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意外と○○派多数!?調査結果発表「物書きのプロアマのみなさん、手書きってどうなの?創作大調査」


みなさん、こんにちは。
シャー研部の井嶋です。

2021年はじまりました!今年もみなさんとシャーペンライフをシェアできるコンテンツをお届けすべく、シャー研部員一同頑張っていきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、昨年12月にポプラ社さんとの初コラボ企画として、「物書きのプロアマのみなさん、手書きってどうなの?創作大調査」を開催させていただきました。調査期間半月という短い中でしたが、なんと271名の小説家の方に調査にご参加いただきました!回答してくれた小説家のみなさん、そしてnoteでスキやTwitterでリツイートをしていただいたみなさん、本当にありがとうございました。

回答いただいた中には、TVアニメにもなったミステリー小説シリーズの著者さんやTVドラマ化した作品を手がける小説家の方々もいらっしゃったということで、ポプラ社さんのネットワークに感謝するばかり。楽しい企画をご一緒できて嬉しい限りです。

シャー研部員としては「ねぇ、正直、手書き派いるかな?いなかったらどうする?」なんていう内心弱気な気持ちや、シャープペンが小説家の方々に創作道具として受け入れられているのか!?という関心が大いにありましたが、小説家たるもの「物を書く人」ですから、みなさん創作過程や創作道具にもこだわりがあるようでして、とても興味深い調査結果が得られました。

そこで、今回はその結果をみなさんに大公開!小説家が普段どんな創作手法で作品を生み出しているのか?そして、創作における“手書き”とは?シャープペン愛用者は果たしているのか!?結果発表ご覧ください。


Q.小説の原稿はどのように書きますか? 


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最初に気になるのは「小説の原稿(そのもの)ってどうやって書いてるの?」ということ。デジタルのご時世ですから、やっぱりPCやタブレットでしょ、と予想をしていましたが、やっぱり大多数の方は「キーボード打ち込み」(228名)という結果。そりゃあそうですよね。昨今、編集者・出版社とのやりとりもオンラインが多いそうですし、入稿もデジタルだと聞きます。ですから、当然の結果と言えるでしょう。

で・す・が!なんと、いらっしゃいました「手書き」派・・!ごく少数の9名ですが、原稿そのものもすべて手書きされているという超貴重な方々。想像するに、昔の文豪が原稿用紙に万年筆で書いている“あのシーン”のような、創作に行き詰まると、原稿用紙をぐしゃぐしゃぐしゃー!なんてしたり、しているのでしょうか。

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【アンケート回答から】
「3〜7割を手書きし、間を埋めて一本の話にするときにキーボードで入力」by ササクラ さん

「キーボードで進まない時は手書きです」by 神尾あるみさん

「基本PC。詰まったらノートとペンで手書き→PC入力」by nuiさん

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「キーボード打ち込み」と「手書き」の合わせ技という方、さらには「スマホのフリック入力」という方も!打ち込みでに煮詰まった時に、手書きにシフトするという途中のギアチェンジなる創作方法をしている方も複数いました。もしかしたら、アイデアや創作の引き出し方として「手書き」はある種効果的な役割なのかもしれません・・。


Q. 原稿執筆前にプロットや構成を作る場合、どのように作成しますか?


複雑なストーリーや伏線が肝とされる小説は、プロットと呼ばれるストーリーの筋書きや要約が最初に作られることが多いそうです。小説原稿そのものは「キーボード打ち込み」という回答が圧倒的に多かったのですが、それにいたる構想段階では?ということで、結果を見てみると…

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こちらは、なんと「手書き」が半数以上の138名を占めるという結果に!続けて、「キーボード打ち込み」83名「そのほか」50名という結果になりました。小説で最も重要ともいえるストーリー作り。その前段階であるプロットでは、なぜか「手書き」派が多くなりました。

手書き派からはこんな意見が…

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【アンケート回答から】
手書で概要を掴み、それを執筆用のツールに転記して構成を再検討する」 by 鷹山悠さん

ぐちゃぐちゃな段階では手書き、だいたいできあがって控えが要る段階になったらエクセル」 by 鈴木輝一郎さん

「基本はPC、頭が混乱したときはアナログでノートや紙にまとめます」by ねこまんじゅう

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全体像を把握した上で、具体的な制作に取り掛かるという「手書き」派は、まず手書きで概要をつかんでいるんだとか。「手書き」(モヤモヤを形に)→ 「打ち込み」(清書)ということなのでしょうか…。ここにきて、急に手書きが圧倒的に多くなる理由、気になりますね。

ちなみに、「そのほか」と答えた方の中で多かったのが「そもそもプロットを作らない」という回答も。

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【アンケート回答から】
「脳内」 by 匿名

「脳内でやるので書かない、うたない(出すと書かなくなる)」 by  秋月蓮華さん

「中編・長編は手書き。短編・掌編はキーボード」 by  はやくもよいち

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プロットを書かないで脳内でストーリー構成ができてしまうという天才肌の方もいれば、創作の妨げになるのであえて書かないという選択的決断をしている人も。また、小説の長さによってもプロットを必要とする、しないが出てくるようです。なるほど、興味深いですね。確かに、超大作になればなるほど、話の伏線や前後関係、登場人物の相関関係など複雑になってくるはず。プロットを手書きして、全体像を把握するというのが長編には必要不可欠だと考察できます。

ちなみに、ストーリー構成のもっと上流にさかのぼり、こんな質問をしてみると。

Q プロットに至るまでのアイデアなどはどのように詰めていきますか?

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さらに「手書き」派が増え、7割を超える人が「手書き」によるアイデア出しを行なっているという結果になりました。創作段階の上流に登れば登るほど、「手書き」が増えるというここまでの結果。なぜなのか!気になります…。


じゃあなぜ、手書きなのか?


なぜ、小説原稿そのものは「キーボード打ち込み」なのに、アイデアや構想段階、ストーリー構成は「手書き」になるのか、その理由もお答えいただきました。

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【アンケート回答から】
①創作の妨げにならない/スピードが出る
「キーボードの場合は「考える→頭の中で文章化する→キーボード上でキーの位置を(ほぼ無意識にですが)探す→打つ→変換→確定」という手順数なのに対し、手書きだと頭に浮かんだ内容をダイレクトに出力できるので、考えながら出力していく時には手書きの方が効率的に感じます。また手書きの場合、机一杯にノートやメモを広げて作業ができるので(モニターとは比べ物にならない広さ)、既に書いた内容を参照したり直したりしながら書くにも都合がいいと感じています」   by 峰守ひろかず さん

「PCは電源を入れて、立ち上がるのを待って、クリックいっぱいして……って感じで時間がかかるから。手書きだと数秒で文字に残せます」  byエリーさん

「アイデアが出た時点で忘れないようにメモしたい。スマホやPCの起動を待っていられない」  by 匿名さん

「何も考えずにアイディアをがーっと羅列するには手書きの方が勢いがつくため」  by 雪さん
②視覚的に把握できる
「アイデア、プロット、人物などはチャート図を作って構造を考えたりするので」by 横井けいさん

「アイディアの時点では登場人物の見た目を絵にしたいのと矢印などで好き勝手に書き足したいため手書きにしています」 by まりあさん

③全体を俯瞰して、整理する
ノートに手書きする方が全体像が目に入るので、手書きでプロットを書きます。更に付け加えたい事は付箋など使って増やしたり減らしたりできるのでノートに手書きします」  by 華彌さん

「ある程度まとまってくるまでは時系列もバラバラなので、思い付きで書きつらね、矢印を引いて繋いだりできて、一枚で書ける紙がいい」 by 坂野真夢さん

「アイディアをまとめる際に、矢印や丸印などをよく使う。手書きの方が後で読み返したときにどういう経緯でそうなったか、頭の中が整理しやすい」  by 朝永ゆうりさん
④偶発的なアイデアに出会う
「マインドマップのようなものを自由に書き散らすのと、ページをパラパラやって過去に捨てたアイデアが目に入るといった偶発性が期待できるため」 by 涼雨零音さん
⑤自由な創作ができる
「文字サイズや配置が自由で、重要度や関係性の整理に囲みなどの装飾や線による繋ぎをしやすく、変更の軌跡を後で確認出来て別バージョンを組みやすいから」  by 髙津央さん

「アイデアの発想などは手書きの方が頭の回転が良くなるし、紙とペンの摩擦の感触が妙に良い。それに手書きだと自由に書ける気がして、自分の世界が少し広くなった感じがする」  by 木下草子さん

アイデアとなる最初の「種」はこねくり回したいので。マインドマップみたいに物語に含めたいことをちりばめていくため、自由に文字をあっちこっちに入れられる方が楽に感じます」  by しま。さん

「アイデア出し&構成の段階では、手書きのほうが自由度が高く、思考が制限されない感じがあります。キーボードは窮屈です。手書きじゃなかったらたぶん、物語をまとめるのにとても時間がかかります。原稿本文も、キーボード打ち込みで進まないな……というとき、手書きに切り替えると思考が文字に変換されやすいので」by 神尾あるみさん
⑥言葉選びに影響する
キーボードを通して出てくる言葉と、手を通して出てくる言葉のニュアンスが私自身の場合は違うように思うためです。手から出る言葉が欲しい時と、キーボードを通した言葉が欲しい時があります。キーボードを通したいときは浮かぶ言葉を留める速度が欲しい時です。原稿以前の段階、試行錯誤では、手からが多いです。手書きは物語の核のようなものと「対話」している気がします」 by 冬森灯さん

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さまざまな意見が出ましたね。「思考の邪魔をしない」「俯瞰して整理する」など創作する際に頭の中で考え、組み立て、整理するという手順にどうやら手書きが大きく関係しているようです。



手書きのおともは…どんな筆記具?


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手書きには欠かせない筆記具ですが、みなさん何を使っているんでしょう。
1番多かった回答は「ボールペン」(89名)、続いて「シャープペン」(82名)そして、「万年筆」(31名)「鉛筆」(15名)という結果でした。

シャー研部員としては、シャープペンがなかなかいい健闘を見せてくれているじゃないかっ!と嬉しい限りなのですが、みなさん意外といろんなもので創作されているんですね。万年筆なんかも、書斎のテーブルに向かって書き込む姿が、いかにも“小説家”という感じで創作シーンが目に浮かびます。
ちなみに「そのほか」とお答えいただいた方では、「全芯色鉛筆」という回答をされた方も!「視覚的に創作する=描く」ということで、画材を持ち出すのもなかなか興味深いです。


気になる、小説家愛用のシャープペンとは?


そしてやっぱり気になってしまうのが、小説家のみなさんがどんなシャープペンを普段使っているのか、です。普段から愛用して、創作の苦楽をともにしている相棒とも言える一本とそのシャープペンを選ぶ理由とともに教えてもらいました。

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【アンケート回答から】
ぺんてる/GRAPHGEAR 500
「高校から使用しているので、安定感がある。漫画絵を描くときや、仕事でも用いている」 by  mamec.さん

ぺんてる/オレンズ 0.2
「イラストを描くときはこれがいちばん描きやすいからです」 by  いぬじゅんさん

ぺんてる/TUFF
「太軸でグリップがしっかりしている0.7mmシャーペンではワンandオンリーだから、一生使いたいです」 by 匿名さん

■トンボ鉛筆/モノグラフ・モノグラフマルチ
「見た目がかわいく、本体が細身で持ち手が硬いところが書きやすいです」 by モジコさん

■三菱鉛筆️/クルトガ
「量を書くので快適なのがいいと思って」by いつきさん

■パイロットコーポレーション/ドクターグリップ
「疲れにくいから」 by 鷹山悠さん

■パイロットコーポレーション/モーグルエアー
「フォルムが可愛い」 by 道裏星花さん

■パイロットコーポレーション/フレフレ オプト
「学生の頃から愛用していて使いやすいから」 by カンナさん

■ゼブラ/フルレ
「かわいいから」  by きり。さん

■ゼブラ/デルガード
「芯が自動で出てくる+芯が折れない」 by 匿名さん

■銀座伊東屋/オリジナルモデルシャープペン
「無印良品を愛用していた際に、なぜかお気に入りが廃盤になることが多々あり、廃盤に泣かされたので」  by めめたんさん

■ロットリング/rOtring
「自分の指にあうので書きやすいから」  by ひらりさん


ザッと見てみますと、シャープペン派の最重要ポイントはやっぱり「書き心地」。長編ともなると、手書きで構想を練る時間も長そうなので、長時間握っても手が疲れない、書きやすいことは大事なポイントなのでしょうか。その辺りの理由とともに、複数の方から根強い人気があるのがドクターグリップ(パイロット)など。確かにグリップ、グニグニしていて疲れにくいですよね。

さらに、シャープペン愛用者の多くがいわゆる「折れないシャープペン」を愛用中ということが発覚!クルトガ(三菱鉛筆)デルガード(ゼブラ)オレンズ(ぺんてる)など、書いていて芯がポキっ…なんてことがない安心感のあるものが小説家の方々には人気のようです。


思考も創作も邪魔しない、それが“シャープペン”だ!


シャープペンを使う小説家の方に聞いてみると、書きやすさ、快適さが求められているのだと良くわかります。最後に、シャープペンを愛する方々に、なぜシャープペンを使い続けるのか理由を聞いてみました。


Q.シャープペンを使う理由はなぜですか?

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【アンケート回答から】
「消しゴムで消せる上、削ったりしなくても長く書き続けられるから」by 峰守ひろかずさん

「インクと違って、ちょっと薄く頼りない色合いが、「好きに書いてどうぞ」と、言われているようで心地よいです」 by  モジコさん

「いちばん手に馴染んでるから。気に入ってる文房具使うとちょっとテンションも上がる」  by いつきさん

「修正や書き直しの必要がある時、消して書き直しがきくから。紙のムダ遣いにもならずにエコ」   by 日暮ミミさん

「ペン先の細さが一定で書くことに集中できる。書いて消してができる」 by とし総子さん

「とにかくドンドン書くにはシャープペンが一番早いから。落書きでイメージを固めるには、イメージにあった筆記具が必要なので」  by  三月やよいさん

「維持費が安い(シャー芯はお安い)」  by  さとみ桜さん

「自分の字が1番綺麗に見えてテンションが上がる」 by 匿名さん

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なんといっても愛用されている1番の理由は「消しゴムで消せるから」。構想段階ですから、そりゃあ書いては消して、また書いては消す、を繰り返す。そんな小説家の方々の産みの苦しみに寄り添ってくれるのは、何度でも書き直せるシャープペンがちょうどいいのでしょうね。今をときめく小説家のみなさんもシャープペンでガリガリと机に向かって勉強した頃の思い出が染み付いているのか、「馴染みがある」と回答した方も多かったです。さらに、シャープペン特有のスラスラとかける筆記感や芯を削らなくていい(ノックすれば出てくる)、一定の筆記の太さなどが創作する人にとって安心感を与えているのだと思われます。

昨今、デジタル化や高機能筆記具の登場で、大人になったら手書きの素朴感やシャープペンのあの書き心地を忘れちゃってるんじゃないの?と寂しい気持ちもありましたが、手書きはクリエイティブには欠かせない要素なのだと確信しました。そして、やっぱり手に馴染む相棒としてシャープペンの根強い人気を実感した調査でもありました。

シャー研部ではこの結果を受けて、さらなる深掘りをしてみよう!と構想中です。
例えば、実際に小説家さんにお話を聞きにいったりとか…?創作の現場や愛用する筆記具を見せてもらって、シャープペンと創作には一体どんな相関関係があるのか!?などなど…

乞うご期待ください。それでは、また!

--- 調査概要 ---
期間 :2020年12月1日〜12月15日
対象 :小説家(プロアマ問わず)
運営 :ポプラ社&ぺんてる