彼女たちだと前向きな物語に思えるから不思議です。

あと、今観ると大したことなく見えるけど、CGもドローンもない時代に、結構手間のかかった撮影をしていると思うんです。
結構、カメラが移動するんですよ。
ステディカムが一般的になったか、軽量化されたんだと思うんですよね。
走ってる車をカメラが回り込んだりするから、バイクで撮影できるくらい軽量化されたんじゃないかなあ?
キューブリック『シャイニング』(1980年)の「ドヤッ!」って使い方から10年も経つと、技術もこなれてきて、自然に使えるようになってるんだな。

もう一つついでに言うと、ブラピだって出世作『リバー・ランズ・スルー・イット』(92年)より前でしょ?
いろんな意味で、なかなか「早い」映画だったように思います。

ま、そういう歴史的な意味合いを抜きにして、面白い映画でしたけど。

余談
ちょっと思うんですが、ハンス・ジマーの音楽が大げさ過ぎない?
『氷の微笑』のジェリー・ゴールドスミスもそうだったけど、90年代の音楽ってこんなだったっけ?

(2024.02.25 ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞 ★★★★★)

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