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夏の終わりの匂いがする

2024.08.22
ぺぎんの日記#139
「夏の終わりの匂いがする」


家の中にいるからって、いい加減、半袖短パンで過ごすことはできなくなってきた。特に朝と夜は気温がしっかり下がるようになってきている。寝苦しくて、窓を開けっぱで寝る夜は、今年はもう無いだろう。

気温がどうとか、植物がどうとか、具体的に何か変わったかと言われると、今までと大きな差はないように思う。しかし直感として、夏はもう過ぎ去ってしまったのだと、そう思う。

昼間開けてた窓を、さっき閉めようとして窓の前に立った。
スッと、何かの香りが鼻をかすめた。

バン!
衝動的に網戸を開け放ち、窓から顔を出す。

コオロギが鳴いている。涼しい風が吹いている。
あぁさっきの香りは、最後の夏の匂いだったのか。

冷たい水蒸気の中に、かすかに花の匂いを乗せたような。
うだるような夏が、今年も思い出を残して去って行った、その残り香。

夏が終わってしまったという寂しさがある。でもそれと同時に、溶け出してしまっていた自己が、ちゃんと自分の中に全部戻ってきたような、そんな安心感もあったりする。

視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚1%

そう言われている五感の中で、最も季節を感じているのは、私は、合計たった5%の嗅覚と触覚だと思う。

季節が変わる。空気が変わる。匂いが変わる。
そのたびに私の心は、上手く言い表せない特別な感情を抱く。

毎年一回しか味わえないこの一過性の感情を、どうにか忘れずにいたい。

もう一度その季節が巡ってくれば、前の年のその感情を思い出すのだけれど、最近はどうも、もう一度その季節が巡ってくるということが保証されていないようなので。

夏の終わりの匂いがする。

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