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「おもちゃとジェンダー」問題を今こそ発信したい!ねじハピ編『ピートラ』Vol.77

機ちょーまさとです。
先日、当社商品「ねじハピシリーズ」の新商品発売のお知らせのため、いつも通りの流れでリリース発信したところ、思わぬ反響(SNS)をいただきちょっとした驚きがありました。というのも……。

そもそもこういった「クラフト・ホビー」(玩具業界用語)カテゴリーの商品が、6年以上も続くこと自体が激レアケースな上、新商品発売リリースに対して反響をいただくなんて、これは世の中の背景の方になにかあるのでは……?
そう思ったせっかくの機会ですので、記事にしてみました。


「ねじハピ」新商品のリリース、何でウケたの?

「ねじハピ」とはキラキラのねじを電動ドリルでねじ込んで、かわいい小物入れなどをつくって遊ぶDIY体験をするおもちゃのシリーズです 。

一方、今回の新商品「ねじハピ ステッキドライバーDIYセット」はドライバーを手動にしたことと、作るのを洋服の襟の部分だけに特化して、お洋服をデコっちゃおうというコンセプトが新しい部分です。

このねじハピシリーズは見ての通りドライバーとねじといった、ハードな印象の道具を使って可愛らしいモノを作る遊びを提供する商品です。

もっと言うと、これまで男性っぽい印象だった道具を、女性っぽい体裁にしたおもちゃと言え、このピートラで度々言及している「おもちゃとジェンダー」問題(後述)に触れるテーマを持っています。

ジェンダー問題が日本でも広く認識されるようになった現在、「おもちゃとジェンダー」テーマに共感性がある世の中になったことが、商品シリーズのロングセラー化や商品発売リリースへの反響をいただいた根本的な理由ではないかと考えました。

ねじハピ誕生

ここで、ねじハピという商品が生まれた瞬間について説明します。

というのも、2018年の発売当初、ねじハピにはジェンダー問題というテーマはありませんでした。またSDGsという言葉も今ほどの認知がなかったんです。
アイディアの発端になったのは、人気の女性タレントが100円ショップで買ってきた素材を楽しくDIYして、可愛いインテリアをつくるテレビ番組が流行っていたことでした。そこで、それまで男子っぽいイメージだった電動ドリルとねじを、女の子に渡してみたらどうなるだろう?という実験をやってみたんです。

すると、電動ドライバーをギュインギュイン言わせてねじ込んだり引き抜いたり、それだけでものすご~く楽しそうな姿を確認できました。工具を使ってものづくりをする楽しさに、男も女も関係ないじゃん!と確信しました。
電動ドライバーを使って、女の子が喜びそうなものを作るようなおもちゃには大ヒットのポテンシャルがある!そしてプロジェクトがスタートし、現在6年も続くロングセラーヒットに成長しました。

「おもちゃとジェンダー」問題

このヒットの背景には、前述の「おもちゃとジェンダー」問題の存在を感じずにいられません。
まずは「おもちゃとジェンダー」問題についてお話します。SDGsではジェンダー問題といえば、LGBTQの方が注目されていますが、私達玩具メーカーの眼の前で起きている、こどものジェンダー問題とはこちらなんです。

大人世代が持っているなんとなくの常識として、車や電車や戦いごっこは男の子のおもちゃ、人形やおままごとやピンク色のものは女の子のおもちゃ、という認識があるかと思います。しかし、子どもたちが生まれ持った好奇心には、男の子でもおままごと大好きな子が大半だし、乗り物大好きな女の子も少数派ではありません。問題は、上記の様な認識があると、その逆の姓のおもちゃを遊ぶことが「恥ずかしいこと」に仕分けられ、子どもたちは好きなおもちゃを堂々と選ぶことができないことにあります。

子どもにとって遊びは成長の過程である、と広く認識されるようになった今、おもちゃメーカーであるピープルは、真剣にこの問題解消に向けて活動する必要があると考えています。

話を「なぜねじハピはヒットしたのか」に戻しますと、女の子にも工具を使ったものづくりをしたい!という好奇心=需要は強く在ったのに、これに応える商品がなかったことが勝因、になります。
そしてこのヒットは、我々のような玩具メーカーが「おもちゃとジェンダー」問題をヌルっとひとつ解消する有効な方法だった、と今振り返って思うところがあります。

「男の子っぽい」ねじハピの失敗

シリーズとして成功した「ねじハピ」シリーズですが、私達に重要な学びを与えてくれる失敗商品もありました。

発売直後から店頭のサンプルがものすごく人気で、たくさんの女の子が集まってギュインギュインやってくれていたのですが、その傍らに男の子もやってみたそうに遠巻きに眺めているのを見たお店のスタッフさん方が「男の子用のねじハピを作ってほしい!」という要望を口々にいただきました。

本来男の子っぽかった電動ドリルの遊びを女の子っぽい体裁にしたのがねじハピで、その男の子版……? んん~?
とは思ったのですが、その後発売したのがこちら「エンジニアスタイル」。しかし、残念ながら全然売れずに終わってしまいました。

結局男の子にも女の子にも見向きもされないものになってしまったわけです。単純にユニセックスなデザインにしてもダメだと証明されました。

つまりねじハピの場合。
女の子に「男の子のおもちゃ」を買ってもらうというハードルがあり、「男の子でも女の子でも遊んでいいよ~」というふんわりしたメッセージ(=ユニセックスなデザイン)ではそのハードルを乗り越えられない。
完全に女の子が好む体裁にして、「女の子のためのおもちゃ」として作られたことでハードルを乗り越えられたということだと思います。

ジェンダーバイアスをなくそうってときに、「女の子のためのもの」という一見矛盾した戦略ですが、現在は過渡期。強く「男(女)の子のためのもの」というハードルがある現在では必要なステップなんだろうと考えました。

おもちゃメーカーにできること

我々は株式会社(NPOや行政機関ではない)なので「利益をちゃんと得られるビジネスにならないものは続けられない」という暗黙のルールに縛られています。
「おもちゃとジェンダー」商品を作って大ヒットさせれば、今まで遊びたくても遊べなかった潜在ニーズの存在を証明した上で、ジェンダーバイアスを解消することにつなげるのが、株式会社として本業と一貫した社会問題解決方法だと考えました。

世の中は変えられる

ねじハピの商品としての成功や、今回のリリースへの反響によって、私達のような中小企業でも世の中を少しずつ変えられるという自信ができました。

今こそ「おもちゃとジェンダー」問題について情報提起し、お子さんの居るご家庭や、保育園・幼稚園など子どもと関わる仕事をお持ちの方々に、問題があること知ってもらうことから始め、子どもたちが生まれ持った好奇心を丸出しにして遊べる世の中に変えていきたいと思います。

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