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映画『一日だけの淑女』 まるで三谷幸喜。いい話なんだけど…(ネタバレ感想文)

監督:フランク・キャプラ/1933年 米

路上で林檎を売ってる老婆が、別居している娘の結婚のために上流階級の淑女を演じるという「成りすまし物」とでも言うんですかね、三谷幸喜がよくやると思うんですけど、あれです。
監督作だと『ザ・マジックアワー』(2008年)でありますよね。あの佐藤浩市は出色。なんなら彼のベストアクト。

ああ、あと、2014年にTBS日曜劇場で『おやじの背中』っていうドラマがあったんです。おやじ(親子関係)をテーマとした10名の脚本家による一話完結オムニバス形式のドラマ。
脚本家は、岡田惠和、坂元裕二、倉本聰、鎌田敏夫、木皿泉、橋部敦子、山田太一、池端俊策、井上由美子、そして三谷幸喜。
凄い脚本家陣のオオトリが三谷幸喜で「北別府さん、どうぞ」ってタイトルのドラマなんだけど、小林隆演じる患者が病院で偶然会った別居中の小学生の息子の前で医者を演じるという話。
今思えば『一日だけの淑女』の本歌取りですね。
三谷幸喜だと分かって観ていないと、ちょっと…感がある話で、新聞のテレビ欄に「酷い」って投書されてたのを覚えてます(笑)。
実際、私も、「嘘から始まる」設定って、ハマらないと見てて辛いんですよ。嘘つけない性格なもんで(<それが嘘だと言われますけど)。

本作は、キャプラ自身が『ポケットいっぱいの幸福』(61年)として、またジャッキー・チェンも『奇蹟/ミラクル』(89年)としてリメイクしています。
まあ、一見いい話なんで、リメイクしたくなるのも分かるんですが、でもなあ、なんか腑に落ちないんだよなあ。
これ「昔の話」「外国の話」というフィルターというか「濾過装置」があるからいい話に思えますけど、現代で考えたら詐欺じゃないかなあ?

詐欺ではないにしても、結婚後の家族間の付き合いとかどうするのさ?
てゆーか、このネット時代、こんな嘘、すぐにばれるよね?
最後の警察の護衛は国民の税金だよね?
てゆーか、身分を偽ってでも上流階級と結婚する(させる)ことが幸せだっていう価値観が現代と合わなくない?身分なんか関係なく、愛し合う者同士結婚すればいいじゃない?なんなら、身分どころか性別すら関係ねーぜ!って時代でしょ?

そう考えながら、この90年前(!)の映画を、今一度「現代」というフィルターで濾過すると、「人の善意」が残るような気がします。
よく見ると、この映画、悪人がいないんですよね。

悪人のいない、善意に満ちた、詐欺話。

(2024.08.04 渋谷シネマヴェーラにて鑑賞 ★★★☆☆)

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