やっと出会えた、わたしの相棒【#忘れられない一本 01】
誰にでも、忘れられない一本がある。
小学生の時に初めて手にしたシャープペンデビューの一本、
持っているだけでクラスの人気者になれた自分史上最強の一本、
受験生時代お守りのように大切にしていた一本。
そんな誰しもが持っている、思い出のシャープペンと、
シャープペンにまつわるストーリーをお届けする連載
「 #忘れられない一本 」。
ぺんてる社員がリレー方式でお届けしていきます。
記念すべき第1弾は、ぺんてる入社3年目の、井嶋さん。
あなたの忘れられない一本は、なんですか?
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シャープペン。それは小学生の私にとって憧れの存在だった。
私には5つ年が離れた兄がいる。要領がよく、頭も良いが、問題児。
何かと家族や学校の話題をさらっていく。
そしてどこへ行っても「○○の妹」と呼ばれてしまう。いわゆる目の上のたんこぶだ。
私がまだ小学生だった頃、兄が中学校で使っている「シャープペン」という存在に強烈な憧れがあった。
小学校では禁止されている「シャープペン」。
鉛筆は使ったら使った分だけ短くなってしまうが、シャープペンはいくら使っても芯を交換すれば使い続けられる。なんだそのすごいアイテム!と魔法のように感じていた。
小学校でどうにかして憧れのシャープペンを使おうと、こっそり鉛筆に似せたデザインのシャープペンを使い、先生に没収されたりしたものだ。
一方、家では兄が軽快にペン回しをしている。目にも止まらない速さとドヤ顔で。
そんな光景を日常的に目にしていたことから、シャープペンへの憧れはより強まっていた。
数年後ーー中学校に上がる直前の春休み。
心機一転、筆箱やノートを一式揃えるために、地元の大きなショッピングモールに行った。
やっと念願のシャープペンが手に入る...!心の中でルンルンだったに違いないが、初めてのシャープペンは何を買ったかはさっぱり覚えていない。
あっけなくシャープペンデビューを果たし、それからいくつものシャープペンを手にしてきた。
実際に買って使ってみたり、友だちに借りたり、文房具売り場で試し書きをするうちに、だんだんとわかってきたことがある。
それは、私のシャープペンを握る力がとにかく強いことだ。
握力は人並み、もしくは新体力テストで最低点を叩き出してしまうほどなのに、シャープペンを握る力はべらぼうに強いようだった。
当時は授業の板書をノートに一語一句漏らさず書き込むということに全力を注いでいたので、自然と力が入っていたのかもしれない。
新品だったはずのシャープペンは、すぐに見るも無残な姿に変わり果てていた。
当時愛用していたシャープペンは、グリップが少し柔らかい素材だったために、いつの間にかグリップの先端がなくなっていたのだ。
シャープペンがえぐれたら、また新しいものを買えばいい。そう思っていたが、中学生のお小遣いでは限界があった。
そこで硬いグリップのシャープペンを探し求めた。
ただ、ツルツルとしたグリップだと汗で滑ってしまったり、長時間書き続けるうちに手にタコができてしまう。
あれも違う、これも違う、中学生の限られた財力と人脈を駆使し、様々なシャープペンを試した。
そんな中で出会ったのが、ぺんてるの「グラフ600」だった。
現在すでに日本での販売は終了しているが、適度な重量感とクラスメイトの誰とも被らないであろうポップなカラーリングが気に入った。
ノック部分には、シャープペン替芯の硬度を表示する窓もあり、なんだかかっこいい。
そして何より、金属グリップなので、どんなに使ってもえぐれることがないのだ。
こうして、私の筆箱の一軍として台頭した「グラフ600」は、高校生、大学生、社会人になっても一軍であり続けた。
ただ、社会人になってから、シャープペンを使う機会は激減した。
何かメモを取るにしても、アイデアを考えるにしても、記録を残すという意味で消えないボールペンがいいと思ったからだ。
今は、小学生の時のように、一から教えてくれる先生はいないし、誰も板書をしてくれない。完璧にノートに写せばいい時代は終わってしまった。
ただ、ふと筆箱を覗けば、今でもそこに「グラフ600」がいる。それだけでなんだか安心ができる。
私にとって、「グラフ600」はずっと一緒に過ごしてきた相棒であり、これからもそばにいてほしいお守りのような存在だ。