記憶の蓋が開く時 春日丘カルピス

暑い暑い、本当に焼け付くような暑さの中、弟達が27年ぶりにライブをやるというので梅田バナナホールに見に行ってきた。

バンドの名前は春日丘カルピス

関西の人なら春日丘の名前くらいは聞いた事があるかもしれない。公立高校の名前。

軽音楽部で始めたバンドが高校卒業後も続き、何かしらのコンテストにも出場したが、彼等が大学を卒業する頃には解散、別々のバンドに散って行ったり、或いは他の仕事に軸足を移したり。

当時は(多分今でも)アマチュアバンドなんて星の数ほどあれどメジャーデビューには至らずという典型的なパターンだったと思う。

それが何をどうしたものかもう一回ライブをやるっていうのだから、うーん。困ったというのが最初に聞いた時のわたしの気持ち。

27年も前の事を覚えている人なんているのかしらん?

たとえ覚えていてもわざわざ暑い中、お金を払って時間をかけて見にくる人なんているのかな?

仕方ないな。

身内枠で枯れ木も山の賑わいでチケット買ってあげよう。夫にも頼んで一人でも多い方がいいよね。

そんな感じ。

ライブ当日。

会場に着くと、チラホラとお客さんが。

やはり彼等の身内枠か。

暑い中、お疲れ様ですって言いたくなる。

席についてライブ開始時刻が迫ってくる。

あれ?

立ち見が出てる!

かなり入って来ている!

春日丘の同窓会も兼ねているのかもしれない。

だけどこれだけお客さんが入っているって本人達は知らないらしい。(弟の奥さん曰く)

ゲストバンドのおっとっとに続いて
春日丘カルピスメンバー登場!

拍手!

キャー!という黄色い歓声。

そして彼等のジャジャーンというライブが始まった。

うわあ、この曲久しぶりに聴いた。

そうそう、この曲はこんな感じで皆で盛り上がっていたんだと次々に記憶の蓋が開いていく。

ドラムの音、ギターの音色、ベースやドラムこのお腹に響いてくるようなこの感じ。

フラッシュライト、前で立っている人達がいつのまにか増えている、踊っている。

クラッカーの火薬の香り、ヴォーカルの片山くんが当時と全く同じキーで歌っている。

あれ?

彼等ピョンピョン跳ねながらプレイしているけど実年齢50才を越えているはずだ。

もちろん私を含むオーディエンスも皆半世紀以上生きて来ている人ばかりのはずだ。
どう見ても親子連れもいる。

なんだこれー!

脳内がスパークしている(なんかピンと来ない表現)

タイムスリップした?(これも近いけどちょっと違う)

そうだ!

デジャヴだ!

デジャヴという表現が一番近いような気がする。

思えば昭和の50代といえば、一番有名なのはサザエさんに出てくる波平さんだろう。

でも、

でも、ステージ上で演奏している彼等も、見ている私達もとても波平さんのような落ち着きがない。

彼等だって私だって自分が20代の頃に50代の大人といえば、もう充分に老成して孫と安穏としているくらいにしか想像出来なかった。

でも実際には、大音響の中でピョンピョン飛び跳ねながら、ロックバンドにノリノリなのだ。

実に興味深い。

日本は高齢化社会になったというが、単に老後が伸びただけではないのだ。

青春も随分と長くなったのだ。

私達は長い長い青春を謳歌しているのかもしれない。

孫と遊ぶのはもう少し先延ばしでいい。

20代の頃に聴いていた音楽はいつまでも色褪せる事なく私達の生活を彩り、また、それをライブという形で実現可能にする環境も整っている。

豊かになったんだと思う。

私達の親の世代ではこんな事は実現しなかっただろうし、たとえ実現してもいい歳をした大人がと眉をひそめられたかもしれない。

おかげさまで大盛況でライブ終了。

もちろんバンドメンバーも、見に来てくれたお客さん達にも等しく27年という月日が流れている。

日常に戻れば楽しくない厄介もたくさん抱えている事だろう。

でもあのライブの瞬間、あの空気の中だけは全員が10代や20代だったキラキラしていた瞬間に、ワープして心底楽しんでいたと思う。

音や匂いや振動、そしてライブホールという場所が私達を一瞬ものすごく遠くに運んでくれた稀有な経験をした。

最後に弟含め、このライブ実現の為に奔走してくださった方々、遠方よりお越しいただいたファンの皆様にお礼申し上げます。
ありがとうございました。

ライブの様子はYouTube でもご覧頂けます。
また、当日の様子を収録したDVDも発売予定です。
よろしければどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=F9QTw7C9RwI

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