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映画『水深ゼロメートルから』 JKめんどくせー(ネタバレ感想文 )

監督:山下敦弘/2024年 日(2024年5月3日公開)

『水のないプール』(1982年)という若松孝二の映画がありますが、全然関係ありません。シェケナベイベー。

関係あるのは(?)『アルプススタンドのはしの方』(2020年)。
高校演劇リブート映画化企画第2弾だそうで、どこの商売人が金脈を掘り当てたんだか。
この2作に共通したテーマは、演劇やってる高校生の野球部に対する憎悪です(<嘘です)。

甲子園のアルプススタンド感がゼロの『アルプススタンド~』と大違いで、山下敦弘は冒頭数カットで田舎の高校の夏休みのグラウンド感を見事に描き切ります。山下の「田舎の切り取り方」は日本で一番巧い。

正直な感想を言うと、青春ってめんどくせー。JK超めんどくせー。

若いって「近視眼的」なんですよね。
中学時代には勝ててた男に水泳で負けたとか、女の子の日にプールを強要されたとか、女子なのに男踊りをしているのが恥ずかしいとか……
下手なLGBTQ映画より「性」に真摯な作品ですが、若い彼女たちが苦悩する「世界」は狭い。
その象徴が「プール」という狭い空間であり、その苦悩の象徴が「砂」なのでしょう。
ある意味『砂の女』(1964年)(<嘘です)。

そして彼女たちは、その苦悩というか「もどかしさ」を的確に表現する言葉を持ち合わせていません。
おそらく本当は、「ブス」なんて言いたくないし、「私よりタイムの遅い先輩に言われたくない」なんて言いたくないんですよ。
青春ってめんどくせー

高校演劇部の、否、全ての高校生の憎悪の対象である高校野球は、世間が思う「青春」の象徴なのです。
それを「横から見ている」青春の物語。
『アルプススタンド~』は、その(世間が思う)青春ド真ん中を少し認めていく話でしたが、この映画は青春ド真ん中(と男たち)に「宣戦布告」していく少女たちの物語です。

それが「ゼロメートル」の現在地点。ここから始まる未来の物語。
「水深ゼロメートルから」。実にいい話です。

ただ、個人的には、やっぱり映画というより高校演劇に感じてしまったんです。
山下敦弘は懸命に映画的な演出を試みますが、どうしても台詞芝居に終止してしまう。映画的な仕掛けとか、役者の魅力とか、そうした映像的な面白さが乏しく感じられて物足りない。
足の砂を払う丁寧な演出が裏目に出て、逆に制服や汗をかいた(はずの)顔に砂が付いて無いのを不自然に感じてしまう。
そう考えると、城定秀夫くらいの雑な演出の方が向いてるのかもしれませんね、高校演劇の映像化は。

余談
三大美人ドラマーの一人=ほな いこか先生(ちなみに他の二人はシシド・カフカと森高千里ね)のエピソードは必要かな?
私は、あくまで少女たちの視点で、先生の世界(あるいはかつて少女だった大人の世界観)を垣間見る方が良かった気がするんですが。

(2024.05.05 K2 シモキタ エキマエ シネマにて鑑賞 ★★★☆☆)

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