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【時々エッセイ】猫の手ざわりは魔法でできている 61

猫の爪切り。
人生で一度もしたことがありません。
切った方がいいとはよく聞きます。
そして、気をつけて切らないと血管の通っている部分まで切ってしまうということもよく聞きます。
でも、引っ掻かれると痛い。
血が出るし、猫ひっかき病も怖いし。
それに、人間の皮膚は薄いけど、再生するからいいんです。
せっかく買った座椅子がバリバリやられるのは見るに堪えません。
布も皮もフェイクレザーも決して再生することはありません。
もっとも、もしそういうものが再生したら何かがとり憑いている証拠だからやっぱり嫌です。
爪研ぎされる度に買い替えることはできないし、補修するとしたら上から思い切りダサイつぎはぎをすることになります。
なので、試しに猫の爪切りをちょっとやってみようと思いました。

冬はボアカバー掛布団の上でくつろぐ猫様たち

膝にのってすっかりくつろいで油断しているルネの前脚をプ二っと握って爪を出させ、ナデナデで気を逸らしてから爪切りでパチン、パチン。
は?
何これ?
何の障害もなく抵抗もなく、当たり前のように切れるんですけど。
モネが膝にのっている時、寝ぼけ半眼の状態で切っても同じ。
普通にパチン、パチン。
猫対人間の死闘が繰り広げられ、私の顔と手に名誉の負傷が縦横無尽にできる事態まで予測していたのに。
これはどういうことでしょう。

暖かい日は椅子のクッションの上でお昼寝ジョルジュ

ならばと思ってジョルジュの爪を切ろうとしたら、日頃はおとなしいジョルジュが怒る、唸る、抵抗する、逃げる。
逃げた先に近づいたら、怯えた目で見て慌ててまた別の所へ。
なんとなくわかりましたよ。
ジョルジュが一番この家にいた期間が長い。
だから、ママが知識不足で猫にしつけが利くと思い込んでいた時代も経験しています。
悪さ(人間都合の分類で)をしたらしつけでデコピンなんていう、人間の傲慢な思い込みの横暴を経験しているわけです。
ジョルジュにとってママが自分の体を拘束して何かすることは、モンスターの再来。
ねねちゃん風に言うなら、「いつものママじゃない」ということなのです。
相手が優しいママでないなら、逃げなければ。
そういうことです。
悲しい。
尖った爪を着けてあの頃の自分を縦横無尽に引っ掻いてやりたい。
今、私は真剣にそう考えています。


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