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生まれたからには生きてやる

2024.05.16
ぺぎんの日記#46
「生まれたからには生きてやる」


学校のトイレの個室。
今まで知らなかったけど、壁に小さな文字が刻まれていたことに気が付いた。

「生まれたからには生きてやる」

おそらくそれは THE BLUE HEARTS の「ロクデナシ」から引っ張ってきたのであろう言葉。
何かもの凄く、魅力を感じた。

金属製の冷たい壁。そこに刻まれた言葉。今から37年前にリリースされた曲の歌詞。

この個室でこの文字を刻んだ人は、一体どんなことを考えていたのだろう。
どんな気持ちで、トイレの壁を削ったのだろう。

時間はいつだっただろうか。
授業中、独り教室に入らず、この個室で過ごしていたのかも知れない。

しかしそれでは金属壁を削れるほど硬いものを持っていたとは考えにくい。最初から文字を刻むつもりでトイレに入ったのだろうか。何か硬いものを持って。じゃあ何のために?積極的に見つけてもらおうとは思っていないような場所に刻まれた文字。

自分のために刻んだんだろうか。トイレに逃げ込むたびに、この言葉を見れるように。

あとは例えば、嫌な想像だけど、本来別の目的で持ち込んだ刃物を、彫刻刀として利用したか。

他の場所には探した限り文字は見つからなかった。
誰がいつ何のために。
それは私の知っている人かも知れないし、私の知らないずっと昔の人かもしれない。休み時間だったかも知れないし、授業中や放課後に籠もっていたのかも知れない。出来心だったかもしれないし、何かから自分を守るために削らざるをえなかったのかも知れない。

ふと、この文字を見つけた人は今までに何人いたのだろうと思う。
その数はきっとあまり多くない。
今までこの文字を見つけたその一人ひとりは、「生まれたからには生きてやる」という文字を見てどう思ったのだろうか。

「生まれたからには生きてやる」

トイレの壁に刻まれた文字と、それを見つけた私や、見つけたであろうその他の人たち。
1人の人間が生きていた足跡に遭遇した気がした。

誰か知らない先輩へ。
ありがとうございます。
私のようなロクデナシのために、この言葉を残してくれて。
生まれたからには生きてやろうと、そう、思います。


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