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映画『ホワイト・ノイズ』 ノイズが多すぎる(ネタバレ感想文 )

監督:ノア・バームバック/2022年 米 Netflix(日本公開2022年12月9日)

「ノーベル文学賞獲るんじゃね?」と言われているドン・デリーロの原作をどこまで消化(昇華)しているのか未読なので分かりませんが、映画は物語の解釈の余地を狭くしてしまっている気がします。
有り体に言えば、最後のドイツ人尼僧の台詞と最後のナレーションで、「この映画の言いたいことはこういうことだったんですよ」と全部説明してしまっている。

そんなことするくらいなら、映画冒頭で「この映画はこういうことを描きますよ」って先に言っちゃえばよかったのに。ウディ・アレンがよく使う手法です。
先に犯人を明かしちゃう「刑事コロンボ」なんかの倒叙形式と同じ、
あるいは「ヒッチコック劇場」のヒッチコックみたいに
「人は恐怖から逃れようとする一方で恐怖に見入ってしまう」
「恐怖は国家規模でも家庭規模でも日常的に起こりうる」
なんてことを冒頭に伝えて、
「さあ、日常と非日常の恐怖の波に右往左往する人の姿をとくとご覧あれ」
という映画だったら楽しかった気がします。

「内容がわからない」ということと「面白くない」ということはイコールではないと思うんです。ワカンナイけど面白い映画ってたくさんありますからね。
でも、「映画の方向性がわからない」と「面白くない」時間が長くなり、結果「面白くない」という感想になりかねない。
シリアスなのかギャグなのか、笑っていいのか悪いのか、正直「ノレない」時間が長かった。
この映画の欠点はそこだった気がするんだよな。
もっとも、『マリッジ・ストーリー』(2019年)しか観ていないので、ノア・バームバックとの距離感がつかめなかったというのもありますが。

舞台設定は70年代なのかな?80年代なのかな?
ポール・トーマス・アンダーソン『リコリス・ピザ』(2021年)もそうだけど、最近のアメリカ映画、いや日本映画もそうか、懐古趣味的なものがしばしば見られる気がします。
これはどういう世相の反映なんだろうな?
『リコリス・ピザ』のオイルショックもこの映画の有害物質も「情勢不安」が背景にあるんでしょうけど。

そういった意味では、私がこの映画を10年後に観ていたら「当時のコロナ禍の影響が色濃く反映されている」と読み解くでしょう。
でも、今この映画を観ちゃった私は、10年後にはこれがどんな映画だったか、なんなら観たことさえ思い出せない気がします。
それくらい何も刺さらなかったんだよなあ。申し訳ない。

アメリカ人って「陰謀論好き」じゃないですか。
そのせいか、観ている最中は『アンダー・ザ・シルバーレイク』(18年)を思い出したんですが、今思い返すと、ポール・トーマス・アンダーソン『マグノリア』(1999年)とかアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)とかの系譜のような気がしてきた。
人間の、というかアメリカ人・アメリカ社会の、病理にも似た「得体の知れない何か」を描いたすごく深い話のようにも思うんですよね。

でも、刺さらなかったんだよなあ。

(2022.12.11 アップリンク吉祥寺にて鑑賞 ★★☆☆☆)

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