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映画『アデルの恋の物語』(ネタバレ感想文 )こんなにヒッチコック風味だったとは

私、ゴダール嫌いのトリュフォー好きなんですが、観てない大作系が結構ありましてね。トリュフォー、52歳で死んだわりに作品多いんだ。

今回、トリュフォー生誕90周年映画祭とやらで、未見だった本作を初鑑賞。
アントワーヌ・ドワネル物は全部観てんのにアデル観てねーのかよって話ですよ、我ながら。あ!『逃げ去る恋』(1978年)なんて2度も観てるよ。馬鹿じゃねーの?

私、トリュフォー好きと言いながら、あまり褒めたことありません。
「映画撮るの下手だなあ」と観るたびに思う。
この映画の最初の上陸(入国審査?)シーンなんか意味分かんないもん。
でもねえ、嫌じゃない。下手だけど味がある……ような気がする。

途中でアデルが「覗き見」するシーンがあって、急に「ヒッチコック風味」になるんです。
実際、トリュフォーはヒッチコック大好きですからね。
この映画はトリュフォー自身がカメオ出演までして「ヒッチコック・パロディー」の刻印をはっきりと残している。
もしかするとこの作品は「ヒッチコック・テイストで時代劇やってみよー」というチャレンジだったのかもしれません。
あるいは、トリュフォー的『レベッカ』(1940年)。
たぶん、死んだ姉を亡き妻レベッカに見立てたサスペンス。
サスペンス?

もう一つトリュフォーの挑戦(?)と思ったのは、「手紙を書く」という行為にナレーションをすり替えたこと。
ナレーションベースで表現したくなるアデルの心情を、「手紙」というツールで「独白」に置き換えた。実際はどれだけ書き残したのか知りませんが、文豪の娘ということが説得力を持つ。つまり「書く」ことが彼女の感情の発露なのです。
こうしたトリュフォーの「語り口」「目の付け所」は嫌いじゃない。

もしかするとフランス人なら「アデル・ユーゴーね、はいはい」と皆さん御存知の案件なのかもしれませんが、全然知らなかったもんですから、映画終わった時に思わず「長生きしたんかい!」って突っ込んじゃった。

結論を言うと、申し訳ないけど「珍作」的な楽しみ方をしちゃった。
まあ、「実話だ」って言われたら仕方がないんだけど、説得力がない。腑に落ちないというか飲み込めないというか。
「めんどくせー女だな」というのが正直な感想。

これたぶん、製作当時だったら「悲恋物語」として、だいぶ違う印象で受け止めたんでしょうね。ストーカー規制法も無かったし。
映画は時代を超えないんですよ。観るのが遅すぎた。

余談
バルバドス島に流れ着いたんですね。リアーナの出身地ですな。

監督:フランソワ・トリュフォー/1975年 仏

(2022.06.26 角川シネマ有楽町にて鑑賞 ★★★☆☆)

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