76.数字マジック
小学4年生か5年生の頃の話です。
算数の授業で先生が嬉しそうな声で言いました。
「この間、すごくいいチラシを見ました!」
僕たちが、百分率の項で、割引計算を教えてもらっていたときの発言です。
話を聞いてみると、新聞の折り込みチラシに、割引計算に打ってつけの内容のチラシがあったとのことです。
「スーパーのお野菜が、タイムセールで割引になる、という記載が工夫を凝らして書いてありました!」
先生は大きな発見をしたかのように続けました。
「チラシには、50%割引+50%割引、と書いてありました。すごくいい表現方法じゃないですか。」
当時10歳かそこらの僕は、瞬時に思いました。
(なんだ、75%割引の言い方を変えているだけじゃないか。)
先生はやはり興奮した様子で、50%割引と50%割引だからといって100%割引ではない旨と、一度半額にしたものを更に半額にしているから、結果として75%割引になる旨を、時間をかけて説明してくれました。
僕はおそらく算数が得意だったのだと思います。
頭の中で、簡単に式が出来上がり、割引計算なんて軽々とやってのけました。
しかし、人生は思った通りには進みません。
僕はバリバリの文系だし、数学はおろか、今となっては算数も苦手です。
脳みそというのは、使っていないとすぐに廃れていってしまうものなのでしょう。
「算数なんて、電卓があるんだから、何とかなるでしょ。」
そんな風に舐めている方もいるかと思いますが、いざ「算数ができない」に直面すると思いのほか、モヤモヤとします。
日常生活の中で言うと、本やネット記事なんかを読んでいると「50%割引+50%割引」っぽいことがちらほらと出てきます。
例えば、数年前に「お金2.0」という本を読んでいたとき。
世界経済で言うと、上位1%の富裕層が世界全体の富の48%を所有しており、「上位80人」と「下位35億人」の所得がほぼ同じだとされています。
1度読んで、「何やら難しい数学の問題を読んでいるようだ、、」と頭を悩ませ、2度読んで、「いや、待てよ。これは数学と言うより、算数に近いんじゃないか」と、少し親近感を覚え、3度読んでようやく、「富裕層スゲー!!!」に辿り着きました。
数か月前、ある新書を読んでいたとき。
どの国にも犯罪を繰り返す者が一定数存在することがわかっている。それは国によってばらつきがあるが、およそ人口の数%である。そして驚いたことに、この少数の者が、なんと世の中の全犯罪の6割以上に関与しているのである。
僕は、はっきりと「50%割引+50%割引」っぽいことだと、わかりました。でも、わかったのはそれだけでした。文章が頭にまったく入ってこない。「悪い奴は、やっぱり悪いんだ!」何度か読んで頭に残ったのは、そんな感覚だけでした。
さらに別の本を読んでいるとき。
ソーシャルゲームでは、無料で遊べるタイプでも、全体の3%が課金をして、さらにその中の上位10%で全体の売り上げの50%を占めるといったことが普通に起こる。
どうやらこういった構図をパレートの法則と言うらしい。
何やら楽しそうな法則だ、なんて思ってしまったのは単にパレードを連想したからなのだと思います。もはや数字どうこうは、全く頭に入ってきませんでした。
やはり僕は、数字を追っていると、頭の働きが鈍くなってしまうようです。
ニューノーマルな世の中では、毎日いろんな数字が報告されます。
「新規感染者数」「重症者数」「死亡数」「ワクチン接種数」「PCR検査人数」「変異株の割合」
そのほかにもたくさんのデータが日々更新されていきます。
地域別、国別、都道府県別、年齢別、曜日別。
「感染者数」ひとつとっても、様々なセグメントに分けて管理されています。
僕にはもう何が何やらわからなくなってきます。
データが多い上に、単なる数学や算数ではなく、一人一人の人生に関わる数値です。
ゴールデンウイークが始まりました。
思えば昨年のゴールデンウイークもステイホームをし、柄にもないと思っていた料理を始めました。今でも継続して料理はしています。
僕だけかもしれませんが、いろんな数字を追っていると、「外に出て遊ぼう!!」という気持ちが失せて、ステイホーム日和になります。数字マジックですね。
家の中には、まだまだ楽しいことがある!
そう信じて、僕と妻は、今年のゴールデンウイークもステイホームです。
今年は、算数のドリルでもやってみようかな。
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