インドのひとたちとわたくし。(130)-ディワリとコロナと大気汚染
デリーの1日当たり新規コロナ感染者が急増している。州政府は『第三波の到来』を宣言した。第三波って、第二波はいつだったんだ。
どうやら9月のピークが『第二波』であったらしい。10月にかなり落ち着きを見せていたのが、ディワリを前に買い物や食事、お祭りなどで、ひとびとが外出して集まる機会が増えたのだ。
「以前の感染者はスラムから発生していたが、今は中産階級以上のひとに患者が増えている」と、デリーの保健相が指摘している。つまりロックダウン初期に引きこもる家と食料がじゅうぶんにあった経済的に恵まれたひとびとが、今度は出歩くようになったのだ。マーケットでも、ソーシャル・ディスタンスはあまり守られていない。
先月あたりから、そろそろ髪を切りに行きたいなと考えていたが、これでまたヘアサロンに行くのを躊躇するようになってしまった。
これに加えて大気汚染がひどい日が続いている。パンジャブやハリヤナなど隣接する農業州ではこの時期、収穫後に畑を野焼きする。それは恒例なのだが今年は、ロックダウンで多くの農場の働き手が田舎に帰ってしまったため、深刻な労働力不足が起きており、「野焼き」が「農場火災」となって猛威を振るっているらしい。週末だけで数千件に上る火災がパンジャブで観測されたというから、えらいことだ。
朝晩の気温も急速に10℃くらいまで下がってきた。これだけでもこの時期、体調を崩すひとが多い。オフィスでもなんだか順番があるみたいに一人ずつ休んでいる。先週金曜日はプリヤンカ、月曜の今日はエンジニアのアトゥールだ。
今のデリーとノイダのAQI(大気質指標)は、『健康なひとでも影響を受けるレベル』が、数日間、続いている。
こういう状況でもあり、デリー州政府は早々に市内での爆竹を禁止した。ディワリのお祭りではみんな夜半に花火や爆竹で盛大に祝うのだが、これがひどい大気汚染をさらに悪化させることになっている。昨年は、煙の少ない『グリーン・クラッカー』なるもののみ、販売が許可されていたが、大した効果はなかったみたいで、今年はそれごと全面禁止だ。
なのに、なのに、深夜遅い時間にどこかから打ち上げ花火や爆竹の音が聞こえてくるのはどういうことなのだ。我慢がきかないなあ、みんな。
ディワリを前に、マーケットの各店前にはきれいに梱包された籠盛りのギフト用商品が積まれている。顔なじみのアンジュンがいるオーガニック・ストアは、マーケットの入り口近くに移転していたので寄ってみた。前より場所がよいし、広い。アンジュンが出てきて相手をしてくれた。「広いし、バックヤードでいろいろ作業するスペースもじゅうぶんある。スタッフも増やしてデリバリーを強化するんだ」とのこと。ディワリのギフト配達もそうだし、この後、感染爆発がまた起きて再ロックダウンになることも想定しているみたいだ。前回はてんてこ舞いだったもんね。
職場では、転職するスニータと会う、今日は最終日だったので、別室で少し話をした。私たちの名前を入れた、美しいサンキュー・カードを用意してくれている。封筒にリボンまでかけて、丁寧だ。彼女の気持ちが伝わってきてじんわり来る。
考えてみたら1年半もの間、往復3時間の通勤時間をかけて、よくやってくれたものだ。新しい職場は家から30分で行けるらしいから、家族も安心だろう。電子部品の製造メーカーだから、仕事の紹介もできると思う、とどこまでも協力的だ。
週末からは実家に戻ると言う。彼女の実家はヒマラヤ山脈の麓、ヒマーチャル・プラデシュ州のマナリだ。保養地・観光地として有名で、冬はスキーも楽しめる。「多いときで6フィートも雪がつもる」とスニータ。「デリーと違って空気がきれいだし、静かでいいところだから、いつかぜひ一緒に行こう」。ほんと、パンデミックさえなければ、冬の過ごし方としては絶好の場所に違いない。
非常勤の会計士、アナントとも久しぶりに会った。ディワリはどうするのと聞いたところ、「どこへも行かない。家でじっとしてる」。そう、それがいちばんだ。
‐ デリー政府の会見「コロナ第三波」( Times of India, 5th Nov. 2020 )
‐ パンジャブの農場火災が大気悪化の原因( Hindustan Times, 9th Nov. 2020 )
‐ デリーの大気汚染が深刻化( India Today, 9th Nov. 2020 )
‐ デリーは当面、爆竹禁止( Indian Express, 9th Nov. 2020 )
( Photos : In Delhi, 2020 )
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