見出し画像

音を使った即興物語創り遊び〜「音戯噺」遊びの展開〜

※このブログは、私がまだ学童保育に勤務していて2020年11月9日に展開した遊びの様子を記録し、11月21日のオンライン学習会に合わせてアップする予定だったものになります。「あれ、『音戯噺』についてまとめていたよなぁ?」と思い履歴を見返してみたところ、まだ記事が完成していなかったため、慌ててまとめてようやく完成しました💦ちょうど「#熟成下書き」というのがあったのですが、まさに熟成してしまった記事になります(笑)

「音戯噺」とは?

先日、オンラインで開催された学習会にて「遊び」について発表させていただける機会をいただきました。学部生~院生の頃からこだわり続けてきたテーマだったのでこのような場をいただけたことが本当に嬉しく、また資料を作成する中でこれまでの学びや実践を振り返り、改めて遊びというものを探求し続けたいという思いが高まりました。

発表させていただくにあたり、「何かオンラインで遊びを体験できるようなワークができないか」と考えていたところ、ふと閃いたのが「音戯噺」でした。

画像1

画像2

発表させていただいたことで「オンラインでは音源がうまく伝わらない」という難しさに気付きましたが、参加してくださった皆様の温かなご協力によって「猫のてるみ」を主人公にした面白い物語が生まれました。

今回のブログでは、オンラインイベントの前に、学童保育のこどもたちと一緒に「音戯噺」で遊んだ時の様子をまとめたい(動画をもとに文字おこしをしました)と思います。

「音戯噺」の始まり

この実践を行なったのは2020年11月9日。土曜授業の振替休日で朝から来ていたこどもたちと一緒に行ないました。最初は「ねぇ、もしやることなかったら、面白い遊びを考えてきたから、どんな感じになるか協力してほしいんだけど、良いかな?」と2年生のナツミにお願いをしたところからスタート。パソコンを用意する私の周りに数人のこどもたちが集まってきました。
※なお、登場するこどもたちの名前は、全て仮名です。

ゆーだい:まず、主人公誰にする?
リョウタ(2年):主人公、警察でいいよ!刑事、刑事!
ゆーだい:オッケー。じゃあ誰からいく?
みんな:いいよ、ナツミからで!
ナツミ(2年):意味(これからどうやって遊ぶのか)がわかんない~!

将来はレスキュー隊になりたいという夢を持つリョウタの提案により、主人公は「刑事」となりました。

ゆーだい:(簡単にルール説明をする。)じゃあ、まず好きな番号選んでください。
ナツミ:じゃあ、5!
リョウタ:オレ、9!
ゆーだい:じゃあまず、ナツミの番!「あるところに刑事がいました。」じゃあ、最初の音、5(番の音を流すね)。

【5番の音】「ひっひっひっひっひっひっひ…」(悪魔が笑うような音)

ゆーだい:はい、じゃあこの音を聞いて…
一同、笑い
キョウスケ(3年):もう一回やって!

【5番の音】「ひっひっひっひっひっひっひ…」

みんな:あはははは!
だれか:何の声?何の声?

こどもたちは、実際に操作をしてみせたことにより、「番号を選んだら音が流れる」という「音戯噺」の仕組みを理解したようでした。自然環境に近い音などもある中で、最初に流れた音源が面白い?不気味な?笑い声だったということもあり、こどもたちは「もう一回やって!」「あはははは!」という反応を示していました。偶然選ばれた一発目の音によって、この場・この文脈での「音戯噺」の方向性が決まったのかも知れないなぁと、振り返ってみて感じました。

だれか:決められません!決められません!
ゆーだい:じゃあ、刑事はどうなった?一番最初。
ナツミ:鬼になった!
ゆーだい:はい!じゃあ、「刑事は鬼になった…」
だれか:あ~。面白過ぎる!

物語の方向性を決める上で重要な最初のストーリー。笑いが収まり、こどもたちが固唾を飲んで見守る中、ナツミは悪魔の笑い声のような音を「鬼」と結び付け、主人公の刑事が「鬼になった!」というストーリーを生み出したのでした。カメラを回していることを意識してしまうと遊びの流れの妨げになると思いこどもたちの顔が映らないいように撮っていたため誰かは特定できませんでしたが、先ほどの音とナツミのストーリーを受けて「あ~。面白過ぎる!」という声があがったのが印象的でした。

ゆーだい:じゃあ次!
リョウタ:9!
ゆーだい:じゃあ9番の音。その続きね。

【9番の音】「ぽたっ、ぽたっ、ぽたっ」(水滴が落ちる音)

だれか:うふふ、これも面白い!

次は、刑事を主人公にしたリョウタがストーリーを考える番。「あ~、面白過ぎる!」と呟いたのと同じ子と思しき「うふふ、これも面白い!」という声が録音されていました。

ゆーだい:鬼になった刑事は…?
リョウタ:竹になった!
ゆーだい:滝?
リョウタ:竹!(ししおどしのイメージ?)
ゆーだい:あぁ、竹ね!なるほど!(リョウタの考えを理解)じゃあ、鬼になった刑事は…
キョウスケ:ちがう、こっちのほうがよさそう!「鬼になった刑事は、ちょっと戦ってから血を流した!」
ゆーだい:なるほどね!いいじゃんいいじゃん。血が滴る音ね!(そうそうそう!)あ~、いいじゃんいいじゃん!オッケー。じゃあ次!「鬼になった刑事は闘って…血が流れました」!

ここで、リョウタが発した「竹」という言葉を、私は(水滴→水に関係するものだという認識から)「滝」と聞き間違えてしまいました。このズレは、後の場面で改めて登場することになります。言葉でのやり取りはしていないものの、リョウタがイメージしていたのは「滝」ではなく鹿威しのイメージであることを理解した私は「竹」というイメージを取り入れたストーリーを語ろうとしていましたが、そこへ間髪入れずにキョウスケが「ちがう」と言ってアイディアを出しました。この「ちがう」はリョウタの意見を全否定するというニュアンスではなく、「オレ、こんなアイディアが浮かんだんだけど、みんな聞いて!」という意味合いだったように思います。「鬼になった刑事は、ちょっと戦ってから血を流した」という新たなストーリーに対して、リョウタを含めて異論を唱える子はいませんでした。私もキョウスケのアイディアが面白いなぁと思い、キョウスケのストーリーを採用して次に進むという判断をしました。もちろん「判断」と言っても、流れるように展開していく遊びの”動き”の中で熟考しているほどの間はありません。キョウスケの「ちがう」という発言から「鬼になった刑事は闘って…血が流れました」と語るまでの約10秒間の間に、こうした一連のやり取りと空気の流れがギュッと凝縮されていたのでした。

同時多発的な解釈から協働・共創造へ

リョウタとキョウスケとのやり取りをきっかけに、「順番」というルールが緩やかに崩れ、同時多発的にこどもたちの解釈が生まれるようになってきました。これは遊びの破綻、すなわち「ルール違反!」「順番を守りましょう!」と注意すべき状況ではなく、むしろそれとは対照的に遊びが盛り上がってきて「話したい!」という気持ちがその場にいたこどもたちに生まれた証であるように思います。この後登場する3年生のリカが発した「これも面白そうだな!」(これ「も」という言葉から、これまで断定しきれかった「面白い」「面白そう」という呟きもリカが発したものである可能性が高い)という呟きが、それを象徴しているのではないでしょうか。

だれか:15!
(リカ(3年):これも面白そうだな!)

【15番の音】「ふわふわふわふわふわ…」UFOが浮遊しているような音

一同、笑い!

リョウタ:あ!今のわかった!
キョウスケ:血を流した刑事は…
だれか:泣いた!
キョウスケ:うおうおうおうお…って!
ゆーだい:泣いたのか!泣き声か!
コウキ(2年):んで、ゴリラになった(「うほうほうほうほ」と捉えたのかな?)
キョウスケ:泣いたんじゃなくて、なんかお化けみたいに…!
ゆーだい:あ~、お化けみたいに!
コウキ:お化けになった!
ゆーだい:血を流した刑事は、お化けになりました(笑)
あははははは!

この場面、キョウスケが「血を流した刑事は…」と何かを語ろうとしていた場面で、誰かが「泣いた!」と呟きました。キョウスケは「泣いた」と言おうとしていたのかどうかは定かではありませんが、この「泣いた」という新たな文脈を受け、UFOが浮遊しているような「ふわふわふわふわ」という音を「泣き声」として(再)解釈しました。そして即座に「うおうおうおうお…って!」と新たな文脈に呼応した彼の対応に驚きながら、私も「泣いたのか!(全くそのような解釈を想定していなかったので)泣き声か!」と驚き、そして感激。このやり取りを受け、コウキが「んで、ゴリラになった」と呟いています。「ゴリラ」という単語はこどもたちの間で笑わせる際によく使われるためコウキがギャグで言ったのか「うほうほうほうほ」と捉えたのかは不明ですが、いずれにせよ泣き声or鳴き声として解釈するという文脈に沿った発言であるといえるでしょう。

ここでさらにキョウスケが「泣いたんじゃなくて、なんかお化けみたいに…!」と呟きます。もしかしたら当初キョウスケが言おうとしていたのはこちらのストーリーだったのかも知れません。一度譲歩し「泣き声or鳴き声」路線に乗ってみたものの、ここで再び提案してみようと思ったのでしょうか。このあたりは様々なこどもたちの声が同時多発的に飛び交っているため断定できませんが、いずれにせよここでキョウスケが提案→コウキが「お化けになった!」とまとめるという流れが展開しました。こうしてやり取りの中でアイディアが混ざり合った結果、「血を流した刑事は、お化けになりました(笑)」と私がまとめるに至るストーリーが誕生。協働・共創造のプロセスの達成感・参与感や、まさかの展開でまとまった面白さからなのか、自然と大笑いが生まれました。

キョウスケ:で、お化けからかかってきたの!
ゆーだい:やばい!闇の世界、お化けの世界から…!
だれか:1!1!1!

【1番の音】「トントントン」(ドアをノックする音)

キョウスケ:…で、誰かが来て
コウキ:包丁持ってきた!
ゆーだい:あ~、怖い!鬼になった刑事は戦って血がぽたぽた垂れて、お化けの世界に…
コウキ:家に帰って…
ゆーだい:そしたら誰かがきた…

「で、お化けの世界からかかってきたの!」という呟きの前後、キョウスケは「UFOは、お化けに反応するの。だから、お化けになった刑事をUFOが察知して連絡が来た」というニュアンスのストーリーを語っていました。「かかってきた」というのは、このような流れから出てきた言葉です。キョウスケの中で「泣いた」→「お化けになった」→「UFOが来て、お化けになった刑事を察知した」というように、音の解釈が変化していることがわかります
その後で流れた「トントントン」という音に対して、再びキョウスケとコウキが解釈を始めました。ちょうど「お化け」「宇宙人」など「誰かが来る/来た」というストーリー展開だったため、この音を聞いた後に一瞬間が空き(顔を見合わせていたor考えていたのかも知れません)、何か閃いたキョウスケの「…で、誰かが来て」というように繋がりました。コウキも「包丁持ってきた!」と呟き、ホラー・サスペンス的な雰囲気が一気に増しました。

やり取りのリフレインと、ストーリーの方向性の変容

キョウスケ:次、18!
だれか:次、3やって!
ゆーだい:じゃあ、18の次、3ね。

【18番の音】「ざ~~~~~~~~」

だれか:ざざざざざざ~って音がする!
コウキ:あれ、あ!滝じゃない?滝!滝!滝!
だれか:竹?笑
コウキ:滝!滝!滝!あ!滝で、「オレは水だ~!」って言いながら…
ゆーだい:あ~、じゃあ、コンコンって来た人、修行しに来たって感じ?
みんな:そう!(数人の声が揃った!)
コウキ:一緒に修行しに来た!
ナツミ:血を流して!
ゆーだい:一緒に修行したんだ。
リョウタ:あ、じゃあ嵐が来た、とか?
ゆーだい:あ~、嵐が来た、も確かにありそう!

ここで、最初のほうに私がミスリードした「滝」「竹」のやり取りが偶然?狙って?再発していることがわかります。この瞬間に、私とリョウタが生み出したズレは新たな意味を持って遊びの中に位置付けられました。また、それまでのホラー・サスペンス的な雰囲気から、「滝」→「修行」→「嵐」というように大きくストーリーが変容していったことが明らかです。前の場面での来客者は、まさかの「(血を流しながら)一緒に修行をしに来た人」という解釈に落ち着きました。

なつみ:次、3!

【3番の音】「にゃ~~~お」


一同、大笑い

リョウタ:で、滝やってるうちに、「こわ~い!」って!
ゆーだい:あ~、なるほどね!そういう声か!もう一回聞いてみる?
リョウタ:だって、さっきさ、夜だったらそうなるじゃん!
ゆーだい:確かに!

【3番の音】「にゃ~~~~~お」

○同時に
「こわ~い!」
「猫の鳴き声!」

キョウスケ:象の鳴き声!象の鳴き声、ぽわ~…
ゆーだい:確かに。「こわ~い」も猫の鳴き声も、象の鳴き声…

面白いなぁと思ったのが、「にゃ〜〜〜〜〜お」という音の解釈。フリー音源サイトでも「猫」と書かれており、私も「猫の鳴き声」だと認識していたのですが、リョウタはストーリーの文脈に合わせて「こわ〜い」と解釈したのです。「だって、さっきさ、夜だったから…」という呟きもポイント。これまでの流れで、今この場面は夜であるとは誰も言っていません。しかしリョウタの中で、「お化け」「宇宙人」「家にいる(ドアをノックされた)」という要素を組み合わせて、この場面は夜であるという認識を生み出していたのです。ストーリーの世界に入って楽しんでいる様子が伝わってきました。
この音をめぐっても多様な解釈が生まれました。「ん?猫じゃない?」というリョウタ以外のこどもたちの雰囲気を感じ取り、私はもう一度音を流すことに。ここで「こわ〜い!」と復唱するリョウタと、「猫の鳴き声!」と呟いた数人の子と、「ぽわ〜」という象の鳴き声だと解釈したキョウスケの声が重なりました。いずれも面白い解釈であると感じたため、私はどれか1つに絞るのではなく、「確かに。『こわ~い』も猫の鳴き声も、象の鳴き声…(も、どれも面白い、と続けようとした)」という反応を示しています。こどもたちも、この直後に「次、10(番の音)!」と言っており、この場面において「こわ~い!」なのか「猫」なのか「象」なのかを絞ることはさほど重要ではない(それ以上に、多様な解釈が生まれ、それぞれの違いを楽しんでいる)様子だったため、敢えて曖昧なままストーリーを進行させました。

次、10!

【10番の音】「ぽく、ぽく(ここで数人の子が「また?」と呟く。先ほどの滴る音に似ていたから?)、ぽく、ち~~~~ん」

えへへへへ!
ち~~~~ん(笑)
ぽん、ぽん、ち~ん(笑)

コウキ:ねえ、ゆーだいゆーだい!これ!ぽ~ん!…バットで殴られて、ぽ~ん、ぽ~ん、ぽ~ん、ち~~~~ん(トーンを落とす)(笑)
ショウ(1年):太鼓叩いて、最後に間違えて皿を叩いちゃった!

こどもたちは、不意に流れた木魚とお鈴の音を聞いて大笑い。ここから、コウキとショウがそれぞれ想像を膨らませました。修行中でありながら、刑事は「バットで殴られて『ち~~~~ん』(昇天?)」したり、「太鼓叩いて、最後に間違えて皿を叩い」たり…。ストーリーの進行をさせようというよりは、むしろ音そのものを楽しんでいる様子が伝わってきます。私はここでも多様なこどもたちのアイディアをどれか1つに絞ることをせずに、それぞれの解釈を一緒に楽しむことにしました。

ゆーだい:4番?おっけ!

【4番の音】「ちゃ~~~~~~~ん」(天使が下りてくるような音)

リョウタ:ねえ?そして、お経読み終わって、ちゃららららら~ん
ゆーだい:あ、なるほどね!あ、そっか!修行して、なんか…
タツヤ(2年):お風呂が沸きました!
ゆーだい:あ~…(【4番の音】を鳴らして)「ちゃ~~~~~~~ん」お風呂が沸きました(笑)
リョウタ:次、オレにデータ動かさして!
タツヤ:で、リョウタの次、オレね

ゆーだい:修行した後は、お風呂に入りたいもんね
コウキ:確かに!寒いから、水だから寒いからさ!
ゆーだい:あぁ、そっか!それで寒いからお風呂はいりたいなぁと思って、「ちゃ~~~~ん」って(笑)お風呂が沸きました、いいねぇ。

ここで改めて「修行」という文脈が復活します。こどもたちは、リョウタの「お経読み終わって…」というストーリー(「既に修行は終わった」ということが)を受けて、その後の展開を考えました。私がストーリーの方向性を考えて語ろうとしていたところ、「お風呂が沸きました!」と呟いたタツヤが新たな流れを作りました。タツヤと仲が良いコウキも、私の「修行した後は、お風呂に入りたいもんね」という言葉に続き、「確かに!寒いから、水だから寒いからさ(温かいお風呂に入りたいよね)!」とフォローしていました。

少しずつ遊びが終わりへと近づく

リョウタ:次13!
※操作に手間取り、順番を巡ってややもめる。順番に操作することに。

【13番の音】「き~んこ~んか~んこ~ん…(みんな:あ!これ学校のチャイム!)き~んこ~んか~んこ~~~ん」

コウキ:あ、これ、わかった!朝寝坊して、間違えて修行やっちゃって、お風呂入りたい~って言って、それで学校遅れる(笑)
ゆーだい:なるほど!修行して、お風呂入ったら学校遅れる(笑)

※みんなパソコンを操作したい様子。こどもたちが入り乱れて「音戯噺」の音源の番号を言ったためやや混乱。リョウタが仕切って順番を相談する。1年生のショウは、「オレ、(ストーリーをつくるのは)やんないやんない。オレ、番号選ぶ係!」と発言。「15がいい!15!」と、ボタンは操作しないが指示をした。

【15番の音】「わんわん!」

みんな:犬の声だ!
リョウタ:あ、わかったわかった!キンコンカンコンって鳴ったでしょ!で、登校して、で(授業が)始まっちゃってるけど、急いでいったら途中で(ナツミ:「犬が追いかけてきた!」)わんこがブ~~~ンって追いかけてきて、で…
タツヤ:パンツ脱がせた…!

こどもたちの間で、順番や操作を巡るケンカ?が起こりました。ただ、動画を観返すと、音が流れる場面ではスッとみんなで画面を観て、そこから解釈が生まれているという動きが生まれています。特に学校のチャイム~犬の鳴き声という、こどもたちにとって比較的馴染みがある音が流れた場面では、こどもたちが揃ってリアクションをしていました。また、このやり取りを通して、これまで私が操作していたパソコンをこどもたちが教え合いながら動かし始めました。

リョウタ:タツヤ、何番?
ショウ:10番!
コウキ:ダメだよ、ショウが決めちゃ!
ナツミ:同じ番号でもいいの?
ゆーだい:(さっきと)同じ(番号)でもいいよ

※ショウが一生懸命操作する

【2番の音】「ふわふわふわふわふわふわふわ~」だんだん高い音から低い音へと下がっていく

コウキ:わかった!コナンみたいに薬飲んで、ぴゅんぴゅんぴゅんって…
ゆーだい:あ!縮んだ?(笑)刑事縮んだ?(笑)
一同笑い
ショウ:なんで「ケイジ」って名前が付いたの?
ゆーだい:あはははは、そうだね!確かに…!

わかった!コナンみたいに薬飲んで、ぴゅんぴゅんぴゅんって…」という解釈と、私の「あ!縮んだ?(笑)刑事縮んだ?(笑)」というリアクションを受けて、タツヤを含め再びみんなで笑い合うことができました。ここでショウが「なんで『ケイジ』って名前付いたの?」と尋ねています。遊びの最初のほうからこの場にいたショウ。これまでの流れで忘れてしまったのか、それとも「刑事」ではなく個人名としての「ケイジ」と解釈してその由来が気になったのかは定かではありませんが、言われてみればここまで「刑事」が主人公であるということが共通認識されている前提のもと、主語抜きでストーリーが展開していました。ショウの発言を受けて、登場した「刑事」という言葉を聞いて「おや?そういえば…」と立ち止まることができたのでしょう。

ナツミ操作

【2番の音】「ぽわぽわぽわぽわぽわぽわ」パトカーのような音

タツヤ他:あ!わかった!UFO!UFO!
ゆーだい:コウキは?
コウキ:捕まった!
だれか:捕まった!
ゆーだい:捕まった?
コウキ:違う違う!だから、ちっちゃくなったけどUFOには見えるから、UFOに捕まった!
ゆーだい:あ。そういうこと!宇宙人に…
リョウタ:違う違う違う違う、そうじゃなくて、あの、警察がう~う~う~う~って来たから、あだ名か警察なんでしょ??
ゆーだい:あ、刑事、うん。
リョウタ:だから、刑事だからう~う~う~う~って相手の刑事が来て、そしてそのまま…!
ゆーだい:あそっか、名前が刑事だから…

やがて、「もう終わりにしない?」という意見が出るようになります。その提案を受け、物語創りも「終わり」を意識した展開になっていきました。

リカ:もう終わりにしない?
ゆーだい:そっか、あと何回で終わりにする?
リョウタ:あと100回
ゆーだい:そっか、確かに最後…
リョウタ:じゃあいくよ。8。
コウキ:次は何が待っているのか!
ゆーだい:何が待っているのか。どうなる?どうなる刑事!?

【8番の音】「じ~~~~(セミ?)(夏の自然の音)」

コウキ:あ、UFOに連れてかれて、変なとこに落された!
リョウタ:それか、わかったわかった!刑事で、もう足とか全部治ったから、家に帰ったら、家で夏だったからセミが鳴いてた。
ゆーだい:なるほどね!家に帰ったら夏だった、と。
リョウタ:じゃあばいば~い!
ゆーだい:おっけー。じゃあ最後の場面。刑事どうなる!ラストの場面。まだ出てないやつあるかね?
タツヤ:あ、7いけるよ。

「家に帰ったら」という言葉が出てきたのが印象的です。子どもたちは「終わり」のイメージとして「帰宅」を連想したのでした。これまでの一連の物語創りは、まるで長い冒険譚のよう。安全で安心な家に帰ることで「あ〜、良かった!おしまい!」という流れにしたかったのかも知れません。しかし、ここから意外な音とともに、予想だにしなかった怒涛の収束を迎えることとなりました。

【7番の音】「どんどんぴーひゃらら~~~~」サンバっぽい音

みんな:で~ひゃっひゃ!(一同大笑い)お祭り…!
タイガ(4年生・リョウタの兄):(別の遊びをしており、少し離れた場所から発言)わかった!家に帰ったら…お家がサンバ状態だった(笑)
ゆーだい:あっはっはっは!お家がカーニバル(笑)お家がサンバ状態(笑)めでたしめでたし!
コウキ:わかったわかったわかったわかった!また7ききたい!また7ききたい!7ききたい、7ききたい!7もう一回!
タツヤ:あ、最終回になるじゃん!「よく帰ってこれました!とぅっとぅっとぅるっとぅっとぅっとぅるっとぅ~!」
ゆーだい:あ、あるほどね!よく帰ってこれたから…
タツヤ:あ、これ全部ミッションだったとか…
ゆーだい:ミッションだったんだ。「そうだ、オレはミッションをやってたんだ」(って刑事が思ったんだね)!
タツヤ:鬼になって忘れちゃった
ゆーだい:あ、そっか!最初、鬼になってたもんね!

感動的なクライマックスかと思いきや、まさかのサンバのような音が流れたのでした。これには一同大笑い。「お家がサンバ状態」という言葉の語感が個人的にツボでした。こどもたちは、このサンバ音を「めでたしめでたし」という意味合いの音として捉え、物語冒頭の設定も「全部ミッションだった」「鬼になって忘れちゃった」といった言葉を付与して回収していきました。
けれど、ここでもう1つ予想だにしなかった出来事が。

だれかが押した「ぽっぽぽとんとことんとんとん、ち~~~~~~~ん」
一同大笑い!
ゆーだい:めでたしめでたし、お~し~まい、あはははは(笑)

なんと、誰かがボタンを押し、偶然にもリズミカルな木魚と鐘の音が鳴ったのでした!壮大な物語のオチに再度爆笑の渦が起こります。やはり、トリックスターって居るのだなぁ…!これにて、めでたしめでたし(笑)となりました。

「音戯噺」の今後の展望

以上、文字情報が中心となってしまいましたが「音戯噺」の展開についてまとめてみました。
今回はフリー音源を用いましたが、いつか参加者が事前に音を集める→持ち寄った音を使って、みんなで物語創りをするという遊びもやってみたいです。これからも様々な遊びを創り、実践していけたらと思います。最後までご覧いただきありがとうございました✨

この記事が参加している募集

熟成下書き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?