記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『遺灰は語る』 死と記憶を巡る物語(ネタバレ感想文 )

監督:パオロ・タビアーニ/2022年 伊(日本公開2023年6月23日)

ヴィットリオ&パオロ・タヴィアーニ、通称タヴィアーニ兄弟。
世界四大「兄弟監督」の一組。
他はコーエン兄弟とダルデンヌ兄弟とウォシャウスキー兄弟・・・だったんだけど、お兄ちゃんが性転換しちゃってウォシャウスキー姉弟に変わったのよね。

そんなヴィットリオお兄ちゃんが亡くなって、弟パオロ・タビアーニ初の単独監督作品。実に91歳!

タヴィアーニ兄弟の作品は『グッドモーニング・バビロン!』(87年)を若い頃にテレビ放送で観たきり忘却の彼方で、その特性は何とも言えません。
不思議なもんで、映画館で観た映画は多少なりとも覚えてるんですがね。
テレビ放送とかビデオとかで観たのは微塵も覚えてない場合がある。

それはさておき、本作は現実世界で「兄の死」に直面した監督が、なんなら自分の死期もそう遠くないことを自覚しながら、故人に対する周囲の人々の「記憶」を描いた、バリバリ自己投影した作品と言えそうです。
本編もおまけ(?)の短編「釘」も、全編通して「死と記憶を巡る物語」。
いい話なんですけど、それ以上の解釈は生まれないなあ。
付け加えるなら、「本当の死は人の記憶から忘れ去られた時にやってくる」というようなことでしょうかね。

ちなみに遺灰となった文豪ルイジ・ピランデッロという人は実在するノーベル賞作家なのだそうです。
てっきり嘘っぱちかと思った。
村上春樹『風の歌を聴け』で何度も引用される作家デレク・ハートフィールドみたいに。あるいは三谷幸喜『王様のレストラン』冒頭の格言みたいに。だって「ミシェル・サラゲッタ」とかいう名前なんだぜ。料理だから皿ゲッタって、あーた。

タヴィアーニ兄弟にはそういう茶目っ気はないようです。
コーエン兄弟ならやるな。実際、『ファーゴ』(96年)でやってるな。
「これは実話である」「死者への敬意を込めて(人名以外は)忠実に映画化している」大嘘だもんね。

(2023.06.25 ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞 ★★★★☆)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?