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何があったっけ

2024.05.19
ぺぎんの日記#49
「何があったっけ」


いつもの街並み。
そこにいつの間にか、ポッカリと穴が空く。

前までは何らかの建物があった場所。
その建物が解体されると、そこは空き地となる。

空き地になってしまうと、そこに何があったか思い出せなくなる。

普段使っている道のそばに建っていた建物に、不意に解体のためのカバーがかけられる。
そうなってしまうともう、何が建っていたのかは思い出せない。

そのまま数週間が過ぎ、もう一度その道を通ったときには、そこには砂利が敷き詰められた平地しか残っていない。
元の建物の面影など、どこにもない。

どこか寂しい気持ちになる。
日常にポツリと、小さな穴が空いたような。

でも空地になってそのまま、また数ヶ月が経てば、そこに建物が建っていたことすら意識しなくなる。

普段使う道にある、ただの空き地になっていく。

今まで確かにあったものが、いつの間にか見えなくなって、消えてしまう。
消えてしまったことを寂しく思う。
でもそのうち、消えてしまって寂しかったことさえも、忘れていって、消えてしまって。
そしてまた時間が経てば、忘れてしまったことを寂しく思っていたことも忘れてしまって。

日常に空いてしまった小さな穴を、いつの間にか忘れて生きている。穴が開けば、代わりの日常がその穴を塞ぐ。そうやってツギハギの日常が、日々更新されていく。

わからない。
自分にとって大事な日常ってどれなんだろう。

いつの間にか、自分のすごく大事な日常に穴が空いたとする。
そしてその穴の重要さに気づかず、いつも通り、ツギハギで簡単に塞いでしまったとする。

穴はなく、ちゃんと正常に回っている、一見なんの異常ない日常のその異常さに、そのとき私はちゃんと気付けるだろうか。

大人になった私へ。
もしかすると、ツギハギの何枚かをそっと剥がしてみたら、欲しかった何かが見つかるかもね。

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