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「ユーザーに価格を聞いてはいけない?」ユーザーリサーチと価格受容性調査【UXとマーケティングの関係】

UXデザインの仕事をしていると、商品やサービスの「適正価格を知りたい」というご依頼をいただくことがあります。

ユーザーリサーチの教えでは「いくら払うか?ユーザーに聞いてはいけない。」とされていますが、サービス体験設計では、ユーザーにとっても価値と対価のバランスは大事です。

ニーズに応えるには、どのようなアプローチがあるのでしょうか?

なぜ、ユーザーに価格を聞いてはいけないのか?

下記のような質問をユーザーにするとします。

例)
「この商品が500円なら買いますか?」
「このサービスは使いやすいですか?」

「具体的な金額」「使いやすいか?」など、Yes/Noで回答する聞き方は、単純質問(Closed Question)と言われ

例)
Q. 「この商品が500円なら買いますか?」
A1.「500円なら買う」(550円でも買うけど)
A2.「500円は高い」(高いとは思うけど、実際には買う)

ユーザーの心の中では、許容する価格帯、例えば500円±50円 (450円〜550円ならまあ買ってもいいかも)の幅を持っているとされ、価格提示のような単純質問では、その奥にある許容範囲までは深堀できないとされています。

サービスの価値検証でも

例)
Q.「このサービスは使いやすいですか?」
A1.「使いやすい」(けど、毎日は使わない)
A2.「使いやすくはない」(けど、あったら使うかも)

ユーザーの心の奥底にある心理まではわからないとされています。

解決アプローチのひとつとして、マーケティング手法のひとつに”受容性調査”というものがあります。

受容性調査とは?

ユーザーが商品やサービスに対してどのようなイメージで受け入れているのか調べる調査。

受容性調査の例
「こんなサービスがあったらどう思いますか?」<コンセプトテスト>
「プロトタイプを触ってみてどう感じますか?」<プロトタイプテスト>
「この価格帯で購入したいと思いますか?」<価格受容性調査>

この中でも”価格受容性調査”は、マーケティングミックス(4P)のプラインシング戦略(価格戦略)で活用されることも多いです。

ハイブランド戦略かコスパ重視かなど、商品/サービスの相場観と市場でのポジショニングでも価格設定は変わってきます。

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価格受容性調査

受容性調査のひとつに「価格受容性調査」があり、主に2種類の分析手法があります。

PSM分析: Price Sensitivity Measurement(価格感度測定)
消費者が許容できる価格帯を見つけることを目的とした分析手法。
特徴: 価格帯を把握できるので、商品/サービスの価格設定がしやすい。

CVM分析: Contingent Valuation Method(仮想評価法)
設定した価格で、どの程度購入率が変動するかを調査する分析手法。
特徴: 各価格帯での購入率変化を測るので、売上予測しやすい。
 

こちらの手法で単純質問ではわからなかったユーザーの価格に対する"許容範囲"を探ることができるとされています。

分析精度は「どういう人に聞くか?」調査対象ユーザーのリクルーティングによって影響を大きく受ける手法でもあります。

まとめ


商品/サービスの「適正価格(許容価格)を知りたい」時のアプローチについてでした。

ただし「価格をどう感じるか?」は、そのユーザーの背景や価値観によっても異なるので、無作為に調査してもうまくいかないのが注意点です。

次回は、実際の価格受容性調査の基本のやり方と、リアルプロダクト分野で進化してきたマーケティング手法に、動的なデジタル分野でのユーザーリサーチ手法を加えると、さらに精度を上げることができるのではないか?について記述したいと思います。


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