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映画『白鍵と黒鍵の間に』 何がノレない理由だったんだろう?(ネタバレ感想文 )

監督:冨永昌敬/2023年 日(2023年10月6日公開)

わりと楽しみにしてたんですよねえ。
冨永昌敬作品は、『パンドラの匣』(2009年)と『乱暴と待機』(10年)が好きでした。ま、私が太宰治好き、本谷有希子好きってこともありますけどね。

でも、その後ご縁がなかったというか、いやまあ正直言って、遡って観た『パビリオン山椒魚』(06年)が、私にはイマイチというか、ちょっとあんまりというか、ハッキリ言えば全然合わず、さらにオムニバス映画『BUNGO ~ささやかな欲望』(12年)の一編が決定的にダメで(ただ、石原さとみは可愛かった)、その辺から敬遠して十余年経ってしまいました。

そして本作も……う~ん……。

今年公開の池松壮亮主演作品『シン・仮面ライダー』『せかいのおきく』と本作、全部観てるんですけどね、どれもこれも……う~ん……池松壮亮君はいい役者だと思うんだけどなあ……。

何がノレなかった理由なのか、ちょっと分からないんですけどね。
この手の「一晩の物語」といった時間制約物、例えば三谷幸喜『THE 有頂天ホテル』(2006年)なんかがそうですが、私の経験上、書き手は書いてて面白いんですよ。ただ、観てる方はそれほど面白くない。
あと、南だか博だか、南だか和也だか達也だか、池松壮亮が二役しますね。
正確には三役のような気もしますし、一役のような気もします。
この手の時空を超えたような曖昧さというか入り組んだ構成は、私の経験上、書いてて楽しいんです。でも、観ている方はそれほど楽しくない。

そういう曖昧さというか時空の歪みみたいな構成が(結果として)肝であるのに、この映画は冒頭で「1988年」って字幕を出すんですよね。
「1988年(昭和63年)年末の銀座」と舞台設定を明確にしてしまう。
だったら、「昔々ある所に」の方が良かったんじゃないの?と思うんです。
「昭和がもうすぐ終わろうとしている東京で……」とかね。
それが面白くなかった(あ、ハッキリ言っちゃった)原因ではないんですけど、そのリアリティはかえって邪魔だった気がするんです。

関係ないっちゃ関係ないんですけど、だいたいこの1週間後に昭和が終わるんですよ。何か意味がありそうじゃないですか。
その間に誘拐殺人事件が起きるんですけど、これは意味があるんですよ(<『64(ロクヨン)』(2016年)の話をしています)。ちなみに『64』は映画よりNHKドラマの方が面白かったな。

「白鍵と黒鍵の間」に時代の狭間を重ねたというなら……いや、そうは見えないな。せいぜいビルの狭間だったな。

たぶん、一晩の物語も、入り組んだ構成も、「誰の気持ちで観りゃいいのさ?」ってことになるんじゃないかなあ?
それがノレない理由だったのかもしれません。少なくとも私には。

余談
私、ジャズ好きなもんでね(その割に『BLUEGIANT』(2023年)観てませんが)、「ゴッドファーザー愛のテーマ」なのか?と疑問があります。
「わぁ!ジャズっていいな!」「音楽って素晴らしい!」って感じがあれば、もうちょっといい映画になった気がするんですけど。

(2023.10.09 テアトル新宿にて鑑賞 ★★☆☆☆)

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