見出し画像

読書感想文〜いまさら読んだ「深夜特急」〜

何となく読みそびれてしまった本、というのが誰にでもあると思う。
話題になっていたり、人に勧められたり、気になっていたのに
きっかけが掴めずに読まなかった本。

この度、沢木耕太郎「深夜特急」を読んだ。
バックパックを担いでいた頃は
この人の見方で旅をしてしまう気がしてずっと読めなかったけれど
さすがにもう解禁というわけで。



1巻「香港、マカオ」をUnlimitedで読んで、香港の熱気に圧倒された。
そうか、これが、「深夜特急」かあ。

我がタイが舞台なら2巻も読まないわけにはいかないと、わくわくして
読んでみたのだが。。。

残念ながら作者は、タイには心惹かれなかったようなのだ。
バンコクだけでなく、南部タイにも、マレーシアにもシンガポールにも
作者の心は動かない。
不完全燃焼な思いを抱えてマレー半島を南下しタイ南部、ペナン、KL、
シンガポールへと旅は続く。
私の心も1巻の熱量とのギャップでモヤモヤする。
(ペナンの娼館の話は、彼の地で似たような安ホテルに泊まったことがあるので
ちょっと面白かった)

そして、本の最後で謎が解ける。
作者は過ぎてきた街々に香港のコピーを求めていたのだと気づく。
香港の熱狂をもう一度味わいたくて、香港を探しすぎて
それぞれの街の顔を見ることができなかったのだ、と。

そうだよなあ。70年代。
まだ中国復帰の影さえない香港なら
さぞ いかがわしくて、妖しくて、エネルギーに満ちていたことだろう。
それに比べたら、タイもマレーシアも眠っているみたいに見えたに違いない。

しかし、当然のことながら、シンガポールはシンガポールであって香港ではなく、東南アジアの他のどんな街にしても香港ではありえないのだ。本来まったく異なる性格を持っているはずの街で、愚かにも香港の幻影ばかり追い求めていた。香港とは別の楽しみ方が発見できていさえすれば、バンコクも、クアラルンプールも、このシンガポールも、もっともっと刺激的な日々を過ごすことができたのかもしれない。だが、すべてはもう手遅れだ。人生と同じように、旅もまた二度と同じことをやり直すわけにはいかないのだから……。    
                「深夜特急2 マレー半島 シンガポール」

うーん、ちょっと残念。

70年代のバンコクは
東洋のベニスと呼ばれた運河の街か、
オート三輪 トゥクトゥクが爆走する街か、
聖と俗が交錯する妖しい街か。

原っぱの中に小屋がぽつんとあったという、かつてのドンムアン空港。
80年代には既に伝説になっていた、中華街の楽宮ホテルやジュライホテル。
夕方になると、地方からの出稼ぎ労働者で埋め尽くされた中央駅前の広場。

彼の眼にどう映ったのか、もっと知りたかったと思ってしまった。





そして。
香港の幻影を振り払うために彼は、次の目的地を『カルカッタ』と宣言する。

うわー、ダメ。そこ、行っちゃう!?
記念すべき、私のインド第一歩の街。
80年代に数多のバックパッカー達が“沈没”したカルカッタ(コルカタ)。
良い街だったよなあ。
いい加減で無関心で、とにかくムカつく事だらけだったけど
最高に好きだった街。

ああ、これは読まないわけにはいかない。。。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?