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22.そしてアルコール依存の果てに

AAのハンドブックの「第三章 さらにアルコホリズムについて」で次のように書かれてある。
「私たちアルコホーリクは、飲酒をコントロールする力をなくした。本物のアルコホーリクは、決して飲酒に対するコントロールを取り戻すことはない。(中略)飲むことにコントロールをなくしている人が、回れ右をして紳士のように飲むようになったら、私たちは彼に脱帽しよう。確かに私たちも、辛すぎるくらい辛い努力を、たっぷりと、長い間くり返したのだ。」
私はこの定説を覆したい。
私は今、飲酒している。ただ、以前に比べたらかなり控えめであるが・・・。しかも睡眠薬や精神安定剤も飲んでいて、言い方を変えれば薬物でアルコールの酔いを増強させている。しかし、最期の入院以来、問題飲酒をしたことはない。
飲酒したいという強い欲望はあるが、強迫感はない。家には常に酒を用意しておかないと落ちつかないといった気分や他のことなら外出が面倒に感じる状況でも酒を入手するためなら積極的に出かけるなどの行動も一切無い。また今日は飲酒をせずに過ごそうと思えば大した努力もなく出来る。飲酒の開始、終了、あるいは使用量に関して、摂取行動を統制することも可能だ。今日はやめておこうと思ったら飲酒を止めることは出来る。また、今日はビール3本までと決めたらそれ以上飲もうとは思わない。「一杯だけ」と決めたらそれ以上飲まなくなった。使用を中止もしくは減量したときの生理学的離脱状態はあるにはあるが、それは後遺症のようなものだと思っている。多汗症な体質はあるが、それはアルコールとは関係ない。普段から平穏な暮らしを心がけているが、やはり凡人なのでイライラして落ちつかないこともある。それはアルコールが切れてきた時ではなく、一般的に普通の人が自分の思い通りにならなくてイライラしている事象と変わりない。かつてと同じ量では酔わなくなることはあるが、だからと言って酒量を増やそうとは思わない。そういう酔いであれば、本当はやってはいけないが向精神薬が補助してくれる。つまり、酔っ払う前に寝てしまうのである。寝起きの時の迎え酒はあるが、これが不味い。だから飲みかけのアルコールなら捨ててしまう。アルコールのために、それにかわる楽しみや興味を次第に無視するようになり、アルコールを摂取せざるを得ない時間や、その効果からの回復に要する時間が延長することなど一切ない。目覚めたらまっすぐ素面の頭でパソコンへ向かう。飲酒しているより、メールのチェックやサイトの更新のほうが私にとっては有意義な活動になったからだ。アルコールに関連する心身の問題や経済的な問題は抱えている。睡眠障害やうつ、不安神経症はアルコール依存症になる前から抱えている。また経済問題は財布に余裕がなく、その分アルコールが摂取できないというだけである。つけをしてまで飲もうとは思わない。
体質が変わってしまったのかもしれないが、今はアルコールの「酔い」はあまり求めなくなっている。それは普段からストレスを避け、あったとしても対処法があるからだ。また、インターネットの普及は私から「孤独感」を無くしてくれた。依存という観点からいえば以前はアルコールに依存していた分、今はネットに依存している。おそらくネット依存症なのだろう。
インターネット依存症は1997年にイヴァン・ゴールドバーグによって理論づけられた障害である。賭博依存症と比較することで、DSM-Ⅳ(精神障害の診断と統計の手引き)で診断される。しかし、インターネット依存症は実際の障害ではなく、これをDSM-Vの精神障害として分類するべきではないとする主張も強い。
満足感を得るために、インターネットに非常に長い時間ふれている必要があるという点は確かにある。常にネットに接続していたいのである。禁断症状のようなものもあるかもしれない。メールが気になる。SNSのコメントが気になる。自分が運営しているサイトの接続数が気になる・・・etc。だが、ネットによって生活破綻はしていない。だからこれが病的かどうかは今のところわからない。
アルコールはドラッグではあるが、良いヤツである。ただ、付き合い方を間違えると私のようになってしまうのだろう。アルコール依存症者の平均寿命は50歳代前半と言われている。中川元財務大臣は56歳だった。アルコール依存症になってからおおよそ20年前後で死亡する例が普通であるとされる。アルコール依存症に罹るとほとんどすべての身体疾患、肝臓、心臓、すい臓、胃腸、脳、末梢神経などがダメージを受ける。精神疾患にはアルコール性うつ病がある。臓器の慢性疾患が進行することにより死に至る。また事故死や自殺による死亡例も多い。私がアルコール依存症になったのは31歳の時である。そして今は43歳。内科の主治医からアルコール性脂肪肝と言われている。肝臓に脂肪が蓄積され、放置すると肝硬変、肝臓癌へと進む危険を持つ。自覚症状はほとんどない。いずれ肝硬変、肝臓癌になる可能性が高い。残りに人生は8年ほどだ。今は病的な飲酒はしていないが、断酒もやっていない。ある意味紳士のように飲んでいる。だがアルコール依存症であることは確かで、治癒したとは思っていない。アルコール依存症は進行性の病気であることは確かだろう。着実に私の体は蝕まれている。死期はそう遠くないだろう。その前に私の経験を記録しておきたかった。

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