映画『ヒューマン・ボイス』 電話、犬、斧、油、赤、青、緑(ネタバレ感想文 )
全国一律800円興行の30分の短篇。
ジャン・コクトーの戯曲を自由に翻案して、ティルダ・スウィントンの(ほぼ)一人芝居で、初の英語劇で短編映画に仕上げたアルモドバルの真意が分からない。
でも、アルモドバルらしさは全開のように思います。
映画のファーストカットは、カラーなのにまるでモノトーンのような色彩で始まります。
何言ってるか分かりませんよね。画面上、赤と白しかないんですよ。
次に青。続くタイトルは緑。ビビットな色彩で画面を構成していきます。
そして描かれるのは、普遍的な別れの物語。
そこに、特殊な事情は見受けられません。あるのかもしれませんが、描かれません。
「電話での会話」に徹底することで「一人の会話劇」という舞台を構築し、
ワイヤレスイヤホンを装着することで物理的な制約からも解放します。
アルモドバル、意外に電子機器好き。というか、小道具を使うのが巧み。
そして、ティルダ・スウィントンが最後に破壊するのはスタジオのセットなんですね。
つまり、彼女の「実生活の空間」ではなくて「虚構の世界」なのです。
おそらく、過去を虚構の世界として葬り去り、新たな現実世界へ(犬と一緒に)歩み出すまでの女性の物語なのではないでしょうか。
それが、「女性映画」を好んで描く、アルモドバルの真骨頂。
(2022.11.06 新宿シネマカリテにて鑑賞 ★★★★☆)
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