映画『なまいきシャルロット』なまいきというより面倒くさい(ネタバレ感想文 )
クロード・ミレール生誕80周年上映のデジタルリマスター版で、2022年に初鑑賞。
主人公の13歳の少女シャルロット役は、当時14歳だったシャルロット・ゲンズブール。
ご存知ない方のために情報として書いておきますが、シャルロット・ゲンズブールの父親はセルジュ・ゲンスブール。フランスを代表する有名歌手です。
劇中シャルロットの母親は死んだことになっていますが、実の母親はジェーン・バーキン。エルメスのバッグ「バーキン」の語源となった超有名歌手・モデルです(セルジュ・ゲンスブールとは事実婚だったそうですが)。
ちなみに日本では、「無造作紳士」という彼女の歌が、野島伸司脚本のドラマ「美しい人」(1999年)の主題歌に使用されています。À quoi bon。
ちなみに、劇中「20歳になる頃には身長が225cmになっている」とシャルロットの急成長をからかう台詞がありますが、実際の彼女はそこまでは至らないものの、170cm超のそこそこの大女に育ったことも、今日では判明しています。
さらに言うと、この映画で(母親のいない彼女の家庭の)家政婦(というか父親の愛人?)を演じているのはベルナデット・ラフォンという女優。
フランソワ・トリュフォー『あこがれ』(58年)、そして『私のように美しい娘』(72年)の主演女優。
ちなみにクロード・ミレールはトリュフォーの助監督を務めたことがあるそうですな。
私は『私のように美しい娘』を「『ニンフォマニアック』(2013年)みたいだ」と評しているのですが、その『ニンフォマニアック』の主演がシャルロット・ゲンズブールなんですよ。
この少女が約30年後にはニンフォマニアックですよ。
世界はどーなっとるんだ!
無駄な情報を長々書いてしまいましたが、映画はね、すごーく良かった。
「なまいき」というより「面倒くせえ」けど。いわゆる「中2病」。
私はよく「映画は時代も国境も超えない」と言っていますが、この思春期のモヤモヤは万国共通ですね。それが良く描けてて、いま観ても新鮮。
これがハリウッドだと「複雑なストーリーや豊富なエピソード」で魅せるけど「思想や感情が単純」という方向になりがちなんですよね。
この映画は「話は単純だけど思想や感情が複雑」。
フランス映画らしいフランス映画。
彼女はね、地球儀を壊すんですよ。つまり、若者は既存の世界を破壊する(大きく変革する)力を持っているのです。
ま、その結果が『ニンフォマニアック』だけどな。
(2022.10.01 新宿シネマカリテにて鑑賞 ★★★★☆)