見出し画像

4/28 【ぐっしょり濡れた枕が、本心を物語っている。】

前々からずっと行きたいと思っていた、鹿児島は知覧にある特攻平和会館へ行ってきた。

 私たちは、特攻隊員や各地の戦場で戦死された多くの特攻隊員のご遺徳を静かに回顧しながら、再び戦闘機に爆弾を装着し敵の艦船に体当たりをするという命の尊さ・尊厳を無視した戦法は絶対とってはならない、また、このような悲劇を生み出す戦争も起こしてはならないという情念で、貴重な遺品や資料をご遺族の方々のご理解ご協力と、関係者の方々のご尽力によって展示しています。

 特攻隊員達が二度と帰ることのない「必死」の出撃に臨んで念じたことは、再びこの国に平和と繁栄が甦ることであったろうと思います。

 この地が出撃基地であったことから、特攻戦死された隊員の当時の真の姿、遺品、記録を後世に残し、恒久の平和を祈念することが基地住民の責務であろうと信じ、ここに知覧特攻平和会館を建設した次第であります。

知覧特攻平和会館 HPより引用


館内は撮影禁止で、その様子が外に漏れることはほとんどなく(僕が訪れた時はインバウンドの影響で外国人観光客が多く、ルールを守らない一部外国人の方が撮影していたのは非常に残念だった。他言語の注意書きが必要と思う。)想像を膨らませて現地へ向かったのだが、そこにあったのは、想像以上の特攻というものの凄惨さと、隊員たちの決死の覚悟だった。


まず、遺影ともいうべき隊員たちの写真の数の多さに絶句してしまう。笑顔の人もいれば、凛々しい顔で写る人もいて、表情豊かなその顔からは、これから死んでいくとは想像もつかない。ある意味、死が確定している中で笑顔になれる自信が僕にはない。お国のためと本気で思っているのか、国のために死ねるなら本望とも思っているのか、それは当時の彼らにしか分からない。

dear nipponn様 ブログより拝借


そしてその写真の下には、遺書や遺品、遺筆といった隊員たちが最後にこの世に残したものがずらっと飾られている。正直、正気では見られないけれど、目を背けずにしっかりと向き合った。動悸がして、呼吸が荒くなる。平均年齢21歳の隊員たちが死の寸前に残した最後の文章は、とても綺麗で美しく、それでも決死の思いがこもったものが多くあった。


pinterestより引用


中でも、穴澤大尉が最後に恋人へ宛てた手紙、遺書は心に突き刺さるものがあった。

穴澤大尉


恋人であった智恵子さんに宛てた手紙


僕が唯一最愛の女性として選んだ人があなたでなかつたら、
こんなにも安らかな気持でゆくことは出来ないでせう。

亦とない果報な男であつたと再び言います。

どんなことがあつてもあなたなら
きつと立派に強く生きてゆけるに違ひないと信じます。

~~~

あなたの幸せを思う以外何物もない。

あなたは過去に生きるのではない。

勇気をもって過去を忘れ

将来に新活面を見出すこと。

あなたは、今後の一時々々の現実の中に生きるのだ。

穴沢は現実の世界には、もう存在しない。

智恵子

会いたい、話したい、無性に。

最後に宛てた手紙を一部抜粋し、現代語に訳したもの


本来であれば、最愛の恋人と時間を共にしたかったはずだが、その願いも叶わず、出撃となってしまった。あまりにも無念で、悲惨で、感情の表しようがない。


途中、語り部さんによる講話があるとのアナウンスがあり、話を聞く。
その中で特に心に残ったものが、題名にもあるぐっしょり濡れた枕の話だった。

突撃前夜の隊員が眠る三角兵舎に看守が見回りに行くと、掛け布団に頭をすっぽりと隠し、震えて泣いていた人が無数にいたとのこと。そして朝になって、女学生が布団の清掃に行くと、びっしょりと濡れた枕がそこにはあったらしい。夜通し泣いていたということだ。
それでも、特攻直前の出陣式には皆凛々しい顔をして飛び立つ。この時代に、人前で涙を流すということは御法度なのである。助けてと口に出すことも出来ず、国のルールに歯向かうこともできず死んでいく。これまた悲惨な過去だ。

また個人的にすごく感じたのが、遺書の言葉の選び方や文章の構成の仕方が、皆尋常じゃなく綺麗で、力強く、伝わりやすいものだったということ。
この時代の若者は本や句集を読む機会が多かったらしく、自分の気持ちを文にすることに長けていたのではないかと思う。それが仇となり、見ているこっちからするとストレートな感情や気持ちが遺書から伝わって来てしまい、何度深呼吸して気持ちを落ち着かせたか分からない。

そして、遺書のほとんどがお母さんに対する感謝、懺悔、愛情を伝えていたということ。敵艦に突っ込む瞬間、お母さん!と叫びながら突っ込む隊員がいたというのは話に聞いていたが、それは嘘ではなかったんじゃないかと言うくらい、最後の手紙でお母さんについて触れられていた。

人間は弱く、ずるく、自己中心的な動物なので、この世から戦争が消えるとは悲しいが思えない。ただ、この凄惨な、あまりにも酷い過去の失態を見る限り、少なからず特攻という非人道的な行為は今後絶対取るべきでない。これだけは言える。

最後は、特攻隊員がお母さんと慕っていた鳥浜トメさんの言葉で。

「人は皆、この世に使命をもって生まれてきている。なぜ生き残ったのかを考えなさい。あなたにはしなければならないことが残されているだろうから。」


この記事が参加している募集

サポートしてもらえたら、いつか還元できるように頑張ります。