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འབྲོག་པའི་འཚོ་བ་བཤད་པ། 遊牧民の生活について

チベットは大きく分けて、ウツァン、カム、アムドという三つの地域で分かれています。
私は普段「ラサ方言」(ウツァンや亡命チベット社会で話されている言葉)を勉強しています。
最近は「アムド方言」の勉強も始め、アムド口語の教科書をひょんなことから手に入れましたので、訳してみました。
※私は専門家ではありませんので、訳は正しくありません。参考程度でお読みいただければと思います。

訳したテーマは「遊牧民の生活について」。
漢民族がチベット民族にインタビューをしているようなシーン。

ここで大活躍となったのが、「チベット牧畜文化辞典」です。

チベットでは昔から牧畜によって生活が営まれてきました。
(牧畜をしない地域もあります)
そこで、牧畜に関する語彙収集プロジェクトの研究成果として発表されたのが、この辞典。

文化人類学や、そのほかの学問から見ても、大変貴重な資料であることは間違いありません。
研究者の方々、本当にこんな素晴らしい辞書を作っていただきありがとうございます…!
辞書ファンの私にとって、今一番"推し"の辞書はこれです。絶対。

「チベット牧畜文化辞典」は下記からぜひ見てみてください。
私は書籍版を利用していますが、アプリが一番手軽ですね。
※ iOSアプリ版
https://apps.apple.com/jp/app/nomadic/id1315312197
※ Web版
https://nomadic.aa-ken.jp/search/

牧畜関係の語彙は、本当に豊富です。
アプリでたくさん出ているような、普通のチベット語辞典では絶対に載っていません。
例えば、ཏཱ་ལེན(タレン、両袖袋)とか、普通の辞書に載っていないです。
それがこの辞書だと、写真付きでわかる!!
大感謝…

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འབྲོག་པའི་འཚོ་བ་བཤད་པ།
遊牧民の生活について

འབྲོག་པའི་ཚོ་བ་ཆི་མོ་ཟིག་རེད། རྒྱ་ནང་ང་ཨེ་འདྲ་གི
遊牧民の生活はどんなものですか?中国内地と似ていますか?

འབྲོག་པ་གི་ལས་ཀ་ཟོག་འཚོ་རྒྱུའོ་ཡིན་ནོ་གིས།
遊牧民の生業は放牧なので、
ས་ཆ་ཁ་མ་གཅིག་ནས་ཁང་བ་ཧུག(ཕུབས)ནས་བསྡད་ན་ཆོག་ནི་མ་རེད།
ひとつの場所に家を建てて暮らすことはできません。
རྩྭ་ཆུ་ཡོད་ས་དེད་ལས་རུ་བཀལ་ཡས་མཚེར་སོར(སྤོར)རས་འགྱོ་དགོ་ནི་རེད།
草や水のある場所を求めて、ひとつの場所に留まることなく、一時的な住まいに布を敷いて暮らすようなものです。
དེའི་སྟབས་གིས་ད་ཟ་རྒྱུ་གོན་རྒྱུ་ར་གཞི་ཅ་ལག་ཚང་མ་རྒྱ་ནང་གཉིས་ཀ་མི་འདྲ་གི་འགྱོ་ལུགས་འདུག་སྲོལ་ར་ཁེར་རེ་ཟིག་ཡོད་གི
したがって、食べもの、着るもの、場所、その他のものすべてが中国内地のそれとは異なった生活習慣があるのです。

དེས་ན་ཁྱོས་ངའ་ངོ་སྤྲོད་ཟིག་བྱོས་ར།
では、私に紹介してくださいますか。
ཡ་ཆོག་གི
はい、いいですよ。

འབྲོག་པ་གི་ཟ་མ་གཙོ་བོ་སྐམ་ལུག་གི་ཤ་ར་རྩམ་པ་ར་མར་ཆུ་ར་ཡིན།
遊牧民の主な食べ物は、干した羊肉、ツァンパ、バター、チーズです。
འཐུང་རྒྱུའོ་ཞོ་འོ་མ་ར་ཇ་དཀར་རོ་ཡིན།
飲み物は、ヨーグルト、ミルク、ミルク茶です。
གོ་རེ་ར་འབྲས་ར་ཡོད།
パンや米もあります。

གོན་རྒྱུ་མ་ཁ(གཙོ་བོ)སྩོག(སློག)པ་ཚ་རུ་རེད།
着るものは主に、羊皮のチュバとツァル衣です。
འབྲོག་པའི་སྩོག་པ་ཉིན་དཀར་སྐེ་རགས་བཅིངའ་བཏང་ན་གོན་རྒྱུ་ར་ནུབ་མོ་སྐེ་རགས་བཤིག(བཀྲོལ)བཏང་རས(དུས)ཐ་ཚོ་ཉལ་ཐུལ་གི་ཁ་མ་རེད།
遊牧民の皮衣は、昼間は帯で結んで(着れば)着るものになりますし、夜に帯をほどけば掛け布団の代わりになります。
བོད་ཀྱི་ཉལ་ཐུལ་རྒྱབ་ན་ཡོད། རྒྱ་གི་ཉལ་ཐུལ་ཁྱིམ་ན་ཡོད་ཟེར་ནོ་གཏམ་དཔེ་ཟིག་ཡོད་ག
「チベットの布団は背中にある。中国の布団は家の中にある。」ということわざもあります。

གཞི་ཅ་ལག་ར་འབྲོག་ཕྱོགས་ག་དགོ་ནོ་ཐག་འབྲེང་སྲབ་མཐུར་འདྲ་འདྲ།
身の回りのものも、遊牧地域に必要な、デン(ヤク皮で作った紐)やサプトゥル(頭絡。馬の頭部に取り付ける馬具)、
བ་མ་ཁོལ་མོ་འདྲ་འདྲ།
ワマ(鍋)、コルモ(ふいご。火力を強めるための送風装置)、
ཟངས་ང་ལྕགས་སྒྱེད་ཟེར་ནི།
ザンガ(大人数の食事を作るための大きな鍋)、チャクゲー(鉄製ストーブ)、
ཏཱ་ལེན་ག་མོ་ཟེར་ནི། དེ་མོ་མང་ནི་རེད།
タレン(両袖袋。馬やバイクに掛けて、両側に物を入れられる)など、
そういったものがたくさんあります。

དེ་མིན་ནས་ད་ཁྱིམ་གི་འདུག་སྲོལ་ར་ཅིག་ག་འགྱོ་སྲོལ། བཟའ་ཚང་གི་བསྒྲིགའ་སྲོལ།
その他、生活様式、移動手段、結婚のしきたり、
ཚང་མ་རྒྱ་ནང་གི་ལུགས་སྲོལ་དྲ་གཉིས་ཀ་མི་འདྲ་གི
すべてが中国内地の伝統文化と異なっています。
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ちなみにこのアムド方言の教科書ですが、チベット人の友人いわく、
漢族の政府関係者がアムド方言を勉強するための教科書なのだそう。
真偽はいかに…
1989年出版の草稿版?と、2001年出版のものをたまたま手に入れられました。

この単元だけしか両方を比べられていないのですが、
変更された箇所はないようです。
つづり間違いが一個2001年版で増えてたくらい…(あれっ)

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