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「知らないって、簡単に捨てないでよかった」新しいものに出会い、人生が変わる不思議



次の日、マレーシアの明るい太陽のもと車を走らせ、教えられた住所にむかうと、ドアにはアート教室の時間割が書かれたメッセージボードが引っ掛けられていた。

ヨガスタジオと思っていたから、本当にここかと、おそるおそるドアを開ける。

白い壁には作品が飾られ、画材や本が入った棚があった。隙間を埋めるように、絵の具、ペン立てや筆があふれていた。

「Morning, Amy」と、羊毛のマットの上に座るドミニクが、私に気づいて手をあげる。「Hi」ぎこちなく笑顔を作って挨拶する。

立て掛けられたキャンバスに囲まれて、マットを敷く。

前に座るドミニクは、プリントを手に持ち、ブツブツと何かを呟いていた。いつもの彼女と違い、白の上下を着てターバンを巻いている。真剣な様子に、話しかけるのがはばかられた。

マレーシアによくあるのだけれど、天井には大きなファンがあって、その風が涼しい。窓の外には緑の葉がしげる。午前中の光は明るく、白い部屋の中を照らしていた。

私は、それらしく足を開き、体を伸ばすふりを始めた。本気でやってるわけではない。ヨガとは、そういうことをするものだろう、と思っただけだ。

何にもしないと、いかにもやる気がなさそうで申し訳ない、と気をまわした結果。そもそも、何がストレッチなのかもわかってない初心者なのだ。



<続く>


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