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映画『ガメラ 大怪獣空中決戦』 (ネタバレ感想文 )顔で見せる防衛シム映画

公開時以来約4半世紀ぶりの劇場鑑賞。今回は4K HDR版。HDRって何?
でも綺麗でしたよ、中山忍が。俺も怪獣のいない東京を案内したかった。

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平成ガメラシリーズ大好きなんです。
今にして思えば、当時は『シン・ゴジラ』(2016年)級の衝撃でした。ただそこは「ゴジラ×庵野」ほどお茶の間全国区の知名度でないので、マニア界隈の熱狂でしたけどね。いいえ、私は特撮マニアではありません。その筋には大変な先輩諸氏が大勢いらっしゃいますから。

そもそもガメラには大きな「枷」があると思うんです。

東宝の『ゴジラ』(54年)が1960年代に入って子供向けに転換し、怪獣ブームが起きる。それに映画各社が便乗した一つが大映のガメラ。他には日活のガッパ、松竹のギララとか。
若い方はご存知ないでしょうね。俺も知らねえけどな。
そういうわけで平成ガメラは、『大怪獣ガメラ』(65年)から30年を経た復活企画だったわけです。

しかし平成の時代に怪獣ってどうなのよ?平成ゴジラシリーズ『ゴジラvsビオランテ』(89年)なんか散々だったじゃないですか。
と言っていた当時、ゴジラが古典芸能と化す一方で、平成ガメラは「リアル・シミュレーション」を持ち込んだ。TBS日曜劇場『日本沈没』が「残念な『シン・ゴジラ』」とか言われていますが、その20年前に大人の鑑賞に耐え得るシミュレーション映画をやってのけた。
天王洲に本部を置くとか、リアル過ぎて痺れる。
いやまあ、押井守の『パトレイバー』(89年)、『パトレイバー2』(93年)の系譜ですけどね。同じ伊藤和典脚本だし。
もう少し厳密に言うと、昭和ノスタルジーを残しつつ、リアルな防衛シミュレーションを繰り広げた。

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ところが、前述したようにガメラは後発怪獣。基本性能に無理があるんですよ。亀だからね。お前ほど歩みののろい者はない。なので、泳ぐ以外に「飛ぶ」というスペックを持たされちゃっている。さすがにこれを無視できなかった。無視してもノロノロ歩くだけになっちゃうしね。
その結果、「そんなのいねー」って生物になってしまった。ゴジラはまだ「古代生物」って言い張れるけど、「空飛ぶ亀」なんて科学的説明がつかない。邪魔でしかない設定。これがガメラ最大の「枷」。

ところが平成ガメラチームは、あり得ない「巨嘘」というボコボコの穴を丁寧でリアルな(悪く言えばもっともらしい)説明で埋めていったのです。
その結果、邪魔でしかなかった「枷」が、ガメラ誕生の「謎」に変貌し、サイエンス・フィクション・ミステリーへと様変わりした。
この物語の再構築は見事としか言いようがない。
あの科学的説明をする袴田吉彦は『パトレイバー』のシバ シゲオだし『うる星』のメガネだよね。あ、いいえ、私はマニアではありません。

そして何と言っても、金子修介の丁寧な仕事ぶり。
私は「顔」の映画だと思っています。
事態を見て驚く者の「顔」を多用する。
スピルバーグがよく使う手法で、古くはベルイマンが用いた手法です。
簡単に言えば「リアクション」。金子修介は丁寧にリアクションを撮る。
ヘリから見下ろす搭乗員の「顔」。あれ多分、当時まだ無名だった佐藤二朗だと思うんだ。

そして最後の最後、ガメラが見せる「ドヤ顔」。

私はずっと、セガールの娘を「巫女」とすることでガメラを「神」に見立てた脚本に気を取られていましたが、今回ガメラの「ドヤ顔」を見て「これは完全無欠のヒーロー映画だったんだ」ということに気付いて涙したのです。
ウチのヨメは「ガメラのドヤ顔が可愛い」言うとりましたけど。

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余談
『シン・ゴジラ』は会議シーンが多数ありますけど、この当時は「これは閣議決定です」で済んだんですよ。たしかに『シン・ゴジラ』が目指した先が岡本喜八『日本のいちばん長い日』(67年)だったということもありますが(実際『シン・ゴジラ』で消えた博士は岡本喜八の写真が使用されている)、この20年で「政治が安っぽくなった」という見方もできる気がします。『金環蝕』(75年)とか大好きなもんで。

(2021.10.31 Morc阿佐ヶ谷にて再鑑賞 ★★★★★)

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監督:金子修介/1995年 日

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